全国町村会

島人による上島ならではのまちづくり
〜住民自らによる、産業・歴史・文化・自然を活かしたまちづくり〜

生名橋を照らす夕日

 

愛媛県上島町

3022号(2017年11月27日)  上島町長 宮脇 馨

上島町の概要

上島町は、愛媛県と広島県の間に点在する芸予諸島の中でも、愛媛県側で最も北東、瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ上島諸島(弓削島、佐島、生名島、岩城島、赤穂根島等)及び魚島群島(魚島、高井神島等)の7つの有人島と18の無人島から構成されている、人口約7千人余りの町となっています。海を隔てて広島県尾道市に隣接しており、本町上島諸島の生名島と広島県尾道市因島との距離はわずか300mであり、生活圏は主に因島側に属しています。

岩城島積善山の三千本桜(天女の羽衣)

年間を通じて晴天が多く、降水量が少ないという瀬戸内海特有の安定した気候で、平均気温は15〜16℃、年間降雨量1,000o前後となっており、冬季にもほとんど積雪はありません。

交通機関は、海上交通のみですが、広域航路や地域間航路は多くの旅客船・フェリー等が就航しており、海を隔てた広島県尾道市因島へはフェリーで5分という近さです。最寄りの空港は広島空港、最寄り駅は福山駅で、共に車で1時間程度の距離となっています。

上島町内の道路・交通体系については、上島架橋建設事業により、平成8年3月『弓削大橋』、平成23年2月に『生名橋』が完成し、平成33年度には『岩城橋』の完成が予定されており、車による交通アクセスの向上が図られています。

生名橋と石碑

第一次産業は、後継者不足や販売価格の低迷などにより、厳しい状況が続いていますが、農業については、瀬戸内海特有の気候条件を活かした柑橘栽培(特にレモン、温州ミカン等)が中心となっており、岩城島の「青いレモン」のブランド化やレモンを飼料に使った「レモンポーク」などの六次産業化にも取り組んでいます。

岩城島のブランド豚「レモンポーク」/岩城島の「青いレモン」

水産業については、瀬戸内有数の好漁場であり、魚島群島の定置網、蛸壺漁など漁船漁業が基幹産業です。一方で、弓削地区の海苔養殖、岩城・生名地区ではエビ・ヒラメ・マダイの養殖などにも取り組んでいます。 

弓削海苔の摘み取り

  

第二次産業は、就業者数や町内総生産額から見ても主要産業です。その中でも、戦後の高度成長期から島を支えている産業として造船業が中心となっています。

岩城島では造船業も盛ん

第三次産業は、人口減の中、小売業・卸売業ともに厳しい状況が続いており、商業以外で一定の従業員数がある業種としては、宿泊業・飲食サービス業があります。平成23年度には離島体験滞在交流促進施設として弓削島に『インランド・シー・リゾートFESPA』を整備しました。しまなみ海道と連動したサイクリングの振興、いわぎ桜まつりなどのイベント強化などの観光振興策により、島内における観光産業は拡大しています。

観光による交流人口の拡大は、宿泊業・飲食サービス業のみならず、産業への波及効果が見込まれており、一次産業との連携による『体験型×民泊』などのツーリズム型の観光に注目が集まっています。      

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上島町の観光施策

〇「観光体験メニュー」×「民泊メニュー」の推進  

本町では、平成28年度事業として「体験メニュー」の開発に着手し、従前から実施していた藻塩づくり等の郷土色あふれる事業を含め、島でしか体験できないシーカヤック・クルージング・釣り体験等の新メニューを合わせ29の体験メニューを開発しました。

シーカヤック等体験メニューも充実

<主な体験メニュー例>

弓削島:島サイクリング&グルメ、藻塩づくり体験
岩城島:レモンの島でリフレッシュヨガ、和太鼓アクティビティ
佐 島:古民家ゲストハウス「汐見の家」宿泊体験
生名島:鯛めし(タコ飯)体験/釣った魚の調理体験
魚 島:龍宮城へようこそ

今後も、上島町が有する様々な地域資源の中から観光的価値の高い資源を活用し、地域住民と観光客との交流が生まれ、そこから成長していく体験メニューのスキルアップ支援や提供する商品・サービスの向上と新たなプログラムの開発に努め、インストラクターやガイド等の住民(受入れ側)の魅力が最大の売りになるようなツーリズム体験を推進していきます。

また、体験メニューと関連して「民泊メニュー」の開発にも着手し、現在27件の受入れ家庭を募っています。最初はイベント民泊からスタートし、次に修学旅行生を対象とした民泊に発展させ、将来的には農家民宿等として長期滞在にも対応可能な受入れ体制整備を推進しています。  

〇サイクリング事業の強化

愛媛県は「サイクリングパラダイス愛媛」を掲げ、サイクリング事業による地域活性・観光振興を推進しており、上島町においても、「ゆめしま海道サイクリングコース」の設定、「レンタサイクル事業」による島内での交通手段の提供、「観光客専用自転車無料化事業(サイクルフリー)」などの町外からのサイクリスト誘客に努めており、今後の観光振興につながる手応えを感じています。

また、事業推進の中心的役割を担う地域住民の支援策として、小中高生への「ヘルメット支給事業」、一般住民への「ヘルメット購入費助成事業」、「サイクリング体験教室」等を実施しており、サイクリングの安全な利用とサイクリスト育成等の促進に努めています。

海沿いでサイクリング

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上島町の定住促進事業

上島町は、平成16年に1町3村の離島同士が合併した町です。本町は、過疎化・高齢化・少子化等多くの諸問題を抱えており、合併当初から定住促進については、最重要課題として危機感をもって対策に取り組んできました。  

〇定住促進プランの三本柱

まず、平成17年6月に人口増加対策に取り組む「定住促進プロジェクトチーム」を結成しました。これまでの移住者への意見聴取、先進地の視察を実施し、定住促進プランを作成しています。その内容は、@住宅対策、A土地対策、B産業振興対策の三本柱です。

@住宅対策
住宅対策では、転入者のための一戸建住居の建設や貸家、町営住宅、売家の斡旋を行い、生活できるよう支援を行う

A土地対策
土地対策では、定住の目的に応じ、必要な借地の仲介を行い、生活拠点の確保、生産活動が可能となるよう支援を行う  

B産業振興対策
産業振興対策では、農地の荒廃化対策のため、就農による定住を町の施策の一つとして実施することとし、具体的には「農地の提供、各種就農制度の活用、農家との仲介等の支援」を行う―ことが提案されました。また、農協、農業委員会、地区とのタイアップを図り、生産から加工・販売までの農業経営形態を確立し六次産業化を目指すものとしました。

これらの計画を具現化すべく、第一弾として平成20年4月から「定住促進3事業」を開始しました。

〇定住促進3事業

次の3事業の受入れには、NPO法人や地域漁協に協力してもらい、充実した研修が可能となっています。また、移住・田舎暮らしの前に短期間で生活体験ができる体験交流施設「知新館」も整備しています。

@ワーキングホリデー(1週間程度)
上島町に興味を持ち、農漁業の勉強や島のライフスタイルを満喫したい人を支援する事業

Aお試し就業研修事業(20日間までの短期研修)
農漁業への就業を希望される方に対して支援する就業研修事業

Bインターン事業(2年以内の長期研修)
新たな農林漁業の担い手の確保を目的とし、農林漁業への就業を希望される方に対して支援するインターン事業

〇新築住宅建設支援事業

町内に新たに住宅を建設する施工主に対して、補助を行う「新築住宅建設支援事業」を平成23年度から行っています。補助内容は、町内で建築費1千万円以上の費用がかかった住宅に対して50万円の補助を行います。この制度により、町内に家を建てる住民が増えてきています。

〇定住促進条例

定住促進条例は、定住人口の確保を図り、町の活性化、住民福祉の向上に寄与することを目的に、

・「若者世帯賃貸住宅家賃補助」(世帯主が40歳以下で月額2万円以上の家賃に対して1万円を2年間支給)
・「就業・就職奨励金」(町に定住の意思をもち、就業又は就職する方に10万円を支給)
・「結婚祝い金」(婚姻後、夫婦で町に住民登録をし、夫婦とも40歳未満の方に祝い金30万円を支給)
・「出産・子育て祝い金」(町に定住の意思を有し、町内に居住している者で新生児等を養育する方にそれぞれ祝い金を支給(3〜50万円))
・「移住ウェルカムプレゼント事業」(Uターン者等で過去3年間上島町に移住したことがない方に特産品を支給)

―の奨励策を実施しています。

〇NPO法人豊かな食の島『岩城農村塾』

定住促進策を展開する上で大きな存在となっているのが「NPO法人豊かな食の島『岩城農村塾』」です。定住促進事業の受入れ団体として、全面的に協力をいただいています。

農村塾は、元愛媛県の果樹試験場岩城分場で長年柑橘栽培の指導、ブランド化などに取り組んでこられた理事長を中心に、地元出身農家、Iターン農家など、幅広い年齢層で構成されています。会員は23名で、約半数を女性が占めています。新規就農者支援や特産品開発など、島で自立できる農家の実現と活性化に向けて取り組んでいます。

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上島町の今後の課題

本町は島ならではの豊かな自然環境、風土、歴史及び文化など観光資源に恵まれており、来町者にとっての魅力を十分に兼ね備えています。これまでも、その魅力についてPRしてきましたが、より多くの来町者を呼び込むためには、今後一層力強い発信を行っていくことが重要となります。また、消費額の多い長期滞在旅行者を増やすためには、更なる環境整備が必要であり、官民一体となった体制づくりが急務となっています。町内の自転車・歴史遺産を中心とした観光資源の活用を進め、観光客の受入れ態勢の充実を図るとともに、自転車・歴史遺産などを前面に押し出した観光PRをはじめとする情報発信を強化していきます。  

また本町は、高齢化による人口の自然減と転出者の増加により長期的に人口が減少しており、出生率の向上をはじめ、町外への転出者の増加を食い止めるとともに、U・Iターン移住者を増やすための取組が急務となっているとともに、移住者に加えて、町内就業者の住居の確保も重要な課題となっています。

その他、空き家をより利用しやすくする対策など、移住・定住に関する相談体制の充実や若者の出会い支援に加え、救急医療体制や子育て支援策など、本町で安心・安全に暮らすための体制の充実を図り、移住・定住希望者への情報発信を強化し、広く周知してまいります。

誰もが主役のまちづくり

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終わりに

上島町の魅力は、瀬戸内の島嶼として自然の恵みと、長年の積み重ねによって培われた文化にあります。子どもから高齢者まで住民すべての知恵と力を活かすことで町を元気にし、いきいきと暮らし続けることができるまちづくりを目指します。その結果として町に集う人々が「住み続けたい」と思う、また観光や交流などで「訪れたい」と思う町を実現していきますので、ぜひ瀬戸内海上島町へお越しください。  

「訪れたい」町をめざして

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