全国町村会

〜新たなまちづくりへの取組〜

鹿狼山頂からみる初日の出

 

福島県新地町

3011号(2017年08月28日)  新地町長 加藤 憲郎

新地町の概要

新地町は、福島県の太平洋側最北部に位置し、東西南北とも約7q、周囲24qのほぼ四辺形を成し、総面積は46.53平方キロメートル、中心部は海抜平均20〜30mとなっています。  

交通は、JR常磐線が平成28年12月に再開をし、道路は東京から水戸市・いわき市を経て岩沼市に至る国道6号及び常磐自動車道が本町を縦断し、新地ICが開設されています。また、相馬市を経て国道115号で県都福島市へ、国道113号で宮城、山形方面へ至ります。自動車で相馬市へ10分(9q)、県都福島市までは80分(65q)、東北の中枢都市仙台市へは60分(54q)の距離に位置します。

海、里、山、田園と多様な自然環境を有しており、豊富な産物にも恵まれています。海洋性気候により、東北地方の中では比較的温暖な地域であり、降雪も少ないことから、四季を通じて住みよい気候に恵まれた新地町は、旧石器時代の遺跡をはじめ、縄文時代の「新地貝塚」や「三貫地貝塚」などがあり、原始時代から多くの人々の歩みが刻まれています。

また、近世の戦国時代には伊達氏と相馬氏の政争の地となり、伊達政宗によって駒ケ嶺、新地の両城が攻略され、以後伊達領となって明治維新を迎えました。

そして、明治22年の町村制施行によって、福田・新地・駒ケ嶺の3ヵ村が誕生し、昭和29年には、3ヵ村が合併し新たに新地村が誕生、昭和46年に町制を施行しました。      

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未曾有の大震災

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、千年に一度という地震と大津波をもたらし、かけがえのない多くの生命と美しいふるさとが失われました。町の総面積46.53平方キロメートルの約5分の1にあたる9.04平方キロメートルが津波で浸水し、そのうち農地は、本町の農地の約40%にあたる約4.2平方キロメートルが被害を受け、また家屋については、全半壊630戸の被害がありました。さらに福島第一原子力発電所事故では比較的放射線量の影響を受けない当町でも農業や漁業、観光などへの風評被害が未だに残っている状況です。  

震災直後のJR新地駅

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震災からの復興の現状

東日本大震災という未曾有の困難に直面しましたが、「やっぱり新地がいいね」を基本理念に掲げ、新地町復興計画に基づき、復旧・復興に向け取り組んできました。これまで国、県、自治体からの職員の派遣支援等多くの支援を得ながら被災地でも復興まちづくりのトップランナーと評価をいただいているところです。  

第一次復興計画では住宅を失った津波被災者の高台移転による「すまい再建事業」を最優先課題として取り組み、震災からのいち早い復旧・復興事業を進め、第二次復興計画では、「すまいの再建」に加え「コミュニティ・絆」や「仕事・なりわい」の復興と「新たなまちの拠点づくり」をめざして復興を加速させたことにより、昨年末には「すまいの再建」が概ね完成し、津波で被災された住民が移転した居住地で新たな生活をスタートさせています。

また、交通インフラにおいても常磐自動車道・新地ICの開通や東北中央自動車道・相馬福島道路の一部開通、そして、震災の津波により流出したJR常磐線・新地駅と周辺の線路は内陸に移設し、新たな新地の顔として新駅舎とともに運転再開となりました。

平成28年4月からは第5次新地町総合計画後期基本計画に復興計画を統合し、平成32年の町の将来人口を概ね8,700人(※)と目標を定め、各施策を行っています。

(※)平成27年国勢調査人口は8,218人

JR常磐線運転再開記念式典

JR常磐線運転再開 電車を見送る地域住民

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新たなまちの拠点づくり

新地駅周辺地区は、JR常磐線新地駅を中心に、国道6号や主要地方道相馬亘理線バイパスなど交通アクセスに恵まれ、さらに町役場や保健センター、図書館などの公共施設が集積する地区にも隣接しています。  

このため、駅周辺の23.7haを新たなまちの拠点地区として位置づけ、平成25年から新地駅周辺市街地復興整備事業に取り組んでいます。現在は、造成は概ね終わりを迎え、消防・防災センターや災害町営住宅の整備が完了し、住宅やクリニックの建築が始まっています。

駅前パース図

本年度は、「新たなまちの拠点づくり」に注力し、主な事業として、町民が気軽に立ち寄れる「複合交流センター」、子どもから大人まで楽しめるフットサルを中心とした「屋内型スポーツ施設」、新たな事業者や起業者の支援と駅前の賑わい創出を図るための「複合型商業施設」、交流人口の拡大が期待される「温浴・宿泊施設」を整備していきます。

また、この地区ではスマートコミュニティを導入します。具体的には、平成30年操業を目指し相馬港4号ふ頭に建設しているLNG(液化天然ガス)基地からパイプラインを通して供給されるLNGを活用するため発電施設「地域エネルギーセンター」を整備し、この施設で造られる電気に加え、発電で生じる温熱、熱交換器で発生させる冷熱を各施設に安定して供給するほか、今後整備が予定されるスマートアグリにはCO2も供給し、環境負荷の少ないエネルギーシステム導入の先進地を目指します。

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海・里・山の魅力回復と賑わいづくり

本町の玄関口となる新地駅周辺の事業とともに、町が賑わうための方策として観光・交流人口の拡大と移住・定住を促進していく必要があると考えています。  

本町は、町の概要でも前述したとおり、比較的小さな町域ながら豊かな自然を背景に海や里、山に触れ、体感することのできる資源があります。

まず本町のシンボルでもある山、標高429.9mの鹿狼山(かろうさん)です。山頂から360度の眺望が見事で、四季を通じてハイキングなどが楽しめる山です。5つの登山コースが整備され、所要時間も40分から1時間程で登ることができ、子どもから大人まで楽しむことができます。毎年、地域住民を中心とした実行委員会が主催する「鹿狼山元旦登山」が恒例となっており、本年は「日本一早い山開き」として実施したところ、町内外から約3,500人の登山者があり、山頂より初日の出を迎えております。

里では、毎年4月中下旬には約40品種、4万本もの色鮮やかなチューリップが咲き誇る「チューリップ祭り」や右近清水の菅ノ沢溜池(約3ha)を取り囲むようにソメイヨシノ、河津桜や珍しいウコン桜などの様々な種類の桜が咲き誇る「桜の回廊」、そして秋には里山の紅葉をみることができます。

40,000本もの色鮮やかなチューリップが咲き誇る「チューリップ祭り」

最後に海です。残念ながら、東日本大震災により被災し、まだ復旧途上にあることや風評被害などにより、まだ交流ができる環境が十分に整っていると言える状況ではありませんが、震災前には、海釣り公園や釣師浜海水浴場など多くの人で賑わっていました。海釣り公園では、相馬共同火力発電(株)新地発電所の温排水により、様々な魚種が集まる釣り場として人気があり、大きいもので74pのヒラメが釣れた時もあることから、県内外から釣果をもとめて多くの方に来場いただきました。釣師浜海水浴場では、シーズン中に訪れる海水浴客は言うまでもなく、毎年8月上旬には釣師浜海水浴場や漁港を会場とした海に関連するイベント「遊海(ゆかい)しんち」が開催され、夜には花火の打ち上げがあり、多くの集客がありました。そのイベントは、震災後の夏、町に元気を取り戻そうと新地町商工会青年部主催で「なんだ かんだ言ったって やるしかねぇべ祭」としてよみがえり、震災以降沈んでいた町の空気も、子どもたちの歓声、大人たちの笑顔によって活気が戻り始めました。今では、新地町商工会青年部が主体となった実行委員会で運営する「やるしかねぇべ祭」として定着し、回を重ねるごとに来場者が増え、昨年開催された第6回では、過去最多の36,000人の来場者がありました。

この祭りもそうですが、震災以降は、若者たちが自分たちの手でまちづくりを行うという意識や活動がより高まったように感じます。

多くの観光客が訪れた海辺のイベント「遊海しんち」

若者たちの活気がみなぎる「やるしかねぇべ祭」

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移住・定住の取組

移住・定住の促進については、都会からのUIJターンなどの方を受け入れるオープンな地域づくりや、若者世代が安心して結婚・出産・子育てができるよう、保健や医療、子育てに対する支援の充実を図り、定住促進住宅の建設などで、若者世帯を中心に、移住・定住に繋がるような取組を推進しています。  

特に教育の充実を図っており、未来の新たな教育のカタチとして全国に先駆け、ICT活用教育に取り組んでいます。現在、小・中学校の授業では、各教室に整備された電子黒板や一人一人に配付されているタブレットを使用し進めているほか、テレビ会議システムにより国内外とつながる交流授業、他校との意見の共有など各校それぞれ工夫をした授業が行われており、子どもたちの将来を見据えた教育を町全体で行っています。

ICT活用教育(タブレットを利用した授業)

ICT活用教育(テレビ会議システムによる他校との交流授業)

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おわりに

震災から7年目を迎えましたが、復興はまだ道半ばです。町のめざす将来像「信頼の輪が広がる 暮らしきらめく しんち」の実現のため、東日本大震災による「ピンチ」を「しんち」の新しいまちづくりの「チャンス」と捉え前向きに取り組んでいきます。  

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