全国町村会

地域資源を活かしたアウトドアの里づくり

美しい棚田など豊かな自然が魅力の本山町

 

高知県本山町

3004号(2017年06月26日)  全国町村会 山中 理沙

本山町の概要

本山町は、四国の中央部に位置する人口約3,500の町です。町の中央部には西から東へと日本3大暴れ川のひとつ四国三郎「吉野川」が貫流しており、上流部に位置する「四国の水がめ」と呼ばれている「早明浦(さめうら)ダム」は、水力発電や洪水調整、生活用水、農業・工業用水を供給するなど、四国の産業基盤の強化と生活環境の整備に大きな役割を果たしています。  

また、吉野川支流の樫ノ川水系を囲む棚田など、日本の原風景が残る同町ならではの見どころも数多く、例えば、登山やハイキングコースとして人気が高い「白髪山(しらがやま)」は、県立自然公園に指定されています。登山道には樹齢150年から200年のヒノキが林立し、山頂一帯には、白骨林と呼ばれる自然が創り出した絶景が広がっています。愛媛県との境にある、標高1,404mの「佐々連尾山(さざれおやま)」では、登山道に沿って続くブナ林、ツツジの群生が見られます。頂上一帯は見晴らしの良い笹原で、晴れた日は瀬戸内海が遠望できます。他にも天から絹糸を垂らしたような優美な姿の「赤滝」、道から見上げると水が樽の上を滑るように流れ落ちる「樽の滝」、深い渓谷を刻み、清浄な湧水を集めて流れる「汗見川渓谷」など、町内には雄大な自然を楽しめるポイントが数多くあります。

町を流れる清流「汗見川」

     

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移住・定住の取組について

人(地域内)が人(地域外)を呼ぶ  

そんな本山町にも全国の自治体と同様に過疎と高齢化の波が押し寄せています。それを押し返すように、日本一うまい米「土佐天空の郷」の生産や農林業の6次産業化等に取り組む「本山町農業公社」「合同会社ばうむ」、地域おこし協力隊の活躍など、町は活気に溢れています。

お米日本一コンテスト最優秀米「土佐天空の郷」

木材加工事業(合同会社ばうむ作製)

例えば、近年では、本山町の美しい自然や里山風景にあこがれ移住・定住を希望する人々が増えてきています。平成28年度の移住・定住者数を見てみると男性10名、女性12名の計22名、全員40歳代以下と若い移住者が増加している傾向にあります。

大きな要因として、この地域には、嶺北地方(本山町、大豊町、土佐町、大川村)への移住を支援・応援するNPO法人「れいほく田舎暮らしネットワーク」や、気軽に田舎暮らしを体験できる滞在型市民農園「クラインガルテンもとやま」など、移住・定住をサポートする体制が整っていることが挙げられます。

クラインガルテンもとやま

さらに、最近では“人が人を呼ぶ”移住のケースも増えてきており、先に移住した方が地域との付き合い等移住・定住の土台を作り、続く移住者がスムーズに受け入れられやすくなるよう環境を整えてサポートしています。一例として、集落活動センターのある汗見川地域では、第1期地域おこし協力隊の方が1名定住後に、第2期協力隊2名の方が定住しています。その友人関係で今年の春から新たに2名の方が移住しています。同地域は自主的に草刈りや枝打ちを行うなど自分達の地域を活性化していこうという意識も高く、それゆえ自信をもって地域外の人も受け入れることができるといいます。

地域おこし協力隊の活動(林業)

また、嶺北地域の中心地に位置する同町は、以前から転勤者等による転入人口も多く、その方々と地域づくりに取り組んできました。そのため、地域の外から訪れた人に心安く声を掛けたり温かく受け入れたりする土壌もあるのではないかとのこと。このように、移住までのサポート体制や先に移住した方に相談できる環境、住民の方々との繋がりが確立されている地域のため、全体としてトラブル等が少なく安定した定住率の向上につながっているとのことでした。

一方で、移住・定住される方にとって必要な、住む家(空き家)の確保や整備が現在の課題とのこと。改修するにも耐震化が必須で、古くなりすぎていることや費用面等様々な課題があり、供給数が不足している状況とのことです。現状では、入居可能物件についてはすぐに入居者が見つかる状況で、町内の入居希望も含め、町営住宅整備のほか民間事業者の協力を得ながら、ニーズにあった住宅の確保を進めています。

「移住・定住」から「永住」へ

町によると、まずはじっくり地域を見てもらって、実際に足を運んでもらい、お試し移住等も利用しながら、永く「定住」に結びつくような目線で「移住」という選択をしてもらいたいとのことでした。そのため、町としても多くの方々を受け入れることよりも、一定数の本山ファンを、持続的に受け入れ続けることを重要視しており、「移住・定住」から「永住」に繋がる取組を着実に進めていきたいとのことでした。

また、地元の幸福度が上がると自然と人は集まってくるそうで、住民の方々と一体となって、住んでいて幸せを実感できる、地域づくり、環境づくりなどを行ったうえで、急がずにしっかりとした「定住」に向けた取組を進めていきたいとのことでした。

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全町アウトドアの里づくり

スポーツの文化 

本山町では、山や河川など豊かな自然資源や文化・歴史の地域資源を活用した自然体験型の観光・交流も積極的に行っています。

今年で30回目を迎える「高知・本山汗見川清流マラソン大会」は本山の夏の風物詩。毎年7月下旬に開催され、四国内外の約1,300人ものランナーが真夏の汗見川沿いを駆け抜けます。このマラソン大会は炎天下、山間の県道を駆け抜ける過酷なコースですが、汗見川や白髪山などの自然を身近に感じることができ、また真夏という全国でも珍しい時季の開催とあって、レース後には川遊びをして爽快感も楽しめる大会としてランナーの間で人気が高まっています。

汗見川清流マラソン大会

透明度の高い汗見川

8月上旬には、県内で最も古い歴史を持つ「吉野川いかだ祭り」が行われます。吉野川の早明浦ダムから本山河原までをいかだで下るコースで、フリースタイルと元祖いかだ部門があり、毎年趣向を凝らしたユニークないかだが登場し、多くの参加者と見物人で賑わいます。さらには西日本でも数少ない全天候型クライミング施設「吉野クライミングセンター」も早明浦ダム直下にあり、本山町では長年スポーツによる地域振興が行われてきました。

カヌーの里

また、豊富な自然資源の一つである河川を活用して「アウトドアの里づくり」を行っています。中でも吉野川は夏場の水量が豊富であり、初級者向けカヌー体験や競技カヌーに適していたことから、平成元年を境にカヌー体験の受け入れに向けた環境整備を始めました。

カヌーが盛んな本町ではカヌー体験も

その後、近畿圏等から多くの方が来町するようになり、カヌー初心者の体験やカヌーイストの交流の場となった「吉野川カヌー大学」(平成2~8年)などの取組を通じ、本山町は次第に「カヌーの里」として認知されるようになっていきました。今では、競技カヌーについては、国体の四国予選、高知国体(平成14年)、愛媛国体(平成29年予定)など本山町が競技会場となっています。さらに、初級者向けの親子ラフティング等も行われるなど、川を活用したアウトドア体験が広がっています。

吉野川ではカヌー体験やいかだ祭りなどのアクティビティが行われる

ラフティング等のアウトドア体験も充実

アウトドアビレッジ

本山町ではこのように地域資源を活用してアウトドア体験受け入れなどを進めてきましたが、これまでの取組は一年を通じた継続性がない、イベント的な内容が多いといった要素が強く、また町内には大人数を受け入れる施設がなく宿泊に繋がらないなど、地域の資源を十分に生かし切れていない状況でした。四国の中心という恵まれた立地や豊かな自然環境を活かし何かできないだろうかと考え、潟c塔xルと嶺北地域、ひいては四国のアウトドア活動の拠点となる施設の整備、運営方法など「アウトドアの里拠点施設整備」の構想のもと、平成27年から同事業の計画をスタートさせました。同町と古くから親交のある潟c塔xルは本山町の山や川などの立地を熟知しており、近隣町村との連携を図った山岳と自転車を活かした体験コースの設置など、地域資源を調査し、さらなる磨き上げを進めています。そのノウハウを活用し、現在、平成30年度の完成を目指し、地域の方、商工会等の交流団体と連携・協議を行いながらアウトドア拠点施設整備の計画を進めているところです。

アウトドアビレッジ完成予想図

同施設の整備地は、帰全山公園に隣接する旧本山中学校跡地を計画しています。施設には自然体験等の情報発信を行うビジターセンター、団体・個人向けの宿泊施設、飲食・温浴施設、さらには災害時の避難所を兼ねた多目的ホールなどを備え、四国のアウトドア拠点としての機能を発揮する施設を目指しています。

本山町ではアウトドアビレッジの事業推進によって、町がもつ「自然」、「歴史・文化」、「農林業」を観光と結びつけ、山、川、里でのアウトドアアクティビティ(野外活動)に適したフィールドの活用、来訪者と地域の交流の場として、アウトドア拠点施設「アウトドアビレッジ」を整備し、交流人口の拡大とそれによる雇用の創出を目指しています。

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今後のまちづくりについて

今後のまちづくりの課題は、まずは、せっかく町に来てもらった方にカヌーの体験や川辺で遊ぶだけで帰ってもらうのではなく、いかに地域の経済活動へ発展させていくかという点です。地域のことをよく知っている住民や観光協会、商工会の方々と共に取組を進めながら、また嶺北地域など周辺町村と連携しながら地域全体の振興を図っていきたいとのことです。そして2つ目は、人づくり(インストラクター育成等)など人財の課題があるといいます。平成28年度はラフティング、カヌー、トレッキングでの育成に重点的に取り組みました。今後も地域への集客だけでなく、地域の人づくりにも力を入れていきたいとのことで、例えば働き方についても、空いた時間を活用し柔軟に働けるワークライフバランスも進め地域の人財等を活用していきたいとのことでした。  

併せて、観光協会、商工会の方々と具体的に地域をどのように磨いていくかが課題といいます。例えば地域には美しい棚田があり、最近ではフットパス、田んぼアートなどのイベント開催により見学に来る人が増えてはいるものの、行きにくい、わかりにくいといった声も聞かれるようで、これからは、このアウトドアビレッジを拠点(集合場所)にすることで、拠点と棚田を結びつけるような流れをつくる。また、このアウトドア拠点だけに来てもらうのではなく、訪れた際には町中に点在する素晴らしい地域資源にも触れてもらうことによって、各地域が賑わい、地域の経済効果へ結びつくような仕組みづくりを地元交流団体とより連携して取り組んでいきたいといいます。本山町はこの拠点を中心に、町に点在している名所や観光地を訪れてもらい、点と点が結びあってそれぞれの活動が相乗効果をもたらし、それが地域のつながり(絆)になるような地域づくりを目指します。

田んぼアートなどのイベントも開催

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