全国町村会
 

「かて〜り」の精神で取り組む、観光のむらづくり
〜何度でも訪れてみたい観光地づくりへの挑戦〜

日向椎葉湖(吉川英治氏命名)

 

宮崎県椎葉村

2895号(2014年10月6日)  椎葉村長 椎葉 晃充

村の概要

椎葉村は、宮崎県西北部九州山地のほぼ中央、熊本県との県境部に位置しています。面積は537.35kuを有し、その約96%は山林原野で占められ、国見岳、 市房山など九州屈指の秀峰をはじめ、標高1,000mを超える山々が連なっており、村域の多くが九州中央山地国定公園に指定されています。 

明治22年に下福良村、不土野村、大河内村、松尾村の4つの村が合併をして椎葉村は誕生し、本年度で「村制施行125周年」を迎えています。 

村内には、「ひえつき節」をはじめ、数多くの民謡が伝承されており、また、26の集落に国の重要無形文化財指定の神楽が保存されています。また、 明治42年に柳田国男氏により本村の狩猟文化を著した「後狩詞記」が発表されたことから、日本民俗学発祥の地とも呼ばれています。  

主な産業は農林業で、農業については、夏季冷涼な気候を生かして高冷地野菜や花きの生産が行われています。林業については、人工林が民有林の59%に達しており、 豊富な資源が造成されてきたところです。 

また、村内全世帯への光ケーブル網を構築したことにより高速インターネット環境の提供を実現するとともに、 地上デジタル放送・CS放送の無料提供や村内無料電話のサービスも提供しています。    

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平家落人伝説と平家まつり

☆落人伝説 
日本各地において、平家の落人伝説が伝承されていますが、椎葉村においては、古文書「椎葉山由来記」に次のように残されています。それによりますと、およそ830年前、 壇ノ浦の合戦に敗れた平家の残党は、道なき道を逃れ山深き椎葉の地へと落ち延びてまいります。それを伝え聞いた源頼朝より、平家残党の追討の命を受けた「那須大八郎宗久」が椎葉の地で見たものは、 かつての栄華もよそに、ひっそりと農耕に汗し暮らす平家一門の姿でした。「大八郎」はその姿を哀れに思い、幕府には追討を果たした旨を報告し、 平家の守り神である厳島神社を建立したり農耕を教えるなど協力し合いながらこの地で暮らしました。このとき、平清盛の末裔といわれる「鶴富姫」と「大八郎」は恋仲となり、 姫は子どもを宿すことになります。しかし、程なくして、大八郎に鎌倉への帰還命令が下されます。別れの際に大八郎は、「生まれた子が男子なら、わが下野の国へ、 女子ならこの地で育てよ」と言い残し椎葉を後にします。 

生まれたのは、女の子。その後、姫は慈しみ育てられ、那須の性を名乗るようになりました。この悲恋の舞台となったのが、昭和31年に国指定重要文化財に指定されました「那須家住宅」、 通称、鶴富屋敷と呼ばれており、現在はその末裔、第33当主ご家族がお住まいになられています。  

那須家住宅(国指定重要文化財)

☆椎葉平家まつりの誕生 
歴史ロマンに彩られた平家落人伝説を背景に、壇ノ浦の合戦から800周年にあたる昭和60年に「椎葉平家まつり」は始まりました。本村におけるこの頃の観光は、前述の「那須家住宅」や、 国の天然記念物である「八村杉」、あるいは、日本初のアーチ式ダム「上椎葉ダム」などを見るだけの限られたものでした。 

折しも日本国内は、まもなく訪れるバブル景気を前に、少しずつ景気の好転を感じられる時期でした。したがって、特別なものがなくとも、それなりに観光客は訪れていただいていましたが、 そのような観光がいつまでも続くとも思えませんでした。 

また、当時を振り返ってみると、村の人口は5,100人となり、過疎化に一段と拍車がかかっていました。このため、交流人口を少しでも増やし村の元気を取り戻したい、そのためには、 新たな観光施策、誘客対策が何としても必要という想いが、このまつりの誕生に深く影響したものと思います。 

平家まつり(大和絵巻き武者行列)

☆「かて〜り」の精神とまつりへの取組み 
椎葉平家まつりは、毎年11月の第2金・土・日の3日間開催しています。小さな山村の小さなイベントとしてスタートしたまつりは、 いまや県内外から約2万人のお客様をお迎えする県内有数の催しものとなりました。 

まつりは、鶴富姫の御霊をお慰めする法楽祭が前夜祭として厳かに執り行われた後、土・日の両日、主要イベントである大和絵巻武者行列が盛大に催されます。行列は、 はるか平安を思い起こさせる絢爛豪華な鶴富姫の平家方と勇壮な騎馬武者姿の源氏方を中心とする約200名で構成されており、お客様からも高い評価を頂いているところです。 

また、お客様に幾度も気持ちよくお越しいただくためには、イベントの内容や構成はもちろん大事でありますが、それ以上に、お客様を「おもてなし」する心が重要であると思います。 しかしながら、小さな山村に大勢のお客様をお迎えすることから、行政だけでは限界があります。したがって、当初より村民への様々な場面での協力をお願いするとともに、 村民総ぐるみで作り上げていく気運の醸成を目指してきました。  

まつりの牽引役となる実行委員会は、住民の代表や出演団体の代表、運営をサポートする各種団体の代表など幅広い層から構成されており、毎年細部にわたる議論がおこなわれています。 また、村の特産品抽選の応募券を兼ねたアンケート調査を毎年実施し、そこから見えてくる改善点等につきましては、実行委員会で議論し、可能な限り改善を図っていく取り組みを重ねてきたところです。 

本村には、先達より引き継がれてきた「かて〜り」という精神が根付いています。「かて〜り」とは、お互いを思いやり助け合う相互扶助(助け合い)の精神を意味します。 

山深いこの地で生き抜くためには、住民同士の助け合い、行政と住民の協働が必要不可欠であり、自然に生まれ、今日に至るまで受け継がれてきたものであると思われます。 

また、この精神が受け継がれてきたからこそ、まつりイベントへの出演はもちろんのこと、裏方業務の最たるものである駐車場スタッフなど、多くの村民の方々が支えるまつりとして認知され、 平成20年「ふるさとイベント大賞奨励賞」の受賞につながったものと思います。 

古代より受け継がれる焼き畑農法

☆平家まつり体験ツアー 
まつり最大の見せ場となる大和絵巻武者行列には、平家方の姫と源氏方の従者に扮する多くの出演者が必要となります。この出演者の確保が実行委員会にとっては大きな悩みでした。また、 新たな誘客対策も必要との議論もなされた結果、出演者確保と誘客対策をマッチングさせた体験ツアーの実施という新たな試みが生まれました。これは、平家方の姫に扮し行列に参加できるというもので、 新たな旅行商品として、例年キャンセル待ちが必要なほど好評を得ているところです。また、これとは別に参加者の一般公募も行っていますが、県内外から多くの応募を頂いており、 ほとんどの参加者にご宿泊を頂いています。 

体験ツアー参加者扮する平家方

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何度でも訪れてみたい観光地づくりを目指して

☆第4次観光振興計画への取組み 
本村では、平成26年度から平成35年度を目標とする第4次観光振興計画の具現化に取り組んでいます。本計画策定にあたっては、宿泊業や飲食業者はもちろんのこと、 お客様に体験メニューを提供するインストラクター、あるいは観光ガイド、ひいては観光に直接関わっていない民間の方に委員に就いていただき、様々な角度からの議論をお願いしました。 

その結果、国内における経済の成熟化や高齢化の進行により、現代社会では心の豊かさが求められていること、また、村が守り育ててきた自然、景観、継承してきた伝統文化、 郷愁を感じさせる山村の暮らしぶりは日本の原風景であり、脈々と受け継がれた「かて〜り」の心は、 お客様への癒しや心の豊かさを十分に提供できるものであることから、「椎葉の日常・暮らしを楽しむ」を基本理念に掲げ取り組んでいます。  

国指定天然記念物「八村杉」

☆椎葉ファンクラブ 
本村には、雄大な自然やそこに暮らす人々をこよなく愛するファンクラブがあります。通称、「しいば好き人」と呼んでいますが、県内外から770名の方にご登録頂いているところです。 日頃から本村の魅力や特産品の情報などを全国に拡散頂くだけでなく、幾度も本村を訪れ村民との交流を楽しまれています。また、会員の皆様から頂くご意見や評価は、 村内に居ては気づかない貴重なものが多く、大変有り難く思っています。 

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今後の課題

現在取り組んでいます観光振興計画の具現化に向けては、数多くの課題解決が必要であると思います。特に、本計画を先頭に立って進めていけるリーダーと組織は必要不可欠であると思います。 このため、本計画を策定した委員の皆様には、計画の具現化を、見届けるプロジェクト実行委員として、今後10年間関与していただくこととしました。 

しかしながら、「椎葉平家まつり」がそうであったように、一部の住民だけではなく、村民総ぐるみでお客様をおもてなしする取組みが求められていると思います。そのためには、 取り組みへの理解を頂くとともに、できるだけ多くの住民が活躍する場面を創造することが必要です。幸いに、本村には観光振興や地域づくりに取り組む多くの民間団体が生まれ、また、活躍の場を求めています。 

観光産業は、非常に裾野の広い産業であり、付随する多様な相乗効果が生まれると考えています。  

少子・高齢化という厳しい現実とも向き合っていかなければなりませんが、村民一体となって、何度でも訪れてみたい観光地づくり、その結果、 住民が生き生きと暮らせる持続可能なむらづくりを進めていきたいと思います。 

峠から望む雲海

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