全国町村会
 

レ・コードと音楽によるまちづくり
〜新冠町の人口減少対策〜

新冠町内にある牧場での風景。新冠とサラブレッドは非常に大切な関係です。

 

北海道新冠町

2894号(2014年9月29日)  新冠町長 小竹國昭

町の概要

新冠町は、北海道の南部・日高地方に位置する人口約5,800人の小さなまちです。 

競馬場で走る競走馬(サラブレッド)の産地として知られ、日高山脈の主峰・幌尻岳(標高2,052m)をバックに、 馬がのんびりと草を食む風景に多くの観光客が癒しを求めてやって来ます。新冠の馬づくりは、北海道を開拓した先駆者の一人、エドウィン・ダンが馬産改良のために、 明治10年に官営の新冠牧場(後の新冠御料牧場)を設計・開拓したのが始まりで、現在では全国で活躍する競走馬の約8割がこの日高地方で生産されています。 

新冠町からは、史上5頭目の3冠馬として名を残すナリタブライアンをはじめ、数多くの名馬を送り出しています。 国道235号線から山間部に向かう8qの道端には牧場が連なり「サラブレッド銀座通り」の愛称で親しまれ、かつてターフをわかせた名馬達も余生を送っています。  

軽種馬産業以外にも新冠町は一次産業が盛んで、酪農、畜産、水稲と農業生産は多岐にわたっています。近年は、特にそ菜・肉牛生産が伸びており、 そ菜ではピーマンが全道一位の生産地と なり、肉牛は黒毛和牛の生産が軌道に乗り、「新冠牛」としてのブランドが確立しつつあります。 

また、太平洋に面した新冠町では、小規模ながら魚種豊富な季節の鮮魚が水揚げされ、コンブ、ホッキ、ウニなどの資源を管理する栽培型漁業と、 沿岸漁業が主体に行われています。軽種馬産業が盛んである要因に、気候の良さがありますが、新冠が位置する北海道南部、日高地方の海岸沿いは北海道でも温暖なことで知られ、 年間を通じて過ごしやすい気候が続きます。新冠町は年間平均気温9℃で、昼夜の気温差が少なく、最深積雪量は19pと、積雪量が少ない海洋性気候で、 北海道にありながら除雪の必要がほとんどありません。 

判官館森林公園から一望できる太平洋と新冠町の風景

  

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レ・コードと音楽によるまちづくり

新冠町におけるまちづくりは、「レ・コードと音楽によるまちづくり」をコンセプトに取り組んでいます。 

このきっかけとなったのは、 1990年の冬に町内音楽サークル「一枚のレコード」から出た一つのアイデアでした。「レコードをこのままにしておくと散逸してしまい貴重な歴史的価値のある音楽文化が間違いなく消滅する。 今、消え去ろうとしているレコードを世界規模で集めて町づくりが出来たら、きっと文化の香り高い町が造られるだろう。 それは21世紀に生きる子供たちのためにも素晴らしいことだ。」という熱い思いからでした。

当時、新しい町のあり方を模索していた新冠町は、町を活性化するユニークなアイデアであると考え、「レ・コードと音楽によるまちづくり」がスタートしました。  

「Record」の語源を紐解くと、「Re」には「Refreshリフレッシュ」、「Rememberリメンバー」、「Relaxリラックス」など「返る、戻る、再び、新たに」という意味があり、 「cord」は、ラテン語で「心」という意味があります。ここから、「Re・cord」の言葉には「心が返る」という意味が含まれていることがわかります。 

レコードの一枚一枚には、持ち主の思い出や、人生のドラマが詰まっています。そんなレコードを新冠町で大切に保管し、いつでも心の再生に来ていただけるようにと、 聴体験文化交流施設「レ・コード館」が建設されました。 

オープンから17年目を迎えた「レ・コード館」
全国から寄せられた思い出のレコードを大切に保管しています。

レ・コード館には現在、全国から寄贈されたアナログレコード90万枚が保管されています。 

その一枚一枚をデータ管理し、自分の思い出のレコードをいつでも聞く事ができます。まさに、心のふるさととして何度も新冠町を訪れるリピーターが全国各地にいます。 

また、レ・コード館にはレコードの歴史を学んだり、 貴重な蓄音機などの展示品を見学できるミュージアムや世界最高峰のスピーカーシステム「オールストレートホーンスピーカーシステム」により、CDでは味わう事のできない、 迫力のある繊細な音を楽しむ事ができます。 

では、新冠町ならではの音楽と密接なまちづくりを紹介します。 新冠町と昭和音楽大学によるパートナーシップコンサートは新冠町出身の同大学生がレ・コード館で自主コンサートを行ったのがきっかけで14年前から続いています。 昭和音大と新冠中学校吹奏楽部との技術交流から、町内小学校へ訪問し楽器の楽しさを伝える課外授業、 そしてレ・コード館でのコンサートでは町内音楽サークルとのコラボレーションが実現します。

また、レコードの良さを広く伝えるべく蓄音機とレコードを持って出掛ける「出張レコードコンサート」、 その年に解禁されたボジョレーヌーボーをレコードを聴きながら味わう「レコードとワインの夕べ」等、レコードと音楽によるまちづくりは、町民と色々なかたちで関わりあっています。 

レ・コード館は平成9年にオープンし、多くの来館者に支えられ17年目を迎えました。現在も全国から段ボールいっぱいに思い出がつまったレコードが送られてきます。 レ・コード館は新冠町の文化・交流・観光の中心施設として、まだまだ発展していきます。  

新冠町と昭和音楽大学によるパートナーシップコンサートの一コマ

 

新冠町では、アナログレコードを「20世紀の音楽文化を記録した歴史遺産」と位置づけ、 これを後世に継承するため、「レ・コード100万枚を求めて…」をスローガンとし、レコードや機材の収集を行っています。
お問い合わせは、「新冠町教育委員会 社会教育課生涯学習グループ」までご連絡下さい。
E-mail record01@cocoa.ocn.ne.jp
電話番号 0146(45)7833

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新冠が推進する定住・移住プロジェクト

(1)新冠町の人口減少 

新冠町も少子高齢化の影響により、昭和35年当時で1万1千人程いた人口が、平成19年には6千人を切るほど人口減少が進みました。 

これを深刻に考え、新冠町は平成18年から人口減少対策として役場内に「定住・移住プロジェクトチーム」を立ち上げました。新冠町への移住に関する相談を、 すべてワンストップ窓口で受け付け、個別に移住相談に乗りました。  

(2)宅地開発事業 

新冠町は、新たな住宅用地確保のため未利用町有地を解放し「レ・コードの森ニュータウン」として宅地分譲しました。 広大な敷地で太平洋を一望するロケーションと坪単価約2万円の低価格が評判で、70区画が約5年で完売する結果となりました。現在は60世帯185人が居住し、自治会も新設され、 新たな町内交流が生まれました。 

このニュータウンには町外から41世帯、123人が移住し、新冠町の人口減少に歯止めをかけました。この宅地分譲事業が成功した要因は、行政が町有地を民間に払下げ、 民間企業体が宅地整備をすることにより開発事業費を抑え、販売価格を低価格に設定できたこと。また、広告宣伝から販売までを民間が行うことにより早期完売に繋がったことが挙げられ、 まさに官民が一体になったといえる事業でした。 

現在、隣接地に第2期分譲地を開発し「レ・コードの森スウィートタウン」として好評販売中であります。 

多くの移住者によって新たな自治会が誕生した「レ・コードの森ニュータウン」

(3)定住・移住促進制度補助金 

新冠町に住宅を新築された方への支援制度として「定住・移住促進制度補助金」制度を創設し、金銭面でのサポート体制も整えました。なお、 町内業者で住宅を建設した方には奨励金額を優遇し、町内業者の受注率向上による経済効果も視野に入れています。 

@住宅取得奨励金 
(町内業者で住宅建築した方に40万円、それ以外は10万円) 
A引越し助成金 
(移住前の住所地によって5万〜30万円まで交付) 
B子育て世代支援金 
(中学生以下の子供がいる世帯に、最高5年間の固定資産税補助) 
C住宅利子補給金 
(住宅ローンの補助制度、町内業者で建築した者のみ対象) 

子育て世代の夫婦も安心して移住できると好評の「認定こども園ド・レ・ミ」

(4)移住促進住宅「ナナカマド」の整備 
新冠町内の民間アパート・マンションは常に満室状態であり、町外からの受け皿となる住宅が不足していました。その当時、空き家となっていた教員住宅が数軒あったことから、町は、 国の補助金を活用し、この教員住宅を移住者向けの賃貸住宅としてリフォームしました。 

入居条件を町外の若年層世帯に限定し、入居者=移住者(人口増加)としましたが、戸建て住宅でありながら、月額3万円の低家賃に設定したため7棟の住宅に入居希望者が殺到し、 抽選での入居決定となりました。入居当時は7世帯18人であったのが、各世帯で子供が産まれ、現在26人の入居者となっています。若年層夫婦に入居させ、さらなる人口増加を狙った効果も表れました。 この住宅は入居できる期間を10年以内としており、退去後に町内に住宅を取得し、定住させることを最終目標としています。  

新冠温泉レ・コードの湯は、露天風呂から太平洋に沈む夕日を見る事ができます。

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おわりに

新冠町は全国的に知名度も無く、札幌市、富良野市、小樽市など大きな観光地と違い、日高地方に来る方は競馬ファンなどに限られています。 

ただ、田舎でありながらも新千歳空港へ車で1時間20分、そこから羽田空港までは1時間30分と首都圏へも日帰り圏内で、道都・札幌市にも車で2時間と非常に便利な立地にあります。

しかも北海道でありながら雪の心配がいらず、海の幸・山の幸が豊富で第二の故郷として最高の環境が整っています。  

本編では紹介しきれなかった温泉施設や登山道、釣りスポットなど、訪れた方を満足させる魅力が新冠には沢山あります。 

是非、北海道にお越しの際は新冠へお立ち寄り下さい。町民一同、お待ちしております。 

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