全国町村会
 

世界遺産と水源の里
〜白神山地×エコツーリズム〜

世界自然遺産白神山地

 

青森県西目屋村

2881号(2014年6月2日)  西目屋村長 関 和典

村の概要

1500人弱と青森県で最も人口の少ない本村は、津軽地域の西部に位置し、地域の中心都市である弘前市と隣接しています。 三方を山に囲まれ総面積の9割以上が林野によって占められています。そして、豊かな津軽平野を潤す岩木川の源流域となっており、 現在は東北地方でも有数の大きさを誇る「津軽ダム(津軽白神湖)」を建設中であり、平成28年の完成に向けて工事が進められています。また、 村の南西部には日本で初めて世界自然遺産に登録された白神山地が広がっており、「世界遺産と水源の里」をキャッチフレーズに自然と共生していくむらづくりを進めています。    

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観光の夜明け

白神山地の世界自然遺産登録を目指す運動が活発化する前、村を訪れる観光客は年間数万人程度でしたが、その運動がマスメディア等を通して全国から注目を浴びるようになり、 そして平成5年の世界自然遺産登録を機に、急激に観光客が増え始めました。それに対応するため、温泉付き宿泊施設や物産施設、ビジターセンターといった学習施設などが建設され、 積極的に受け入れ態勢を整備してきました。 

平成8年には白神山地に精通している村民の方々に協力を仰ぎ「西目屋村観光ガイド会」が設立され、この時初めて村にガイド産業が生まれることとなります。 

遺産登録から約10年が経過した頃、多い時は1日に40台もの大型バスが訪れるようになりました。年間の観光客数も60万人を超えるようになり、 観光産業も順調な伸びを示していく反面、新たな問題が浮かび上がります。  

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エコツーリズム

本村には観光客が最も訪れる「暗門の滝歩道」という散策路があり、数ある白神山地のコースの中でも唯一、遺産地域内に気軽に入れるコースになっています。 そのため観光客も多く訪れ、特に夏休みシーズンの8月と紅葉の見頃を迎える10月には集中し、 幅狭な散策コースにおける危険度の高まりやブナの根の踏み荒らしによる自然資源への負荷などの懸念が指摘されてきました。また、 雪が多く降り積もる冬についてはこれまでほとんど観光サービスは行われてこなかったこともあり、観光利用時期の分散化も一つの課題としてありました。 

暗門第2の滝

このような現状から、平成16年度から3年間にわたり環境省の支援を受けて、 県境で隣接する秋田県藤里町とともに「白神地区」としてエコツーリズム推進モデル事業に取り組むこととなりました。 

しかし、今ではよく耳にするようになった「エコツーリズム」という言葉も、当時は村に全く浸透していない状況から、 当事業3か年はあくまでもエコツーリズム推進の本格稼働に向けた準備期間と位置付けて、まずはその基盤を確立することを目的として行うことにしました。村内観光事業者や一次産業団体、 交通事業者、ガイド団体、関係行政機関などを構成員として協議会を設立。地域にはどんな資源があり、利用されているのか、または利用されていないのかの現状調査によって、 自然資源や人文系資源、年中行事など、数多くのものが掘り起こされました。  

また既存のツアーの受け入れ態勢としては、旅行会社などが必要とするガイドの斡旋手配に多くはとどまってきたため、「プログラム」としての提供は限られていました。内容は、 山登りや自然散策が大半で、自然と触れるアクティビティや夜のプログラム、歴史伝統文化や農業などとの連携した食の体験プログラムなどもわずかしかありませんでした。 季節については冬期間はほとんど行われておらず、スノーシュートレッキングなどが一部試行的に始まっている程度でした。 

このように、初年度は現状を把握し、2年目は掘り起こした資源をベースにプログラム作りがスタートしました。りんご・そばの収穫体験や山菜採り、マタギのミニ講演、 スノーモービル体験、雪中鍋、地元の伝統行事への参加など、これまで受け身だった観光から、こちらから仕掛けていく観光へ徐々に変化していきます。 

りんご収穫体験

インストラクターによるスノーモービル体験

3年目の最終年度は主にガイドのルールづくりに取り組みました。当時、地域で活動しているガイド団体は村内外合わせて7団体あり、総人数は50人を超えていました。 ガイドによって説明や対応が違うという声も寄せられており、ガイドの技術・知識は様々でした。そこで、お客様に遵守していただく事項やガイド自身の留意事項、 また別に西目屋村・藤里町の両町村独自のルールをそれぞれ策定し、地域内の共通認識を整理し、それが現在も運用されています。 

以上のような取り組みを3か年にわたって進めてきたことで最も収穫があったのは、地域の横断的なメンバーが一堂に会し議論を重ねたことです。 各関係団体の思いを把握・共有したことは、大変貴重な場であったと考えます。 

県をまたいで2町村でスタートしたエコツーリズムへの取り組みですが、 現在では青森・秋田両県の8市町村が構成員となる「環白神エコツーリズム推進協議会」として白神山地全体でより広域的に進められています。 

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民間の動き

このようにエコツーリズムの機運も高まり、村内唯一の民間ガイド団体である「白神マタギ舎」は自主的でオリジナリティのある活動が認められ、 エコツーリズム大賞優秀賞(環境省)や地域づくり総務大臣表彰団体表彰(総務省)を受賞するほどになっています。 

白神山地の伝統的な生活文化とその基盤となる自然を守り、後世に伝えていくことを目的として同社は設立されました。 一般の方を対象に白神山地本来の自然を味わっていただく「山歩き」や、マタギ小屋に泊まり、山の生活を体験する「山暮らし体験」を柱としたエコツアーガイドを主な活動としており、 その特別な取り組みの内容からファンも多く、県内外からの多数の講演依頼を受けたり、メディアからの注目度も高くドキュメンタリー番組に出演したりするなど、村の活性化に大きく寄与しています。 

「白神マタギ舎」のかんじきトレッキング

ガイド以外の民間の動きも近年は注目されており、村内の空き家を改修した隠れ家風の喫茶店が話題となっています。特に女性の方々に人気で、 落ち着いた店内で癒しの空間となっています。また、大自然を有効活用したハチミツショップも昨年オープンしました。村で採蜜された無添加の純粋なハチミツを目当てに、 多くのお客様が来店されています。この2つのお店はいずれも村外の方が村に店舗を構えたケースで、近年はこうした地域外からの活力も入ってきました。  

また、村内には旅行事業者はなく、ツアーを企画・実施するにはこれまで大都市圏の事業者とのやりとりでしたが、 最近では隣接する弘前市の旅行代理店とタッグを組んで着地型のツアーを実施し誘客を進めています。 

いずれにしても、観光に限ったことではありませんが、行政区域の枠を超えて、そして県の枠も超えて広域での動きが活発化してきています。 以前から人材不足が課題となっていた村ですが、広域的な取り組みを行い地域外の人材とネットワークを形成することで人材不足解消の一助となっています。 

空き家を改修してオープンした喫茶店(CAFE Rural)

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今後の取り組み

現在も多くのガイドが村内でも活動していますが、年々高齢化してきており、後継者不足が深刻になっています。ガイド業としての主な活動期間は春から秋の半年間に限られるため、 ガイド業のみを生業とするガイドはほんの一握りで、冬期間は別の仕事に携わっている方がほとんどです。そのような現状からガイドで生計を立てることは容易なことではありません。しかし、 世界自然遺産に登録されてから20年が過ぎ、今後も村の観光産業を持続可能なものとしていくためには、白神山地の自然や文化を伝承するガイド後継者の発掘・育成は避けては通れない課題となっています。 

他には、これまで取り組んできた自然体験プログラムよりもさらに奥に踏み込んだ「白神らしさ」を提供したいと思っています。 村に訪れる方々が白神山地の本当の価値や保全の意義について理解を深められるよう、既存資源の見方を変えて、まだまだ多く眠っているであろう潜在プログラムを模索しながら、 観光の質の向上を目指していく必要があります。 

今では「世界遺産」も全国各地にあり、決して珍しくはありません。それぞれが特色あるユニークな事業を展開して、誘客促進に取り組んでいます。  

西目屋村としても、小さな村であることを利点とし、世界自然遺産の名に相応しい「選ばれる村」を目指して、今後も観光振興を図ってまいりたいと考えています。 

マタギ小屋

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