全国町村会
 

千葉県一人口の少ない町が「発酵の里」でまちおこし

神崎町航空写真

 

千葉県神崎町

2880号(2014年5月26日)  神崎町長 石橋 輝一

町の概要

千葉県内で最も人口が少ない神崎町(平成26年4月末現在:6,460人)は、千葉県の北東部、利根川を挟んで茨城県と接する位置にあり、 利根川沿いの平坦で肥沃な土壌を生かした稲作などの農業が基幹産業となっています。かつて利根川の水運業が盛んだった江戸時代から明治にかけては、米や大豆などの豊かな農産物を元に酒、みそ、 しょうゆ等の醸造業が発達し、多くの店が河岸周辺の街道に軒を連ねて賑わっていました。最盛期には、「関東の灘」と呼ばれていたこともあり、狭い通りに造り酒蔵が7軒、 味噌蔵や醤油蔵も軒を並べていました。 

その後、鉄道の発達とともに利根川の水運は廃れて醸造業も衰退してきましたが、現在でも江戸時代から300年以上にわたり醸造を続けている蔵元が2軒あり、発酵文化を今に伝えています。 

本町の交通網は、利根川の水運に代わり、鉄道ではJR成田線が、幹線道路では国道356号が、町の東西を結んでおり、このような状況の中、 本年4月12日に町を南北に貫く首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の茨城県稲敷インターチェンジ.神崎インターチェンジ間が開通し、来年には成田空港までつながる予定です。本町では、 この圏央道開通により周辺地域が発展することに大きな期待を寄せています。     

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取組の動機

少子高齢化は本町でも進んでおり、人口減や住民の高齢化(平成26年4月1日現在:高齢化率29.5%)などに伴い、 町の中心街路においてもシャッターの閉まっている店舗が増えるなど活気がなくなってきていました。 そのような中、「仁勇」で知られる鍋なべ店だなと「五人娘」の寺田本家は老舗の酒蔵として別々に酒蔵まつりを行っていましたが、これを同じ日にできないかという提案が鍋店よりあり、 町が間に入り同日開催することになりました。この酒蔵まつりの準備のため、寺田本家と地元の農家の提案で平成20年に「発酵の里協議会」という組織を結成し、酒蔵まつりの開催を契機に、 発酵文化をキーワードにした官民一体のまちおこしが始まったのです。 

千葉県で一番小さな町が元気に楽しくなれるようにと、発酵食品や循環型農法などおいしく健康に良いものをテーマとして、以前から発酵食品の効能に注目していた老舗の酒蔵や、 有機農業に取り組んでいた農家らが集まって、まちおこしの機運が高まってきました。また、本町としても町のイメージアップと、観光客を呼び込むことによる町の活性化を見込んで、 住民側から発案された「発酵の里」づくりに取り組むようになりました。 

発酵の里こうざき 酒蔵まつり2014

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取組の内容

(1)発酵の里こうざき酒蔵まつり 

平成21年から始まり、多くの観光客を呼び込むイベントとなった「酒蔵まつり」は、水稲をはじめとする数多くの農産物と、 良質で豊富な水の恵みを源にした酒・みそ等の発酵文化を広くアピールし、町の商工・観光振興を目的に開催しています。 2軒の酒蔵のお祭りを中心に酒蔵の周辺延長約1kmに及ぶ県道・町道を歩行者天国にして、味噌や「ひしほ」(もろみ味噌)といった発酵食品や地元農産物などを販売する店舗を設置し地元商店の参加により、 河岸周辺の街道にかつての賑わいを呼び戻そうと、町をあげてのお祭りとして賑わいをみせています。 

2軒の蔵元(鍋店・寺田本家)でそれまで別々に行っていた日本酒の試飲や蔵見学を中心とした酒蔵まつり (現在も各蔵元において独自の呼称で開催されている)に神崎町が加わり、「酒蔵まつり」として初めて共同して開催することになりました。個別に開催していたころの人出は合計5千人程度であったため、 同数の人出を見込んでいましたが、ふたを開けてみれば2万人の来場。誰もがその相乗効果に目を見張りました。  

酒蔵まつりの様子 本部ステージ前

酒蔵まつり 試飲の様子

さらに平成22年には、マスメディアに取り上げられ、JR東日本によって新宿駅から臨時急行も運行されるようになり、 前年を大きく上回る3万5千人(神崎町の人口の5倍以上)が「酒蔵まつり」に訪れ、当日用意した商品が売り切れる店舗も出るなど、祭りは町の活性化とイメージアップにつながっており、 知名度が上がっていると実感できるようになってきました。 

近年の全国的な健康志向・自然志向の高まりとともに、発酵食品が見直されてきています。本町でも、このような大きな動向を踏まえ、平成24年1月には、 発酵のまちづくりというテーマを掲げ、「全国発酵食品サミット」を開催し「発酵の里こうざき」を全国に発信し、さらに平成25年には「発酵の里こうざき」の名称を商標登録したところです。 

また、町をさらにPRするため、ゆるキャラ制作に取り組み、 町のシンボルである国指定天然記念物の「なんじゃもんじゃの木」と「発酵」をモチーフにしたゆるキャラ「なんじゃもん」を制作し、平成25年の酒蔵まつりでデビューをはたしました。 

本年の3月16日に開催した5回目の酒蔵まつりは、天候にも恵まれ5万人の来場者があり、発酵食品・オーガニック食品などの出店を含めて約200店舗が出店するまでに成長し、 千葉県一小さな町の関東一大きな酒蔵まつりになりました。 

ゆるキャラ「なんじゃもん」

(2)「発酵の里」を支える人たち 

発酵の里を支える人として、地元の農家の存在が大きく、なかでも農薬や化学肥料に頼らない米や大豆を生産し、 安全でおいしい農作物を消費者に直接届けようという農家が集まって「発酵の里」を支える活動が行われています。 

この団体では、従来から生産者と消費者との信頼関係を築くため、田植えや稲刈り、酒仕込みなどの農業体験ができる交流イベントや、 地元でとれた農作物を地元の小学校給食で食べてもらうなどの食育、首都圏で行われるナチュラルマーケットへの出店や講演会などを積極的に行っています。 そして「発酵の里」としてのまちおこしにも積極的に参画し、蔵元に米を提供するなどの材料面だけでなく、自ら栽培している大豆を使用した自家製のみそ造りや菜の花からなたね油の生産も手がけています。 

こうした生産者の方々の様々な取り組みもあり、自然豊かな環境に惹かれて、神崎町に移り住んでくる人たちも現れてきています。「農業体験を通じて有機農業に興味を持った県外の若者が、 町の古民家を借りて活動に参加するようになった」という新規就農を志す人や、「在来種のおいしい大豆や良質な水があり、発酵の里としてのまちおこしの動きにも共感して出店を決めた」という豆腐店(月のとうふ)、 酒粕を使用した酵母パンの店(福ちゃんのパン)などの出店もあり、こうした町の外からの人も「発酵の里」を支えるようになってきています。 

酒蔵見学の様子

(3)健康食品としての酒粕 

「発酵の里」の代表的な食品として酒粕があげられます。従来から神崎町の蔵元では、酒造りに伴って生成される酒粕は、健康食品として大変体に良いことをアピールしていたところであり、 人気商品のひとつでした。 

そうしたところ、平成22年11月、全国ネットの情報テレビ番組において、日本の伝統健康食をテーマに発酵食品である酒粕が取り上げられ、更なる注目が集まりました。 酒粕は原料となる米に含まれる食物繊維の働きを良くし、悪玉といわれるLDLコレステロール値を下げる効果があり、ビタミンB群やアミノ酸など栄養やうまみの宝庫であることや、 健康食品として酒粕をおいしく食べるための調理法が紹介されました。 

この番組において神崎町の蔵元が取材を受けたこともあり、放送後、同蔵元はもとより酒粕を扱う業者でも酒粕が売切れとなるなど大きな反響となりました。今後も「無農薬米で、 正直に発酵させる、本来の酒粕の力ある商品を作り続ける」(寺田本家)ことで、消費者に良質な酒粕を届けていきたいとしています。 

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現状と今後の課題

酒蔵まつりは、毎年来場者が増え商店街はたいへんな賑わいを見せていますが、本町には、一級の観光施設がないため、普段は人通りの少ない閑散とした商店街です。 今後の課題としては、酒蔵まつりに来た来場者が普段から神崎町を訪れてくれるようなまちづくりが必要です。 

そのために現在、本町の活性化の拠点施設として圏央道神崎インター隣接地に道の駅の建設を計画しています。名称は「道の駅 発酵の里こうざき」として、 平成27年オープンを予定しています。この道の駅に発酵食品を全国より集め、多くの来場者が訪れることを期待しています。 

このように本町では、伝統ある地場の産業の特性を生かし、住民自らがその魅力を発信して都市生活者との交流を深め、まちおこしを行っています。  

また、圏央道の開通(神崎IC〜大栄JCT(仮称):開通予定平成27年)により首都圏からの交通アクセスが向上する中、こうした動きが多くの人の農業や食について関心を呼び起こし、 地域の産業のより一層の活性化につながるものと期待しているところです。 

(図面提供:発酵の里協議会)

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