全国町村会
 

災害を切り口とした 地域間交流と地域おこし
「智頭町“疎開”保険」

板井原集落にある古民家で囲炉裏を囲む疎開体験ツアー参加者

 

鳥取県智頭町

2819号(2012年11月5日)  智頭町長 寺谷誠一郎

自治体発!自治体初!

「みどりの風が吹く“疎開”のまち」をキャッチフレーズにまちづくりをすすめている智頭町は、鳥取県の東南部、岡山県との県境に位置している。 周囲は1,000m級の中国山脈の山々が連なり、その山峡を縫うように流れる川が合流して千代川となって日本海に注いでいる。長い歳月を経て、 鳥取砂丘の砂を育んだ“源流の森”が広がる。まちの総面積の93%が山林で、スギをはじめとする見渡すかぎりの緑が一面に広がる。春には、ソメイヨシノ、シャクナゲ、 ドウダンツツジ、夏には清涼な緑、秋は紅葉、そして冬には雪化粧と、1年を通してまちを彩る美しい自然にあふれている。 

2011年4月から始めた「智頭町“疎開”保険」の発案者は寺谷誠一郎町長。「保険」と名前はついているが、災害を切り口とした地域間交流、物流、 商流による地域おこしである。地震等の災害が起こったとき、一番困るのが生活場所の確保。「地震・噴火・津波等を原因とする災害救助法が発令された地域の加入者」に 「智頭町内および近隣町村提携施設での1泊3食7日分の食事と宿泊場所の確保・提供」を行う。また、加入者特典として、智頭町自慢のこだわりの米や安全でおいしい 野菜などの特産品をお届けする。日本に在住の人で、先着1、000名までの受付。加入金(保険代金)は1人1万円、保険期間は1年間でスタートした。 現在は全国約350名の方が加入している。 

町内の新田集落の田んぼの風景

  

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お年寄りに元気を、地域に交流を

「農業を軸にするにはどうしたらよいかと考えたとき、主たる農業従事者のじいさんばあさんに何ができるんかいなと考えた。じいさんばあさんは米作り、 野菜作りの名人だ。この人たちに光を当てよう」 

「お年寄りが土からこだわって作ったホンモノのお米や野菜を買い取る。今まで家族で食べる分だけで、たくさん作っても余っていた。 作った分を買い取ってもらえるとなると張り合いもでるし、ちょっとしたお小遣いになって元気になる。このお米や野菜が届いた都会の人は、智頭町のファンになる。 森林セラピーや農家民泊があるから疎開の下見に行こうかと交流が始まる」と町長。 

“かわいい孫に食べさせたくて作った野菜をほんの少しおすそわけ”という気持ちのお年寄りたち。何をどれだけ作って出荷するかは自由。 作った野菜を収穫できただけ集荷場所に持ち寄る。集荷日に集まった野菜を、みんなで作業を分担して一斉に箱詰めして加入者に送る。そして、安全・安心で新鮮な野菜を まごころ込めて作る生産者のグループ「智頭野菜新鮮組」も誕生した。みんなで作業しながら野菜作りの情報交換をしたり、箱詰めの方法について話したり、この場でも人と人とのつながりが広がっている。  

智頭野菜新鮮組のメンバー

「知り合いにお餅を作って送る時にはね、南天の葉を上にのせて送るのよ。南天は難を転じると言ってね」とメンバーのおばあさん。 

小包を受け取った加入者からは、その心遣いに感謝する手紙が送られてきた。花瓶に入れると元気を取り戻し、秋の風情が感じられてよいと。手紙とともに、 飾られた花、届けられた米と野菜、それを手に喜ぶ子どもたちの写真を送ってくださった加入者もいる。お互いに会ったことのない加入者が多いが、電話や手紙をいただくと、 「あー、あの方ね」と親しみがわいてくる。また、お米や野菜を宅配で送ってほしいと個別注文をする加入者もいる。「智頭野菜新鮮組」の野菜は関西でも産直販売されていて、 生産者のお年寄りが更に元気になる。 

様々なパンフレットやチラシ、新聞記事などを智頭町に送って情報提供や提案などで、応援してくださる人もいる。疎開保険が縁で智頭町に興味・関心を持ってもらい、 様々なつながりが広がっている。 

智頭町自慢のこだわりのお米や野菜などの特産品

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智頭町でゆったりと

「災害に限らず、都会の暮らしはストレスがたまる。サラリーマンが働きすぎて疲れてうつ病になる。お母さんが子どもを床にたたきつける。 そんな都会のストレスから逃れてみんな田舎にいらっしゃい」と町長。 

「いよいよ田舎の出番です」ということで、数年前から人々を受け入れるための様々な取り組みを行ってきた。そのひとつが「森林セラピー」。 “森林は町の大切な財産”としてとらえ、森の持つ癒し効果に着目し、ゆったり深呼吸できる豊かな自然空間と人々とのつながりを育むまちづくりを行っている。 「森のガイド」を養成し、県内初の「森林セラピー基地」に認定されている。 

森の中でゆったりと深呼吸

また、民泊協議会を立ち上げ、訪れる人々のために数十軒の民泊先も確保。疎開保険の宿泊先ともなっている。町内の民家に宿泊し、智頭町が“第2のふるさと” となるようにふれあいあふれる滞在型プログラムを用意している。  

田舎暮らし体験住宅「いろりの家」

加入者に智頭町を訪れてもらおうと、昨年は1回、今年は3回疎開体験ツアーを実施。国指定重要文化財「石谷家住宅」をはじめとして、 昔ながらの古い建物の集まる遊歩百選「智頭宿」、昭和30年代の日本の原風景を今に残す伝統的建造物群保存地区「板井原集落」を散策し、民家に宿泊して田舎暮らしを体験、 交流を深めていただいた。また、「森林セラピー」では「森のガイド」が一緒に芦津のセラピーロードを歩き、森の癒しに導いた。 民泊は夕方からの1泊で初めて会った人同士にもかかわらず、翌朝の別れは名残惜しく、親しく交流を深めた様子であった。手作りのお土産を手渡す人もあった。 加入者からお礼の手紙が届いた民泊家庭もあった。 

国指定重要文化財「石谷家住宅」

既に森林セラピーと民泊を体験し、疎開体験ツアーでは以前と違う民泊先に宿泊した参加者がいた。ツアーに参加していることを知った以前の民泊先の人が その参加者に手紙を渡しに来て、再会を喜び合うという光景もあった。一度出来た縁はずっとつながっている。 

民泊は、森林セラピーや疎開保険以外でも利用されている。お酒を酌み交わし、話に花が咲いたということもあるようだ。 

町は、民泊の他に、移住や定住を考えている人が長期滞在も可能な「田舎暮らし体験住宅」も準備した。智頭町での住宅探し、仕事探し、地域との交流、 トレッキング、観光の基地として活用できる。東日本大震災での放射能汚染から逃れて、子どもを安全な所で過ごさせたいと数日間滞在した家族もある。数日間の滞在でも、 新鮮な野菜のおすそ分けや地域行事への参加など、管理人や地域の人々とのふれあいがある。訪れた人は田舎の温かさに感激し、町民は外からの刺激を受ける。その家族は滞在中に、 智頭の豊かな自然環境を育ちの場とし、雨でも雪でも町内9ヵ所の森のフィールドをお散歩し自由に走り回ったり遊んだりする「森のようちえん」の体験も行った。 「森のようちえん まるたんぼう」は「智頭町の森の中で子育てできたら素晴らしい」と一人のお母さんが「百人委員会」(住民のアイディアを町政に活かすための政策提言組織) で提案し、町や県の支援のもと専属の保育士を雇って運営しているものである。この「森のようちえん」には、半数以上が町外から通っている。県境を越えて岡山から 通う子どもがいたり、移住した人もいる。「森のようちえん」を立ち上げ、事務局長として活躍するお母さんも、智頭の森に惹かれて家族で移住した一人である。 町外からの新たな風が吹いている。ここでも森が新たなつながりを生んでいる。 

民泊受入家庭と疎開体験ツアー参加者の顔合わせ

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1月から制度変更

町長が「智頭町“疎開”保険」の記者発表を東京で行ったのは2011年3月7日。その直後「東日本大震災」が起き、PRもしばらくストップしていた。 テレビや雑誌で取り上げられたり、問い合わせや申込みもあることから、秋にPR再開。 

2012年1月には智頭町が加盟している「日本で最も美しい村」連合事務局の美瑛町東京事務所があるフォレスタ虎ノ門で、疎開保険や森林セラピーの PRイベントを行った。町長が町の魅力を語り、智頭町産の食材を使った料理に舌鼓を打ちながら、交流を深めた。事前に電話やメールのやり取りがあった加入者との対面では、 親しく声をかけていただき、以前からの知り合いのような気がした。 

疎開保険事業は開始して1年目で課題もある。  

「家族7人で加入したいけれど、1人1万円だと入りにくいなあ。家族割引はないですか。」「1人1万円となっているけど、家族コースはないですか。」 

既に夫婦や家族で加入し、1家族で2〜4件加入されているケースもあるが、家族での加入を考えた場合に金額がネックになっているようなので、 家族コースの検討を行った。加入期間も、年度途中で加入しても3月までとなっていたが、ニーズが多いことから、併せて変更することとした。問い合わせや加入申込みが相次ぎ、 4月まで待ってもらうのもどうかということで2012年1月から制度変更した。加入期間は加入日から1年間、新たにファミリー2人コースとファミリー3〜4人コースを設けた。 2人コースは15,000円、3〜4人コースは20,000円である。昨年12月までの加入者は126人、1月からの新制度には45件、94人が加入している。今後も体験ツアーや交流会で、 新たなつながりが生まれることであろう。 

疎開保険チラシ

   

「いよいよ田舎の出番です!疎開保険に加入し、ぜひ一度智頭町においでください。」 

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