全国町村会

景観に配慮した魅力ある町づくり

  

毎分4,000リットルもの熱湯が湧き出ている迫力の湯畑(ゆばたけ)広場


群馬県草津町

2789号(2012年2月13日)  草津町長 黒岩 信忠

豊かな自然、そして温泉

草津町は群馬県の北西部に位置し、東西9q・南北8q、総面積は49.7平方km、人口7,100人の小さな町です。北と西には三国山脈の2,000m級の山々が聳(そび)え、東と南には海抜1,200mの高原が開けています。

特筆すべきは、土地の約70%は国有林であるとともに、草津白根山を中心としたその周囲は、上信越高原国立公園に指定され、あるがままの豊かな自然がしっかりと守られていることです。日本有数の活火山である草津白根山をとりまく山岳景観は、景勝地としては見ごたえ十分、また、ここは高山植物の宝庫でもあり、春のシャクナゲ、夏のコマクサ、秋にはナナカマドの紅葉が季節を彩り、ハイカーや観光客の目を楽しませてくれます。

そして最も重要なことですが、草津町が一番大切にしている「温泉」となる地下水が、その豊かな自然によって、しっかりと蓄えられていることです。

マグマ溜まりの熱で温められた地下水は、毎分32,300?の温泉となって町内の各所に湧きだし、自然湧出泉としては全国一の湧出量を誇っています。

この圧倒的な「温泉力」が草津温泉の名を日本全国に知らしめるとともに、年間280万人のお客様が訪れる温泉観光地として、その地位を確かなものとしています。

   

草津白根山

   

シャクナゲ

   

コマクサ

   

豊富な温泉

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草津町の特性、産業構造

草津町の産業別就業者数を見てみると、直近の国勢調査によれば、第一次産業はわずか0.9%、第二次産業は7.8%となっています。つまり町民のほとんどは第三次産業に従事し、しかもサービス業(全体の63.3%)に従事しています。

つまり、草津町=草津温泉であり、温泉地として、観光業で町が成り立っています。

これは、いうなれば、草津町が地理的には交通の便が悪い、標高1,200mの高原地帯にあったことに加え、土地の約70%が国有林で、耕作地として使える土地が少なく、農業も成り立たなかったことなど、観光以外では生計を立てることができない土地だったのです。

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歴史を振り返って・・・

歴史を振り返ってみるならば、およそ室町時代には草津温泉の名が文献に出てきており、戦国時代には豊臣秀次や前田利家など多くの武将が草津温泉を訪れています。江戸時代には全国にその名が広まっていたようで、小林一茶や十返舎一九などの文人も多く訪れ、「草津千軒江戸構え」とうたわれるほどの賑わいを呈したようです。

明治時代に入り、ドイツ人医師のベルツ博士(明治時代のお雇い外国人として来日、29年間東京大学で教鞭をとり、日本の医学の近代化に尽力した。大正天皇の侍医をつとめている)が草津を訪れ、「草津には、無比の温泉以外に日本で最上の山の空気と、全く理想的な飲料水がある。こんな土地が、もしヨーロッパにあったとしたら、カルルスバード(チェコ共和国のカルロビ・ヴァリ市で、ヨーロッパを代表する温泉リゾート地)よりもにぎわうことだろう」と絶賛し、温泉保養地としての草津を紹介しました。

戦後の復興、そして高度経済成長とバブル経済期には、日本中で開発ラッシュが起こり、草津温泉も他の温泉地と同様、経済優先の地域づくり、町づくりが行われました。町の中心街にあった老舗旅館などは次々と郊外に大型ホテルを建設し、やがてリゾートマンションが林立するようになりました。道路や上下水道などの整備が行われ、外へ外へと開発が広がっていきました。

特に「草津スキー場(現草津国際スキー場)」は、昭和23年に日本のスキー場としては最初期にスキーリフトを建設し、その後全国に広がった一大スキーブームの牽引役となりました。また、昔からあった地域の「共同湯」とは趣を異にした、日帰り温泉入浴施設「大滝乃湯」が建設され、草津町の経済発展の一翼を担いました。

草津スキー場も大滝乃湯も、週末ともなれば観光客がごった返す状態で、日本全国の観光地同様(観光地だけではありませんが)、草津町もバブルに沸き立ちました。

そして訪れたバブル経済の崩壊。俗に言う「失われた10年、あるいは20年」、日本経済が低迷、混迷する時代となりましたが、草津町も例にもれず、長い間、温泉観光地としての在り方、方向性を見いだすことができず、もがき苦しんできました。

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温泉観光地の在り方について

私は、観光地の使命とは、そこを訪れるお客様に日常生活では経験できないことを経験していただくこと、そして感動を与えることだと思っています。

高度経済成長の時代、大量生産と大量消費の時代を経て、時流に迎合して開発を進めた多くの観光地がその魅力を失い、疲弊して苦しんでいます。あるがままの自然を守り、地道に地域の特性を活かした町づくりを行ってきた観光地が、いまでは多くの人達から支持される観光地となっています。

草津温泉も多くの温泉観光地と同様、高度経済成長とリゾート開発の波に呑まれそうになった時代があり、ギリギリのところで踏みとどまってきたという気がします。

   

伝統的な日本建築

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なぜ、踏みとどまることができたのか?

それは、豊かな自然とそこで育まれた圧倒的な「温泉力」、長い歴史に培われた個性豊かな温泉文化(草津温泉には「湯もみ」や「時間湯」等、草津温泉独自の文化があります)、時間をかけて形成された情緒ある街なみ・・・。いわば日常生活で経験できない生活空間、あるいは「癒しの空間」が、草津町には、残っていたからではないでしょうか。

   

草津温泉の湯畑の前に立つ「熱の湯」「湯もみと踊り」は、ショーとしても楽しめます。

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景観ルールづくりと湯畑広場の再整備

草津温泉のシンボルといえば「湯畑」です。ここでは湧き出たばかりの温泉が湯煙をあげ、7本の木樋に通されたのち、湯滝となって流れ落ちています。

他に類をみないこの景観は、初めて草津温泉を訪れた人々におおきな感動を与えています。全国にあまたある温泉地でも、市街地の中心でこのような景観に接することは大変珍しいと思います。当然のことながら、湯畑の周囲にはホテルや旅館、土産店、飲食店が建ち並び、多くの観光客で賑わっています。

しかし街なみ景観の観点からみると大変残念なことがあります。

一つには、温泉情緒あるその土地固有の日本建築の建物が少なくなっていることです。これはわが国が高度経済成長の過程において、経済優先、効率主義をよしとしてきた結果ではないかと思います。

あと一つ、湯畑広場の南西に二か所、町有地が採石を敷いたままの駐車場となっていることです。この駐車場については、ある意味では利便性もあるのですが、広場全体の景観を考えると、大変見苦しいものとなっています。

平成16年に「景観法」が成立したことにより、地域の個性を生かした魅力ある街なみづくりに拍車がかかりました。草津町も本格的に街なみ整備に取り組むこととなり、平成22年度より国庫補助事業である「街なみ環境整備事業」に着手しました。

ポイントは二つ、市街地の「景観ルールづくり」と湯畑に二か所ある空地整備をメインとした「湯畑広場の再整備」です。

「景観ルールづくり」については、市街地を5つの地域に分け、地域ごとにその個性を生かした景観ルールをつくります。具体的には、建物の高さや色彩、屋外広告物の掲出等で、建物外観の改装等には助成金を出すことにより、地域の魅力ある町づくりを推進させます。

なお、地域の景観ルールづくりについて、地域の人達が自分で考え、そして自分達が納得したルールをつくっていくことを第一と考え、行政サイドからはアドバイスはするが、押し付けることはしない、いわば、“地域づくりは地域の人達で”というスタンスをもって、これからの草津町の担い手である、地域の青年部の方々を中心に、取り組んでいます。

昨年度は「湯畑地区」において景観ルールづくりを行い、地域住民の了解も得られました。今年度も他地区でのルールづくりを行っており、平成24年度中には予定した地域のルールづくりが完了します。

「湯畑広場の再整備」については、大きく三つの柱があります。二つある空地の一つには、「湯源(とうげん)の湯屋」という昔ながらの温泉情緒を満喫できる浴場施設を建設し、観光客の方々に本物の温泉を味わっていただこうというものです。

あと一つの空地については、「湯路(とうじ)広場」(イベント広場的な公園)を整備し、湯畑の賑わいを演出しようとするものです。そして最後に、「湯もみショー」で人気のある「熱の湯」が老朽化しているため、これを建替えようというものです。

この「湯畑広場の再整備」についても、地元住民や観光業界の代表者、議会議員への丁寧なヒアリングを行い、再整備構想を策定、町民全体説明会を実施するなど、できるかぎりの段取りを踏んで事業をスタートさせました。

なお、住民説明会では、大部分の方がこの事業に大きな期待を寄せ、賛同していただきましたが、意見の中には、町の財政が厳しいこの時期(おりしも住民説明会の開催時期が、東日本大震災と重なってしまい、日程を変更しての開催となりました)、なぜ「箱物」を作らなければならないのかという意見もありました。

しかしながら、「湯畑」という第一級の観光資産がありながら、その周囲では採石を敷いただけの土地が仮の駐車場として、ある意味では放置されていたということは、観光地として大変恥ずかしいことであり、決して「箱物」をつくることが目的ではなく、湯畑周囲の景観を整え、湯畑という観光資産をさらに魅力あるものにしようということが、第一の目的であることを重ねて説明し、理解を求めました。

「景観ルールづくり」と「湯畑広場の再整備」、この二つの事業が進展するにしたがって、草津温泉を訪れるお客様には、そのたびごとに、生まれ変わっていくその姿をお見せできると思っています。

平成23年度では、景観ルールに基づいた助成金制度もスタートし、すでに何件かの申込みをいただいており、街なみ整備が具体的に動きはじめました。また、湯畑広場に目を向ければ、「湯源(とうげん)の湯屋」の建築設計とともに、同地裏側にある擁壁の補強・修景工事も行っており、平成24年度にはいよいよ本格的な建築工事がはじまり、事業が具体的な形となって見えてきます。

   

湯畑・新湯樋

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おわりに

私は行政のトップに立つ者として、観光による経済の活性化、そして福祉と教育の充実を、町政の基本的な柱としています。

特に「観光」についてですが、草津温泉という商品をいかに魅力ある商品として磨き上げるか、そして草津温泉に来ていただいたお客様に感動と喜びを与えることができるか、それが何よりも大事なことだと考えています。

   

湯源の湯屋、イメージ図

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