全国町村会

「A級グルメ」と「日本一の子育て村」の推進により
雇用の創出と定住人口、観光交流人口の増加を目指す

  

鉄穴残丘で形成された全国でも珍しい於保知(おほち)盆地は、日本のスイスと呼ばれています。


島根県邑南町

2778号(2011年10月31日)  邑南町長 石橋 良治

夢響きあう 元気の郷

私たちの町「邑南町」は、平成16年10月1日に旧羽須美村、旧瑞穂町、旧石見町の2町1村が合併して誕生しました。

四季折々に彩りを見せる山々、清らかに流れる川、豊かな大地が育む産品、そして自然の恵みを受けながら脈々と受け継がれてきた風土や伝統文化が息づき、「誰もが心いやされる」魅力満載の邑南町です。

邑南町のまちづくりは、“「和」のまちづくり”を基本理念とし、「夢響きあう 元気の郷づくり」の実現に向け、住民総参加で取り組むこととしており、それぞれの地域の特性を生かし、人情味や風土を守りながら、この地に暮らす人々が誇りと生きがいを持ち、「住みたくなる、住んでよかった、住み続けたい」と思えるまちづくりを目指しています。

夢実現に向けた基本方針は、「『協力』『協働』『協調』による、住民主体のまちづくり」であり、平成19年4月には「まちづくり基本条例」を制定し、まちづくりに参加する権利や情報の共有化などを具体化することにより、町民と行政が協働して自立したまちづくりを進めているところです。

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どこにあるの? どんな町?

邑南町は、島根県中西部に位置し、西側は浜田市、北側は江津市・川本町・美郷町、南側は広島県安芸高田市・北広島町、東側は広島県三次市に囲まれ、中山間地に代表的な盆地の多い地形で、標高は100m〜600mの地域です。また南西部には1,000m級の急峻な地形も分布しています。

邑智郡の南部に位置していること、また「邑」は「ムラ」とも言い、人が寄り集う南の明るい地ということから邑南町の命名となりました。町章は邑南町の漢字の「邑」をモチーフに、町づくりのテーマ「和」から輪がふれあい、大きな輪を創っていくことをイメージしています。最近では知名度アップのため「おお!なんと癒しの邑南町」と言っています。

合併時の人口は13,455人、5,251世帯でしたが、現在は11,985人、5,065世帯(平成23年8月1日)と減少しています。高齢化率は39.4%と高く、少子高齢化が進行しており、定住対策、少子化対策に取り組んでいるところです。

面積は419.22平方kmと県内町村では最も広く、内86%を山林が占めています。産業就業人口比率は、第1次産業25.1%、第2次産業21.5%、第3次産業53.0%となっていますが、水稲、畜産、野菜を中心とした農業の町です。

   

瑞穂ハンザケ自然館

   

飼育されているハンザケ

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自然・文化・歴史を生かした地域づくり

自然豊かな本町には、ハンザケ(国の天然記念物オオサンショウウオ)が多く生息し、調査結果では町民と同数の頭数がいるといわれています。また、夏にはゲンジホタルをはじめ数種のホタルが乱舞し、ホタル鑑賞ツアーも行なわれています。町の東部には約1千万年前は海だったことから動植物を始め貝などの化石が見られる高たか海うみ地区があります。自然との共生をテーマとしたミュージアム「瑞穂ハンザケ自然館」にはハンザケが多数飼育されており、自然環境を学ぶ学習コア施設として多くの来館者が訪れます。

島根県は神話の国です。邑南町には16社中の神楽団と3団体の子ども神楽団があり、神話を題材とした舞「八岐大蛇 」などの石見神楽は広く愛され、伝統芸能として受け継がれています。

邑南町は、中世以降盛んに「たたら製鉄」の原料となる多量の砂鉄を採取するための「鉄穴(かんな)流し」が行なわれ、鉄穴流しで採取した砂鉄と豊富な木炭で「たたら製鉄」を行い、「出羽鋼(いずわはがね)」と呼ばれた良質な鉄が生産されました。映画「もののけ姫」は邑南町を含む中国山地一帯が舞台になっていると私たちは思っています。また、町の中心部は「於保知(おほち)盆地」と呼ばれる盆地となっており、鉄穴流しで残された緑の丘「鉄穴残丘」や、島根県産の石州瓦の赤い屋根と白壁がよく調和し、「日本のスイス」とも呼ばれています。

平成19年にユネスコの世界遺産として登録された島根県大田市の「石見銀山遺跡」は有名ですが、邑南町にも石見銀山に匹敵する「久喜・大林銀山遺跡」が存在します。鎌倉時代の1190年に発見されたと言われ、16世紀の戦国時代には石見銀山を含め銀山の争奪戦が繰り広げられました。江戸時代に入ると天領として栄えた久喜・大林銀山は、明治時代に入って銀・銅・鉛などを産出する鉱山として発展し、明治の終わりに廃坑となりました。久喜・大林銀山には、現在も400か所を超す間歩(坑道)や精錬所跡などが残されています。

そのほか邑南町には、断魚渓、千丈渓や滝などの自然スポットや、神社仏閣など様々な歴史建造物が存在します。

邑南町には12館の公民館があり、それぞれに非常勤の館長、専任の公民館主事(町職員)と臨時職員を配置し、これまで紹介した様々な自然、文化、歴史などの資源を活用し、自治会などの地域コミュニティと協働しながら、地域を担う人材の育成と地域づくりを進めています。

   

伝統の舞「石見神楽」

   

   

   

久喜・大林銀山の鉱山跡

   

夏にはマウンテンバイクも楽しめる西日本最大の「瑞穂ハイランド」スキー場

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「日本一の子育て村」の推進で更なる定住対策

   

   

おおなんケーブルテレビ局

邑南町では、これまでも限られた財源を最大限に活用し様々な定住対策を行なってきました。生活環境では道路や上下水道の整備を行ない、普及率は90%となっています。保健福祉分野では、公立邑智病院の充実や各種健診費用の助成、保育料の軽減など様々な子育て支援、情報通信では全町に光ケーブル網を整備し、高速インターネット環境の充実やケーブルテレビ局の開局、IP電話による無料通話体制や見守りネットサービス、雇用の場の確保としては企業誘致を進め、現在8社の誘致企業があります。また、ハーブを栽培、販売する香木の森公園での研修制度や農業研修制度も実施し、全国から研修生を受け入れ28人が定住しています。さらに無料職業相談所の開設や定住支援コーディネーターの配置により、就職や住宅相談、空き家提供機能も充実してまいりました。11校ある小中学校には全校に図書館司書を配置し、学習支援も行なってまいりました。

しかし、邑南町の総人口は、国勢調査結果では平成17年の12,944人から平成22年の11,966人と978人の減少となっており、0歳から18歳人口も平成17年の1,902人から平成22年の1,660人と242人減少しています。出生数は、近年75人前後で推移しており、婚姻件数は近年30件台、未婚率はどの年層においても未婚の割合が増加しており、男性、女性ともに未婚化、晩婚化が増加しています。合わせて小中学校の児童、生徒数は年々減少傾向にあり、県立矢上高校の生徒数も町外からの生徒確保で何とか維持できている状況です。

こうした状況を踏まえ、平成23年度から思い切った支援を行なうこととしました。そのひとつが子育て家庭の誘致です。子育て世代の経済的負担の軽減対策として、「第2子以降の保育料の全額無料化」や「中学校卒業までの医療費の無料化」を行なうことといたしました。そのほか一般不妊治療費助成、子育て支援手当の充実、放課後児童クラブ費減免制度、医師・医療従事者奨学金制度、農林業後継者育成基金の創設などがありますが、これらは子育て支援策の一部です。

邑南町は、高速道路のインターチェンジがあり、広島市中心部まで車で1時間余りで行くことができます。仕事は都市部でも子育ては自然豊かな邑南町で十分できます。田舎の魅力を十分生かしながら、思い切った支援を行なうことにより、毎年100人の子どもが生まれれば現在の人口を維持できると思っています。「子育てするなら邑南町で」を合言葉に、「日本一の子育て村」をピーアールするステッカーを町長専用車を始め、全公用車に貼り、定住対策に取り組んでいるところです。

   

邑智病院内のドクターヘリポート

   

町長専用車に貼った「日本一の子育ての村」ステッカー

   

ハーブを中心とした香木の森公園

   

研修生

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A級グルメで地域振興

邑南町は前述したように米を中心に野菜や椎茸栽培、畜産などの農業が営まれている町です。近年は公共事業の減少や6次産業化のブームもあり、建設業者の農業など新分野への参入も盛んになってまいりました。以前は米は農協へ、野菜は農協を通じて広島市場へ出荷されるのがほとんどでしたが、産直市場が建設されると小規模生産農家などから農産物や加工品などが出品されるようになりました。

邑南町には、ハーブ米や高原野菜、未経産の雌牛200頭限定の石見和牛肉、石見ポーク、自然放牧牛乳、キャビア、サクランボやブルーベリー、ピオーネなどの果樹、米粉パンやスイーツなどの特産品があります。また、独自の食品認定制度「oh!セレクション」を設置し「食」をキーワードにまちづくりを展開してきました。

町ではこれらの産品を売り出すために、インターネット通販サイト「みずほスタイル」を開設して販売を行なったり、東京を中心に食の専門家やメディアを招いての食のイベントを開催してPRに努め、邑南町の産品は一定の評価を受けることができました。しかし、レストランやホテル、大手スーパーなどに商談を持ちかけても質の評価はあったものの量が無いのが弱点でした。

そこで発想の転換を図り、平成23年3月に「食」を切り口とした「農林商工等連携ビジョン」を策定して、地域振興を図ることとしました。近年、健康や食の安全性に対する消費者の関心の高まりがあるとともに、「B級グルメ」、「ご当地グルメ」など「食」を核とした観光・交流事業の盛り上がりが見られる中、邑南町では「食」を今後の地域活性化に向けた重点テーマと位置づけ、農林商工等の異業種が連携し、「生産」「加工」「調理」「交流」の各産業分野の更なる革新と、それらの産業群を有機的につなぐストーリーの創出に取り組むことといたしました。

そして、邑南町で生産される良質な農林水産物を素材とする、「ここでしか味わえない食や体験」を“A級グルメ”と称し、@「食」関連産業の振興と雇用機会の拡大、A観光・交流人口の拡大と定住人口の増加、B農林水産物の付加価値の向上と販路拡大、C町民所得の向上を目指し、「“A級グルメ立町”の実現」を図ることといたしました。

平成23年から平成27年の5ヵ年で、@食と農に関する5名の起業家の輩出、A定住人口200名の確保、B観光入込み客100万人の実現を目指します。

●食のラボラトリーで「耕すシェフ」の養成

町観光協会では、温泉や公園のある香木の森公園の近くに、地産地消イタリアンレストランと加工場を併設した「素材工房ajikura(味蔵)」をオープンさせました。これこそが「食のラボラトリー(研究所)」であり、「A級グルメ立町」の推進役を担う実践施設です。レストランには東京からIターンしたラボ主任研究員のシェフとUターン者のソムリエやパティシエを始めスタッフが食材の研究を進めながら、キッチンで腕を振るっています。ラボラトリーでは、野菜等の栽培から地元の食材を使った料理の提供までのプロデュースを行い、町内で起業・就職を目指す「耕すシェフ(地域おこし協力隊)」を全国から募集し、現在2名のシェフが頑張っています。

   

   

   

町内産品を活かしたコースメニュー

   

地産地消レストラン「素材工房ajikura(味蔵)」

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産・学・官・民が連携した持続可能な地域づくり・人づくり

まちづくりの主役はあくまでも町民であり、町民がいつまでも心豊かに暮らせるまちづくりを進めるためには、町内の事業所や企業、学校、行政がそれぞれの立場で町民とともに協働することが重要です。

そのひとつを紹介すると、昨年12月3日から5日の3日間開催した、日本一高い地上20メートルの「天空の駅」として有名なJR三江線「宇都井駅」と、周辺の棚田や赤瓦の屋根、川等をLEDでライトアップする「INAKAイルミ@おおなん」は、町内のLED製造メーカーと地域住民、観光協会、行政が一緒になって開催したプロジェクト企画でした。お蔭様で3日間で延べ約1万人の来場者があり、島根県初となる「第15回ふるさとイベント奨励賞」を受賞することができました。今年は12月2日から4日までの3日間、昨年の取り組みに加え、食をテーマに町内の飲食店をつなぐ新たなイベントを開催します。「田舎ツーリズムの里」として活況を呈している本町には、県内でも農家民宿・農家民泊が多くあります。皆様ぜひお越しください。

地域づくりは人づくりであり、地域で必要な人材は地域で育てることが重要と考えます。そのためには幼い頃から子育てに地域が関わり、地域の課題は地域で解決することが必要です。

今後は、最大の課題である少子化対策に取り組み、少しでも若者が定住できるよう、オンリーワンの発想でまちづくりに挑戦し続けてまいります。

   

   

昨年開催した「INAKAイルミ@おおなん」

   

お客様を迎える「田舎ツーリズムの里」看板

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