全国町村会

この森に学び この森に遊びて あめつちの心に近づかむ
〜地域資源を活かしたまちづくりで個性を磨く!〜

  国立公園滑床渓谷「森の国ホテル」


愛媛県松野町

2765号(2011年7月4日)松野町長 阪本壽明

私の住む森の国松野町

愛媛県松野町は、四国の西南部に位置し、面積98.50平方km、人口4,500人、周囲を標高1,000m級の山々に囲まれ、東部と南部を高知県と接する予土県境のまちです。松野町は、総面積のうち、84%を山林が占め、その豊かな森から生まれる流れは、その流域に肥沃な耕地を創りながら二つの河川に集まり、大きく蛇行しながら町を貫流し、日本最後の清流と形容される四万十川に注いでいます。

この2つの流れは、豊かな水と肥沃な耕地以外にも私たちに多くの恵みを与えてくれます。

町の中心部を東西に貫流し、幅員100mを有する広見川は、四万十川最大の支流で、折々の景観に風情があり、田畑を潤してくれます。また、この広見川は川狩りの名所であり、そこで獲れる天然うなぎや川ガニ、川えびをはじめとする川の恵みは、私たちはもちろん、通人の舌つづみを打ち鳴らす逸品です。

もう一つの貫流である目黒川は、その源流部に日本の滝百選に選ばれた雪輪の滝などの滝や深淵、奇岩、巨岩が12kmにわたって連続する滑床渓谷を有し、その美しい景観が評され国立公園に指定されています。春は新緑がまぶしく、夏には滝すべりに興じる若者や避暑に訪れる人々を迎え、秋には紅葉で美しく化粧され、冬には幻想的な氷の城へと変化し、まさに「森の国」と呼ぶに相応しい仙境で、四季を通じて私たちの目を楽しませてくれます。

また、松野町は古くからこの川沿いに伸びる街道が発達し、土佐と伊予を結ぶ交通、交易の要衝として栄え、そこに多くの歴史資源と独自の薫り高い文化が育まれてきました。

    

全長300mの花崗岩の一枚岩を渓流が雪の輪を描きながら流れる「雪輪の滝」


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天与の大資源を活かす「森の国のまちづくり」のはじまり

大地を潤し、魚族を育み、文化を運ぶ清流「四万十川」。流域にさまざまな恩恵を与えてくれるこの川の、最初のひとしづくが生まれる場所のひとつに、足摺宇和海国立公園「滑床渓谷」があります。

滑床渓谷は、1,000m級の山々が連なる鬼ヶ城山系に源を発し、延長12kmにわたる渓谷美、四季折々に美しく変化する森林美、稜線部まで足を延ばすと美しいリアス式海岸の宇和海や遠く九州まで一望できる展望美の三つの美が楽しめます。昭和32年、この天与の大資源「滑床渓谷」を活かしたまちづくりが始まりました。自然保護を最優先に、住民の休養の場、若者の健全育成の場として活用することを基本理念に掲げ、町営の「ユースホステル万年荘」を建設し、キャンパーや若者を中心に自然に癒しを求める多くの人で賑わうスポットとなりました。

なお、表題の「この森に学び この森に遊びて あめつちの心に近づかむ」は、滑床の自然を愛し、滑床の観光開発の創始者であり、発展に寄与した、松野町初代町長 岡田倉太郎氏が記した言葉です。

以来、滑床渓谷は営利観光ではなく公益観光で行こうという一貫した方針で、経営を続けてきました。

しかし、その後度重なる不況の到来や観光ニーズの多様化、施設の老朽化等により滑床渓谷への入り込み客は徐々に減少に転じてきました。さらに、沿道の観光交流拠点もなく、地域の産業や文化に及ぼす効果も少なく、新たな交流拠点の整備が緊急の課題となってきました。

松野町では、この現状をふまえ、昭和63年に滑床山岳レクリエーション整備事業をスタートさせました。この計画では、引き続き自然保護を最重点課題に置き、必要最小限の施設整備による利便を確保することとしました。また、宿泊機能を充実させ滞在型観光へ移行することによる地域経済への波及と雇用機会の創出を目指し、そして滑床の魅力を広く伝えることによる自然との共生意識の高揚を図ることを目的としました。

本事業により、遊歩道や公衆トイレ、宿泊施設などを一体的に整備し、平成3年には、その中核施設である「森の国ホテル」が完成しました。森の国ホテルは、それまでの公共宿泊施設のイメージを一新し、滑床の自然環境を満喫することの出来る充実した施設と上質なホスピタリティをコンセプトとしました。この森の国ホテルの話題性と、癒しを自然のなかで求める指向の拡がりにより、滑床渓谷への入り込み客は飛躍的に増加し、平成6年には、森の特等席「森の国ロッジ」を整備し、宿泊機能を強化、増える宿泊ニーズに対応しました。

一方で、滑床渓谷へのアクセス道路について、利便確保の面で二車線改良の計画もありましたが、普通車が離合できる場所の確保と、大型車が最低限入れるだけの拡張工事にとどめるなど、滑床渓谷を俗化させず、自然保護を最優先とした施策を展開しています。

    

伊予と土佐の交易で栄えた松丸海道。ひそかに残るいにしえの面影。


   

 「雪輪の滝」で滝すべりに興じる。


    

大きな暖炉のある「森の国ホテル」のラウンジは、まさに“森の特等席”


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点から面へ「森の国のまちづくり」の拡がり

全国的に農村部で過疎化と高齢化が進むなか、松野町においても高齢化の進行と過疎化に直面しています。

また、高速道路の延伸など交通体系の整備により利便性が向上する一面、人口の流出という危険性もはらんでいます。

こうしたなか、松野町では、森・川の豊かな自然、古くから交通の要衝が故に育まれてきた歴史・文化資源を再発見、ブラッシュアップして観光資源化し、交流人口の拡大、雇用の場の創出などにより、地域の活性化を図ろうと積極的な取り組みを進めてきました。

森の国松野町の魅力を満載した道の駅「虹の森公園」、四季折々の里山の美しさと中世の歴史に触れることの出来る「国指定史跡河後森城跡」の発掘調査と整備、交易に栄えた松丸街道が生んだ夭折の俳人の短くもあざやかな天性の輝きを展示している「芝不器男記念館」、山の入会権を巡る争いの裁定を江戸幕府に求める際の審判資料として作られた立体模型地図「国指定重要文化財目黒山形関係資料」を収蔵する目黒ふるさと館、JR松丸駅にある「森の国ぽっぽ温泉」など、地域の資源を活用した交流の拠点を整備してきました。松野町では、滑床渓谷の森の国ホテルを核として、町内各所に点在する地域資源や観光拠点を連動させ、特色ある「森の国のまちづくり」をすすめています。

    

ホテルのレストランでは、地元の食材でフレンチを楽しむことも!

    

目黒ふるさと館の「目黒の山形」。精巧かつ保存状態も良く、国指定重要文化財に指定。


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森の国の魅力満載道の駅「虹の森公園」

美しい田園景観が残る四万十川最大の支流広見川沿いに、都市民と地域住民の交流、自然との共生意識の醸成、若者の雇用の場づくり、地域経済の活性化を目的として、平成9年に、道の駅「虹の森公園」を整備しました。

この公園には、四万十川の上流から河口までの自然環境と生態系を再現、さらには世界中の淡水魚を展示した淡水魚水族館「四万十川学習センターおさかな館」、町内で廃棄されるガラス瓶を原料とした「森の国ガラス工房」、町内の農家が農産品や加工品を直売する青空市場「のびのの」やトマトのもぎとり体験ができる「森の国ファーム」などがあり、松野町の自然や産業を見て、触れて、感じる事ができます。

また、この公園を整備する際に、もうひとつ、自然からの大きな恵みをいただきました。

公園内の淡水魚水族館に必要な水を確保するために地下水を探したところ、低張性アルカリ性冷鉱泉が湧き出したのです。早速、平成14年にこの冷鉱泉を活用した施設「森の国ぽっぽ温泉」を整備しました。この施設は、名前から想像されるように、町内を走るJR予土線(しまんとグリーンライン)松丸駅にある温泉として新しい人気のスポットとなっています。

  

四万十川学習センター「おさかな館」

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国境ゆえに形成された資源「国指定史跡 河後森城跡」

町の中心部の背後には、お城山として住民に親しまれてきた「河後森城跡」があります。この山の頂上にある本郭に登ると、川の上流から下流まで、さらには、かなり広く遠くの山や谷まで見渡すことができ、ここに守りの拠点の城が築かれていたことが容易に想像できます。この城跡は、馬蹄形という大変珍しい形状で、山稜部には本郭を中心に多数の曲輪が連続して築かれているほか、土塁、空堀、虎口等が発掘・確認されており、まさに中世城郭最大の特徴である「土から成る城」を見ることができます。さらには、発掘調査により本郭部分には天守と推測される大型礎石建物の存在や石垣が発見され、中世から近世への過渡期の様相が確認できる第一級の歴史資料であることから、国指定史跡に指定されています。

町では、この河後森城を中世の城や当時の史実、生活の様子などが学べる「史跡機能」と、里山の植生や森の役割を学び体験できる「森機能」の共生目指した整備・活用を進め、「体験する史跡」として、町外から訪れる歴史ファンはもちろんのこと、まちの将来を担う子どもたちの郷土愛を育む場、生涯学習やふるさと再発見によるまちづくりの場として活用しています。

  

戦国の城をのま馬とともに体験

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これからの「森の国のまちづくり」〜この森に学びこの森に遊びてあめつちの心に近づかむ〜

豊かな自然環境と薫り高い歴史文化資源を活用した観光・文化施設を整備してきた本町の取り組みは、これまで順調に推移し一定の成果を挙げてきました。しかしながら、施設整備を中心とする取り組みでは、その効果が永続的なものではなく、むしろ、地域間の競争のなかに埋没してしまう側面があります。

そうしたなかで、本町では、住民と行政の協働により、歴史・文化資源、暮らしのなかの伝統行事や食文化など、森の国まつのが有する固有の地域資源を再発見し、それを活かしたまちづくりをしようとする取り組みが始まっています。

国立公園滑床渓谷においては、自然保護に取り組んできたグループが、その魅力を伝え、理解してもらうためのガイド「森の国ネイチャーガイド」を始めました。国指定史跡河後森城跡では「森の国山城の会」が結成され、史跡の学習と伝承、植生研究や実践をとおして、河後森城を懐かしく心地よい里山の自然環境を保全する活動を展開しています。さらに滑床のお膝元、目黒地区では、蛍の舞う懐かしい畦道の風景を再生させようと地域ぐるみの取り組みが始まっています。

松野町の特産品のひとつ「桃」を生産する農家の女性グループ「ピーチクラブ」では自らが生産する桃を利用して、赤ちゃんでも安心して食べられる桃ジャムを生産し、全国各地で売られている自分たちの桃ジャムを見て回ることを夢に、六次産業化に取り組んでいます。

そのほかにもグリーンツーリズムクラブの活動など、挙げれば、枚挙にいとまがありませんが、いずれの活動においても、わがふるさとの歴史や文化、自然環境や営みなどの地域資源を再発見し、それを活かした活動をとおして循環型・高付加価値型の「森の国産業おこし」を目指しています。

本町において、これまでどおり観光・交流産業の振興は、まちづくりの大きな柱のひとつです。恵まれた自然景観と薫り高い歴史・文化資源、そしてそれを活用した観光拠点施設、さらには、住民自らが地域の自然景観や歴史・文化資源を再発見しブラッシュアップしていく活動、この三つ要素で森の国松野町の個性を磨き、キラリと輝くまちづくりを推進していきます。その結果として、その輝く光を観に多くの人が訪れ、住民が誇りと愛着を感じる「森の国のまちづくり」が実現すると考えています。

「この森に学びこの森に遊びて あめつちの心に近づかむ」

この言葉とともに。

  

ボランティアガイドがまちを案内

  

この森をこの子らのために!

  

森の国のまちづくりの理念となった、初代町長岡田倉太郎の書

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