全国町村会

小さいからこそできる!きめ細やかなまちづくり
〜単独町政を歩む町の挑戦〜

  

山の駅


岡山県奈義町

2751号(2011年3月7日)  奈義町長 花房 昭夫

はじめに

奈義町は、岡山県の東北部、中国山地の秀峰那岐山(1,255m)の南麓に広がる四季折々の美しい自然に恵まれた町です。

全国的に市町村合併が行われる中、平成14年に合併しないことを選択し、「小さいからこそできる!きめ細やかなまちづくり」を目指して、町民の皆さんと力を合わせながら、住んでよかったと思えるまちづくりを推進しています。町の特徴の一つとして中四国で唯一の実弾射撃演習が行える日本演習場があり、昭和40年には陸上自衛隊日本原駐屯地を誘致し、自衛隊との共存共栄を基本理念としたまちづくりに取り組んでいます。

   

自衛隊と町民の交流

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独自の定住促進施策

近年の少子高齢化により年々人口が減少し、高齢化率も29%にまでなりましたが、人口減少に歯止めをかけるため、町独自の若者定住施策を行っています。第3子以降を出産した方に交付する「出産祝い金」、大人や子どもが一緒になってコミュニケーションがとれる子育て情報交換施設「なぎチャイルドホーム」の設置、出生から中学校を卒業するまでの「医療費の無料化」、中学校を卒業し高校に進学される方へは「就学支援金」として一律5万円を交付、中高生を対象に他市町村に先駆けて「子宮頸がんワクチンの無料接種」、町営分譲地内に子育て世代を対象にした「若者向けの賃貸住宅」の建設など、これらのきめ細やかな町単独事業を実施することにより、「若者が住んでよかったと思えるまちづくり」「安心して出産・子育てのできるまちづくり」を目指しています。

また、年々進む高齢化社会においても、お年寄りが住み慣れた地域で、元気に生きがいを持って日常生活が送れるよう、介護予防を目的とした温水の「ウォーキングプール」を平成15年に整備し、お年寄りの健康づくりや仲間づくりの場として活用されています。

   

介護予防施設「ウォーキングプール」

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町民参加のまちづくり

町民主役のまちづくりを推進するため、ボランティアによる「町民参加の町づくり実施要綱」を策定しています。平成14年には、シルバー世代を中心とした様々な分野から技能や技術を持った町民の力により、クラブハウスを備えた3コース24ホールのグラウンドゴルフ場が整備され、町民の健康づくり施設として多くの人に利用されています。

これからも、町民ができることは自ら取り組み、行政との協働のまちづくりを進めていきます。

   

町民の手によって整備された「グラウンドゴルフ場」

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時代と時代をつなぐ文化

奈義町は、古代から近世、現代を代表する多彩な文化・芸術が息づき、融合したまちづくりを行っています。

約1600万年前の巻き貝「ビカリア」や二枚貝、古代の植物が化石となって出土しており、特にビカリアの出土地としては国内最大といわれています。

この資源を活用した施設「ビカリアミュージアム」は、ビカリアをはじめ動植物の化石30種類約300点を展示しており、実際に発掘体験もできる太古のロマンに触れることのできる貴重な施設となっています。

また、江戸時代から受け継がれてきた「横仙歌舞伎」は、岡山県の重要無形文化財にも指定されており農村歌舞伎の姿を現在に伝える伝統芸能として、地元保存会により年4回「四季の公演」を行い、保存伝承活動が行われています。さらに、伝統芸能を町の子ども達に伝えていくため、小学校の授業を活用して歌舞伎教室なども開講しています。

奈義町現代美術館は、建築家 磯崎新氏プロデュースのもと現代美術を代表する3組の作家が創り上げた建築と芸術作品を融合させた、太陽・月・大地の三つからなる空間的作品で、空間の形や光、視点と感触、過ぎゆく時間とあらゆる要素が一体化した国内外に誇れる体感型の美術館です。

また、那岐山の中腹にある菩提寺は、浄土宗の開祖・法然上人が幼年時代に修業した寺として知られており、その菩提寺の境内にそびえるこの「大イチョウ」は、樹高約45m、目通り周囲約12m、指定樹齢900年を越え、岡山県唯一の国の天然記念物にも指定され県内最大の巨木です。

   

太古のロマンに触れる「ビカリアミュージアム」での発掘体験

   

江戸時代から続く「横仙歌舞伎」

   

奈義町現代美術館

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樹齢900年の大イチョウ

都市と田舎を結ぶ観光資源

奈義町の恵まれた自然を体感することができる「那岐山麓山の駅」は、農業体験や加工体験ができるよう、コテージや研修室を併設した滞在型リゾートスポットです。那岐山周辺の様々なアウトドアレジャーの拠点としてはもちろん、館内には特産品ショップや、地元の食材を活かした料理を楽しめるレストランなど、様々な角度から奈義の自然を満喫することができます。また、山の駅二階には展望ベランダがあり、標高400メートルから見下ろす町並みや豊かな山並み、早朝の雲海などは、圧巻の景色 です。

   

「那岐山麓山の駅」からの展望

また、山の駅に併設して設置している約3.4ヘクタールの「山野草公園」には、オキナグサやチョウジソウ、サギソウなど、山野草20種類、約2万本が植栽されており、四季折々に咲く可憐な花が、訪れる人の心を和ませてくれます。中には絶滅危惧種にも分類される貴重な山野草も植栽されています。奈義町では、先人の方々が守ってきた那岐山麓一帯に自生しているこれらの植物を保護し、種を保存する活動も行っています。

近くには、美しい癒しの景観を引き立てるように、手すりの赤が印象的な天空橋が架かっています。天空橋からは山野草公園が見下ろせ、空と緑の溶け合う風景が楽しめます。

   

休日はたくさんお家族連れでにぎわう「山野草公園」

また、園内には自然の草花を楽しむだけではなく、水遊びのできる渓流や遊具広場があり、子どもから大人まで一緒に遊べる憩いの空間となっています。

昨年度から資源循環リサイクル事業の一環として、3ヘクタールの遊休農地を再生して菜の花を栽培しています。収穫した菜種は、昭和初期の伝統的な搾油機で搾油し、純町内産の菜種油として山の駅レストランで特産の黒豚のカツを揚げる油として使用するとともに、特産品としても販売しています。

   

遊休農地を再生した3ヘクタールの「菜の花畑」

   

100%町内産の「菜種油」

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若者が夢の持てる農業を目指して

町の基幹産業である農業は、米や野菜、黒大豆などを中心にした耕種農家と酪農・牛の肥育・養豚・養鶏の畜産農家とが耕畜連携を図り、有機堆肥を活用した「環境にやさしい農業」の推進を図っています。

環境にやさしい農業に取り組んでいる町内のエコファーマーが丹精込めて栽培したお米「エコ米」は、地産地消を推進するとともに食育にも力をいれ、米飯給食や米粉パンとして小中学校の学校給食にも提供し、モチモチしておいしいと好評を得ています。

また、町の特産品の一つに里芋が挙げられます。奈義町には「黒ボク」と呼ばれる真っ黒い色をした火山灰土が広く分布しており、この柔らかく栄養分に富んだ土壌からできる里芋は、粘り気が強くモチモチとした触感で食味が良いと好評をいただいています。この里芋をモチーフに作成した農産物PR用のマスコットキャラクターは、「さと丸くん」の愛称でたくさんの方に親しまれています。

   

特産品の里芋やアスパラガス、白ネギをモチーフにした「さと丸くん」

これからの農業は、若者が夢の持てる産業にすることが必要であると考えています。

地域の特産農畜産物の生産だけではなく、生産・加工・販売を一元的に行う6次産業化や恵まれた自然景観や歴史と文化、観光資源などを活用し、農業と商業と観光が連携した‘体験滞在型’の観光施策を行い、人を呼び込むことによって基幹産業である農業の振興を図るといった「農業・商業・観光業が連携したまちづくり」を推進しています。

本年度取り組んだ地域力創造アドバイザー事業は、新たに地域独自の魅力や価値の向上に取り組むため、地域の課題解決に最適な講師を招へいして地域力の活性化を図ることを目的とした事業で、昨年7月から全国の農山漁村でまちおこしに携わられている食環境ジャーナリストの金丸弘美先生と特産品開発のスペシャリストである料理研究家の馬場香織先生をお迎えし、両先生のご指導のもと「いかに人を町に呼び込み、人を呼び込むことによって奈義町らしさや奈義町ならではの魅力を来町者に伝え、その中から定住化を促進し、町の活性化につなげる。」といった方策を実践しています。

今年度の具体的な取り組みとしては、町内産の農畜産物を最大限に活用して加工する特産品の開発。都市住民や自然回帰志向の消費者ニーズを捉えた「農家民泊」を実施するため、その受け入れ体制の整備と田舎ならではの各種体験学習のメニュー化。町内産農畜産物をふんだんに使用した料理で来町者をおもてなしするため、町の観光拠点である「那岐山麓山の駅」レストランのメニュー全面改訂。農業者の所得向上を目的とした農産物直売所の販売戦略と生産体制の強化。町内産農畜産物の販路拡大に向けた調査などを行っています。

また、来年度以降はアドバイザー事業で進めてきた事柄を継続し実践していくため、都市部からの人材を積極的に受け入れ、新たな視点や発想を基に町のすばらしい自然・文化・人材を再発見していただく「地域おこし協力隊」を募集することとしています。

   

町内産の安全安心な食材で作られる米粉パンの学校給食

   

金丸弘美先生の話を熱心に聞く山の駅従業員

   

馬場香織先生による特産品開発の調理実習

   

町内産にこだわった米粉牛肉バーガー

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わが町のこれから

急速に進む少子高齢化と地方分権が進展していく中で単独町政を歩んでいく奈義町では、町民の皆さんとともに町のあるべき姿・目指すべき姿を想い描き、その特色を最大限に活かす施策を効率的かつ効果的に行うことが求められています。

そのためには、今後も行財政改革を進め、自主自立を高めた行財政運営を行うことは勿論のこと、先人の方々が守り育んできた町をさらに充実させて後世に引き継ぎ、未来を担う子ども達が誇れる町となるよう、町民の皆さんと希望に満ちたまちづくりを推進していかなければなりません。

町は、これからも町民の皆さんと力を合わせながら、住んでよかったと思えるまちづくりを推進していきます。

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