全国町村会

潤いと彩りあふれる田園文化都市を目指した町づくり
〜東北新幹線全線開業を迎えて〜

  

しちのへ秋まつり 喧嘩太鼓


青森県七戸町

2741号(2010年11月29日)  七戸町長 小又 勉

はじめに

七戸町は八甲田連峰の東側に位置し総面積337.23平方kmのうち山林が約65%を占める自然に囲まれた内陸の町です。

連峰の外輪山・霊峰八幡岳から続く裾野には、広大な家畜改良センター奥羽牧場が牧歌的雰囲気を漂わせ、高低差の少ない丘陵を利用し畑作・水田地帯が広がっています。

町の基幹産業は、畑作・水田・酪農などを中心とした農畜産業です。この地域は、山背の影響で夏でも日照が不足し冷夏の年も度々ですが、農業者のたゆまぬ努力で出来秋を迎えております。他の地域と比べて決して条件は良くありませんが、清らかな水と澄んだ空気、豊かな大地が安心安全な農畜産物を提供しています。

町の広域交通網は、国道4号が南北に縦断し、国道394号が4号と交差して東西に延びており、また、みちのく有料道路で県都青森市と結ばれているほか、12 月4日には町のほぼ中央に東北新幹線七戸十和田駅が開業するなど地理的条件から県南地方における交通の要衝として重要な役割を担っています。

今後は一般国道45号の三沢・天間林間や下北半島縦貫道路の早期整備を、全線開業の波及効果を県内等しく受けるための最重要課題とし、関係機関に強く働きかけていかなければなりません。

   

平成22年12月4日 全線開通する東北新幹線七戸十和田駅

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北辺の小城下町

七戸町の歴史は古く、縄文時代の遺跡は町内に数多く存在し、特に二ッ森貝塚は平成10年に国史跡に指定されております。平成21年には、二ッ森貝塚や三内丸山遺跡など北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群がユネスコの世界遺産暫定一覧表に記載され、県が中心となり世界文化遺産登録に向けた活動を展開しています。

七戸の名は、鎌倉時代に馬産地として初めて文献に登場します。建久2年(1191年)には、甲斐の南部郷から下向した南部光行の三男・七戸太郎朝清が七戸の地を治め、南部八戸城の支城として七戸城が造られ城下町が形成されていきます。以来、江戸時代には代官所、明治に入ると郡役所が置かれるなど上北地方の中心として栄えておりました。町場は活気にあふれ近江商人が住み、酒造業や呉服屋、小間物屋が建ち並ぶ小城下町でした。七戸城は昭和16年に国史跡に指定されました。

余談ですが、昭和59・60年から山梨県南部町、身延町、岩手県盛岡市、遠野市、二戸市、そして青森県八戸市、三戸町、南部町、七戸町の9市町が「南部のえにし」のもと南部首長会議を開催し、平成18年には領民68万7千人、面積361,488町(3,58502平方km)、石高1千万石を保有する「平成南部藩」を結成。毎年子どもサミットや参勤交代、一日国替えなどの事業を実施しながら絆を深めております。

   

国指定史跡 二ツ森貝塚

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鉄路への想い

明治24年に東北本線が開通し、11qほど東側の上北町(現在の東北町)に新駅ができました。駅舎を持たない七戸町は、十和田市、三沢市など新興都市の台頭と相まって上北地方の中心としての地位を失い、町も次第に衰退していったのです。

このような歴史的背景が、町民の鉄路に対する想いを一層強くし、昭和37年には七戸・野辺地間に南部縦貫鉄道を開通させ、東北本線に接続する鉄道として物資や旅客の輸送を担っていました。しかし、モータリゼーションの進展など自家用車の普及とともに営業は厳しくなり、ついに平成14年廃止されました。

本鉄道が使用していた車両は、バス車体の構造と部品を多用して造られたクラッチとシフトレバーのあるマニュアル車で、レールバスと呼ばれているユニークな可愛らしい車両です。毎年5月には、全国の愛好者で作る「南部縦貫レールバス愛好会」が主催してレールバスイベントを開催しており、全国から多くの鉄道ファンが詰めかけ大変なにぎわいを見せています。

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七戸十和田駅ともう一つの駅

東北新幹線七戸十和田駅の開業は、先達の方々の鉄路に対する熱い想いを無くして語ることはできません。ミニ新幹線導入計画が浮上した時には県内自治体や全町民が一丸となり、フル規格導入に向けて努力してきました。今こうして開業を目前にし、長年フル規格による早期開業のために尽力された方々に対し、地域住民を代表してお礼申し上げなければなりません。

七戸十和田駅の外壁曲線は、八甲田連峰の山並みと南部馬の優しい背中を表現し、心安らぐ豊かな自然と歴史の感じられる駅のデザインとなっています。駅南口に併設して観光交流センターがあり、上十三・下北地域の観光スポットや物産品の紹介、イベントスペース、飲食コーナーなど乗降客がくつろげるスペースを確保しており、八甲田の峰々を眺めながら休憩できるよう配慮されています。わずか300mほどの距離にもう一つの駅、県内第1号の道の駅「七戸文化村」があり、物産館や当町出身の洋画家を記念して建てられた鷹山宇一記念美術館、農家の朝どりの新鮮な野菜を販売する農産物直売施設七彩館、七戸秋まつりで出陣した山車の展示と製作を間近に見ることのできる山車展示館があります。

   

新型新幹線「E5系」13年春には東京―青森間を3時間5分で結びます。

   

しちのへ産直七彩館

   

温度と湿度調整だけで長時間熟成させた黒ニンニク。においが少なく、そのままフルーツ感覚で食べられます。

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観光地への玄関口

七戸十和田駅は地理的に大変恵まれた場所に立地しており、文豪大町桂月がこよなく愛した奥入瀬渓流や十和田湖、本州最北の地・下北半島、山岳景観と素朴な温泉地が点在する八甲田山へは最も近い駅であることから、十和田湖、下北半島、八甲田山の玄関口として観光客の利用が期待されます。

しかし、ほかの新幹線駅と比べ鉄路の接続がありません。このため、二次交通の整備にむけて地元の交通関係者と協議を重ねてきました。幸い、十和田観光電鉄とJRバスがほぼ毎日運行し、地元のタクシー業者も観光タクシー「駅から観タクン」を始めることになり、またレンタカー会社4社の出店も決定し、二次交通の形が整ってきました。

駅前整備については、新幹線利用客だけでなく一般客も利用する、日常的に「にぎわいのある駅」を目指して整備を行っており、来春には駅南側に大型スーパーが進出し、道の駅とともに新幹線駅前は活気に溢れる場所となります。そして、このにぎわいを町の中心商店街や景勝地をめぐる観光コースに誘導することが重要であり、行政や商工会、観光協会など関係機関が一体となり新たな商品開発にむけて試行錯誤しながら進めています。

   

天王神社の境内に咲くツツジ

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電気自動車でクリーンな地域を

町では、本駅を利用する観光客やビジネス客への新たな試みとして電気自動車の導入を計画しており、十和田湖、下北への観光客やビジネス客の交通手段として電気自動車を利用することで自然に優しい駅、環境に配慮した駅の実現を目指しています。本事業を拡大・発展させるためには、電気自動車の性能の向上や充電スタンドの設置など多くの課題がありますが、周辺自治体と連携を密にしクリーンな地域、観光地にするため、試行錯誤しながら取り組んでいます。今年度は、電気バスの購入と道の駅に充電ステーションを設置し、平成23 年4月から電気バスを町内巡回バスとして常時運行する予定であり、全国でも先駆けた取り組みとなります。

   

町の木 銀南木(いちょうのき)

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終わりに

七戸町は、わずか1万8千人に満たない小さな町です。

平成17年3月、七戸町と天間林村が合併し新生七戸町が誕生しましたが、それでも人口は年々減少し、反して高齢化が加速度的に進んでいます。このような町に先達の方々や周辺自治体、全町民が1つになり完成したのが東北新幹線七戸十和田駅です。

この駅舎は地域共有のものであり、広域的に開業効果を享受するため、上十三・下北全域で開業対策に取り組んできました。このような意味からも、各地域が共に手をとり協力していくことが、駅舎の町七戸に与えられた使命と考えております。

新幹線全線開業はゴールではなく、これからがスタートです。今後、七戸十和田駅を文化、観光、産業の発信基地と位置付け、周辺自治体ともども発展していければと願っています。

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