全国町村会

高校生レストラン「まごの店」で地域活性化

三重県多気町

2735号(2010年10月4日)
多気町長 久保行央

はじめに

三重県多気町は、松阪牛で有名な松阪市の隣町で、人口1万6千人足らずの小さな町です。多気町は、平成7年にシャープ株式会社の液晶工場がオープンし、先端産業の町という一面も持ち合わせていますが、一級河川の「櫛田川」と、2006年から4年連続で清流日本一(※1)に選ばれている「宮川」に挟まれた肥沃な農地の広がる、農業が盛んな町でもあります。”また、多気”という名前にも”食べ物のたくさん取れるところ”という意味があると聞いています。

その上、私たちの町には、三重県立相可高校という特色ある高校があります。私もこの相可高校のOBですが、普通科、環境創造科、食物調理科、生産経済科という4つの科があります。 なかでも食物調理科は、高校生が運営する常設のレストラン「まごの店」の経営で、今、脚光を浴びています。

※1 国土交通省が1級河川を対象に毎年行っている水質ランキング全国1位のこと

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ことの起こり

この「まごの店」は本町役場農林商工課の一人の職員によって仕掛けが始まりました。彼は当時、農業振興係長で、多気町の農業をさらに振興するために、手始めに町内で専業に農業をしている認定農業者35人にスポットを当てようと考えました。

ただ単に人(認定農業者)にスポットを当てるのではなく、その人が作っている野菜や果樹などの生産物にスポットを当てることにより、その生産者の方々を浮かび上がらせようと企画しました。平成14年の2月に「おいしい多気町まるかじりフェスティバル」と銘打ち、午前中はテレビなどでも有名な料理の先生を県外からお招きし、多気町原産の特産物の伊勢イモをテーマに料理トーク&調理ライブショーを行うと共に、昼には、相可高校食物調理科の協力を得て、認定農業者から提供いただいた大量の農産物での試食会を開催しました。

現在の相可高校食物調理科は、高校生レストラン「まごの店」などの活動などで新聞やテレビに頻繁に登場し、日本中に明るい話題を提供し続けています。

しかし、8年前にこのイベントを行うまでは、行政面では相可高校との交流はほとんどありませんでした。と言うのも、文字どおり県立相可高校は三重県の管轄です。町の管轄でない相可高校とはほとんど付き合いがなかったというのが、当時の”町と高校”との現状であり、午前中の料理のライブショーの講師も外に求めたのです。

認定農業者の方々も含め総勢250人近くの参加者で始まった「おいしい多気町まるかじりフェスティバル」は、楽しい雰囲気で始まりました。そして、いよいよ昼の試食会です。相可高校にはスーパーやデパ地下の試食をイメージしてお願いしたのですが、出てきた料理は30種類もあり、ホテルのディナーバイキングのようで、そのまま結婚式もできそうだったといいます。彼はとても感動し、その後相可高校へ放課後1週間に4日ぐらい通いつめる程、生徒やその指導者の村林先生に惚れていったそうです。

そこから、同年代である村林先生とは、色々な話をしたそうです。そして、心の底から先生を応援したく「先生を三重県の村林ではなく、日本の村林にしたい。」と先生に話したと聞きました。

     伊勢イモ入りとろろ麺

彼と村林先生は、伊勢イモ入りうどんの開発など、二人で話し合ったことで実現できることはすべて実現していきました。

その中で彼は、ほとんど100%「食」に関する道に就職する生徒たちのために、高校ではできないことが2つあるという話を先生から聞いたそうです。一つは接客、そしてもう一つはコスト管理でした。そこで、お店をやったらどうかという話になり、いろいろな問題を解決し、感動のストーリーを経験し、現在の「まごの店」ができあがったのです。そのあたりは、村林先生の「高校生レストラン、本日も満席」(※2)という本の中でも紹介されていますので、よろしければお読みください。

※2 著者:村林新吾 発行:伊勢新聞社 2008年刊

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まごの店からせんぱいの店へ

「まごの店」は「多気町五桂池ふるさと村」にある相可高校食物調理科の調理実習施設で、学校が休みの土日祝日や夏休みなどの長期休暇にクラブ活動の一環として運営されています。行列の出来る店として人気を呼んでおり、地域の人もこの高校生たちの頑張りに感動し、大きな勇気をもらっています。

最初の頃の「まごの店」

最初の「まごの店」は、平成14年10月に農産物直売施設「おばあちゃんの店」の前にオープンしました。自動販売機コーナーを改装した、約20uの屋台のような小さなお店でしたが、そこでの生徒たちの明るく活発な取り組みが、高齢化などの進む多気町に明るい話題を提供し、人々を勇気づけてくれました。

そして、この「まごの店」での地域に密着した食の活動が、文部科学省の「めざせスペシャリスト事業」に選ばれたのを契機に「フランス料理ならフルコース、和食なら会席料理からふぐ料理までこなす彼らの技術を、もっと発揮できる店をつくってあげたい。」と現在の新しい店の仕掛けを始めました。県内の建築を学ぶ高校生に店の設計コンペを依頼し、コンセプトは、『料理家を目指す高校生の夢を、建築家を目指す高校生が形にする!その夢?を多気町やふるさと村といった地域が応援する!』としました。

異例ではありますが行政管轄外の県立高校のために、町はもとより地域住民、町議会、受け入れ先のふるさと村など一致団結しました。素晴らしい生徒のために、そして村林先生を始めとする素晴らしい相可高校の先生方に尊敬と感謝の念を込めて、町単独でもこの事業を実現しようという熱い思いで取り組んだのです。最終的には県の補助2千万も得て、総事業費約9千万をかけ平成17年2月に建築を学ぶ高校生が設計した現在の「まごの店」がオープンしました。

「まごの店」の設計も建築を学ぶ高校生が手がけました。

新しい「まごの店」では、小学校の親子を対象とした”親子ふれあいマナー教室”や”地元食材を生かした料理教室”、”和洋のコース料理の提案”など、地域の人々や各種の団体などを巻き込んでの食育に関する数々の取り組みが、多くのマスコミにも取り上げられています。新しい「まごの店」では、小学校の親子を対象とした”親子ふれあいマナー教室”や”地元食材を生かした料理教室”、”和洋のコース料理の提案”など、地域の人々や各種の団体などを巻き込んでの食育に関する数々の取り組みが、多くのマスコミにも取り上げられています。また、レストランで排出される生ゴミは、町内の農家で構成される「多気有機農業研究会」のメンバーが毎週土曜日に回収に来て、同会の施設で堆肥化し、その堆肥で作った野菜をまた「まごの店」で使ってもらうなど、小さいながらも農業の循環モデルを実現しています。

 さらに平成20年9月には、相可高校食物調理科卒業生の受け皿となる(株)相可フードネット「せんぱいの店」が、「まごの店」卒業生3名を中心に惣菜とお弁当の店としてオープンしました。

「まごの店」の卒業生で、「せんぱいの店」をオープン!

このお店の特徴は、地域で無農薬や有機農業など”こだわり”を持った農家の方々28名が、アグリメイツという生産者団体を作って野菜などの提供をしてくれるほか、三重大学、多気町、地元企業などといった地域に根付いた強力な応援団がいることです。

そして、株式会社という形をとっている、「せんぱいの店」の大きな使命の一つに地域貢献があります。相可高校の卒業生たちが、地域で働きながら地域の活性化に一役担うのです。

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そしてこれから

最近の新しい取り組みとしては、相可高校生産経済科の生徒たちが、町内の2009年度日本経営品質賞を受賞したような一流の製薬会社と一緒にハンドクリームを作っています。高校生が今回のハンドクリームの製造のコンセプトからパッケージ制作、ネーミング、入れ込む成分まですべてを提案し、その高校生の提案を最大限に引き出し、プロの立場から一流の製品に仕上げていただきます。コンセプトは、”孫のような高校生が、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、おかあさんに感謝を込めてプレゼントできるようなハンドクリーム。” 現在、生産経済科生徒は、園芸を通して地域を明るくするためNPO法人「植える美ing」を立ち上げ、活動をしています。そして、同校OBが中心となって運営している「せんぱいの店」が発売のすべての責任を負います。

また、多気町やJA多気郡も応援していただき、販売には高校生も県内外の販売会社への営業やインターネット通販を学校で行い、経済の実体験をする計画です。

多気町は、この事業には補助を行わず「せんぱいの店」が出資をする民間事業と位置づけています。

しかしながらこの事業をきっかけに、町として真剣に地域ブランドを確立して行きたいとも考えています。

地域で明るい話題を提供することが、地域の産業全体も盛り上げていく大きな原動力になります。今後とも、地域と共に発展していく持続的な取り組みを通して、ひとつでも多くの明るい話題を提供していきたいと考えています。

地域で明るい話題を提供することが、地域の産業全体も盛り上げていく大きな原動力になります。今後とも、地域と共に発展していく持続的な取り組みを通して、ひとつでも多くの明るい話題を提供していきたいと考えています。

最後になりましたが、「百聞は一見にしかず!」です。ぜひ多気町にお越し頂き、活気あふれる私たちの姿をご覧いただければ幸いです。

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