全国町村会

大豆焼酎「嘉島」誕生
〜嘉島大豆をブランド化〜

熊本県嘉島町

2720号(2010年5月24日)
企画情報課 下田 弘美

ゆたかさ実感! 水の郷−嘉島−

「水の郷」かしまは、昭和30年に六嘉村と大島村が合併し、嘉島村となり、同44年に町制を施行した東西に9.8q、南北に3.9q、面積16.66平方qの熊本市の南部に位置している町である。

公園化さえた涌水池でのんびりと釣りをする人と水鳥たち

熊本平野に属した海抜5〜8mほどの平坦な水田地帯で、東地区の一部に丘陵地帯があり、四方を緑川、加勢川、矢形川に囲まれている。

大地の裾野を中心に阿蘇の伏流水といわれる湧水群があり、県下で初めて「水の郷」に認定された。

1日に13万トンの湧水量をほこり、水温は年間を通して18度ということで、鯉や鮒、鰻、ハエ、エビと魚類も多く、魚つりも楽しめる。冬場は水鳥が飛来する約3haの広さを持つ「浮島さん」をはじめとして、一大湧水群を形成しており、公園化も進み、四季を通じて憩いの場として町内外から多くの人で賑わいを見せている。平成の名水百選にも「六嘉湧水群・浮島」が選定された。

文化遺産としては、5世紀頃のものとされる国の重要文化財指定の装飾古墳「井寺古墳」をはじめ、県の重要無形民俗文化財の「六嘉の獅子舞」(勇壮な獅子舞や牡丹の花が舞う「タナ登り」が見どころ)、手足の神様として深い信仰を集める「足手荒神」などがある。

本町は、周囲を河川に囲まれているため、かつては水害の常襲地帯であり、町の発展に大きな妨げになっていたが、平成11年に長年の悲願であった加勢川の河川改修が概ね完成し、町土の自然災害に対する治水安全度が高まった。

さらに、熊本都市圏の都市機能の一翼を担い、農業・流通・工業等の面で熊本市を補完する役割も果たし、就業機会や文化・医療施設利用など都市的な利便性とともに、九州縦貫自動車道御船インターチェンジに近く、交通アクセスの利便性にも恵まれている。

圃場整備された農地を利用した農業中心の町から、近年、ビール・清涼飲料工場や大型商業施設が進出し、農業と商工業のバランスの取れた町となっている。

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「フクユタカ」を使った特産品 焼酎「嘉島」が誕生!

本町の基幹産業である農業は、米・麦を基幹作物としているが、農家の減少、農業従事者の高齢化が進むなか、集落営農を支える核として若手営農者を中心とする認定農業者や営農組織の育成を図り、水や農耕に適した土地活用を活かした経営の安定・規模拡大を目指している。

ブロックローテーションにより整然と植えられた大豆

転作作物としている大豆は、都市近郊でありながら、圃場整備済みの水田で土地利用型農業を展開し、米の転作作物として地域輪作による転作大豆の団地化に取り組み、集団化した大豆栽培面積は県内最大規模となっている。

豊かで清冽な水とその水で育まれた良質な大豆「フクユタカ」を使った本町の特産品として、大豆焼酎の調査開発に取り組み、一般公募した中から「嘉島」というネーミングで、昨年の4月末に発売、初年度ということで限定2千本を販売する運びとなった。

本町は、湧水や表流水に恵まれ農耕に適した平坦な土地を活用し、安全で安心できる農産物の米、麦、大豆のほかイチゴ、トマトなどの作物を生産しているが、この農産物に付加価値をつける加工・販売までには至っておらず、加工した町の特産品もなかったことから、大豆を使った特産品づくりを目的として大豆焼酎の開発に着手した。

まず、焼酎の製造については、酒税法の規定により地方自治体では製造免許の取得ができないことや原料である大豆の特性や成分について、タンパク質、油分が多く、製造に関しては技術的に難しいことなどから事前調査を行い、最初から本格的に製造するのは危険であるとの専門家の意見で、平成20年5月に「嘉島町産大豆を利用した大豆焼酎醸造に関する研究」として、原料の加工方法、主原料と副原料の配分比率等の調査を、研究機関の熊本県産業技術センターに依頼した。

産業技術センターから試作品の官能検査依頼があり、各団体等の代表からなる17名の試飲メンバーを選定し試飲を行った。その結果、十数種類の試作品の中から、香り・味・原料の特性を考慮したうえで、飲みやすく、消費者に受け入れられやすい減圧蒸留方法によるものが選ばれた。

原料の大豆については、嘉島町で生産された大豆が全て農協に出荷されているので農協と交渉し、酒造メーカーへの持ち込みを委託するとともに、酒造会社についても選定を行い、熊本県球磨郡の酒造メーカーにお願いした。

全国でも珍しい大豆焼酎「嘉島」

販売については、地方自治体では小売業免許の取得ができないために、販売が可能な町内のショッピングセンターや酒店、コンビニエンスストアと交渉し、酒造メーカーから直接仕入れ販売してもらうこととした。

大豆焼酎のネーミングについては、町の広報誌及びホームページ・新聞に掲載し、広く一般から公募した。結果、県内各地から195件の応募があり、名称選定会議で、町のPRにつながるとして大豆焼酎「嘉島」に決定。ビンの種類も決まり、命名者の表彰や大豆焼酎の目印になる「背景が緑ひろがる大豆畑」をラベルに決定して町の特産品として大豆焼酎「嘉島」を商品化した。

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地域活性化は、全国的に珍しい大豆焼酎で

恵まれた土地基盤で営む大豆については、農業経営の効率化の一つとして、同一品種を栽培し、農地を集積して団地化を図り、良質な大豆の生産に努めており、熊本県内第2位の作付面積・生産量を誇っている。

また、平成19年7月に中小企業地域資源活用促進法に基づき、県が国の定める基本方針に従い、地域産業の創出の核となり得る地域資源として本町の大豆も特定されている。

今回、数少ない農産物の特産品である大豆を使用し、更なる地域振興及び地域活性化を図るため焼酎作りを計画して全国的にも珍しい大豆をつかった焼酎を開発し、本町の新しい名物にと考えた。

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関係機関との連携で大豆の商品の開発を目指す

原料の関係と初の試みということもあって、2千本の限定生産であったが、大豆焼酎の名前を広く一般から募集したことや新聞にも取り上げられたことが相まって、くせも少なく飲みやすい焼酎に仕上がったことで評判を呼び、4月末の発売にもかかわらず、ひと月も経たない5月下旬、醸造元には在庫がなくなるという事態となった。全国的にも珍しい大豆を使った焼酎は、本町の新しい名物とすることができた。

大豆焼酎「嘉島」の売れ行きが好評のために平成22年度は前年度の倍の4千本を製造することとした。

町としても今後の醸造計画については、たとえば季節による品切れを防ぐ手段はないか、嘉島の最大の資源といえる水を活用できないか、醸造する適正量の再検討などを醸造元と緊密に連携するとともに、関係機関とも連携しながら継続できるよう嘉島の特産品の伸長を図っていきたい。

また、大豆生産農家の女性で組織されている「水の郷加工グループ」があり、自家製の大豆を使った饅頭やマフィンなどの商品を開発され、「ふるさと食の名人」の認定も受け、活動されている。

今後においては、生産農家、組織や団体等と行政が連携しながら、湧水・表流水を活かした土地活用を行い、安全で安心できる農産物の生産と付加価値のある加工食品の製造販売や特産品づくりを図りながら、地域の特性を活かして経済効果を高めるために、町民を巻き込んでのアイディア等を募集して、新たなる商品の開発を目指し、努力する必要がある。

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商工会女性部が起業 〜「大豆工房かしま」〜

町商工会では、企業誘致や大型ショッピングセンターの出店により来町者の数が急激に増加、町の人口も増加傾向にある中、これらの環境を地域の経済に波及させる仕組みづくりが求められ、商工会の女性部が中心となって、熊本県内でも有数の収穫量を誇り、栽培技術が高く品質の良い嘉島大豆を活用した商品開発に取り組むことになった。

商工会女性部が開発した安全・安心で、なおかつおいしい大豆商品

取り組みの内容及び商工会の支援として、熊本県の補助事業や全国展開支援事業により、地場産業の第6次産業化、地域経済の活性化、地域ブランドの確立を目指し、商品開発の手法導入等により、23種類に及ぶ試作品が完成した。

また、メディアを通してのアイディア収集と事業紹介により、嘉島町での大豆の取り組みが認知された。

この嘉島大豆を利用して、「商工会女性部メンバー10名が、嘉島大豆を主原料として、おいしいこと、安全安心なこと、嘉島町がイメージできて、嘉島町ならではの逸品を開発したい。嘉島町を町外に強くアピールできる特産品をつくりたい。」そんな思いを実現するため、製造販売を手掛ける「株式会社 大豆工房かしま」を設立して食品製造業、販売の許可を受け、通信販売等の販路開拓も進めているところであり、商工会から起業する例は全国的にも珍しく期待を集めている。

開発された食品は卵を一切使わず、材料にもこだわり、低コレステロールの健康志向の強い商品に仕上がり、大豆ドレッシング「畑の貴婦人」は熊本県が実施した「農商工連携百選」に選定され、熊本県商工会連合会が実施した「首都圏流通関係者が発掘した一品55選」に認定されている。

今後は、主原料である嘉島産大豆は市場に出回らないため、農協から直接確保する必要があるが、大豆は産地づくり助成金の対象で制度が廃止となった場合に備えて、生産者からの調達も含めて、生産者を維持するためにも嘉島大豆のブランド化を早急に図ると共に、食の安全がより重要な問題になってきた今日、消費者の安全な食生活にも大きく寄与することを期待している。

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将来への「真の豊かさ」実現のために

熊本市という都市近郊にありながら、清水をたたえる湧水群が十数箇所点在し、自然環境に恵まれた嘉島町は、自然、歴史、人情が住民の宝物となっている。

水の浄化と環境学習を学ぶ子どもたち

将来への「真の豊かさ」を実現するため、ゆたかさ実感「水の郷」を構成するものとして、自然、生活環境、心、経済、人の結びつきの5つをあげ、活力と潤いに満ちた個性のある田園文化都市を目指している。

自然豊かな郷づくりでは、湧水や河川、地下水の恵みとともにあった本町の歴史を尊び、また未来に受け渡す財産として守り育み、水だけでなく田園等の自然的環境を暮らしや生産の基盤として、自然の豊かさ、恵みをあじわえる郷づくりを進めているところである。

暮らしの場、豊かな郷づくりとして、安全で安心できる暮らしのために、より一層の危機管理と災害への備えを進め、こころ豊かな郷づくりでは、地域での相互の助け合い、子供やお年寄りを見守る温かさが、心のゆたかさに不可欠と考え、地域のまとまりを大切に、健康で生きがいがあり、心豊かさを実感できる健康、福祉、教育、文化の充実を図るように、地域毎に伝えられている伝統行事や祭事は、子供たちに伝えたいふるさとの原風景である。

「にぎわい豊かな郷づくりでは、農業の振興は単なる産業活性化だけでなく、水環境の保全や田園風景を守ることや伝統生活文化の継承にとっても重要で、安全安心な食料生産と効率的な生産のしくみづくりを進め、工業・商業・流通等においても、熊本市に近いことや九州横断自動車道延岡ルートの整備等の立地特性を活かす産業振興を図り、経済的にもより豊かなまちづくりを進めている。

きずな豊かな郷づくりでは、まちづくりや地域活動に住民と行政が連携して役割を発揮していけるように様々な情報を共有できる仕組みを進めている。

以上のように、心の豊かさ・自然の豊かさとともに経済や暮らしの豊かさをさらに充実させて、「真の豊かさ」を実感できる暮らしの実現にむけて邁進している。

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