全国町村会

未来の“旬”を感じる観光
〜先人達が教えてくれた、滝上観光の未来へのヒント〜

北海道滝上町

2712号(2010年3月8日)
林政商工観光課 清原尚弘

北海道の自然と開拓の歴史を刻む

芝ざくらの面積日本一、渚滑川(しょこつがわ)のキャッチアンドリリースで知られる滝上町(たきのうえちょう)は、北海道の北東、網走管内の西部、渚滑川の上流部に位置する。1897年(明治30年)北海道の上渚滑原野が殖民区画として設定され、その3年ほど後に北海道留萌出身といわれるアイヌ人柳田初太郎が季節的に漁猟のため来往した場所が、現在の滝上町である。

町の面積は北東から南西まで44.4q、南東から北西まで27.8qの766.89平方kmで、全国の市町村で第77位、北海道の市町村では第19位の広さである。(平成22年2月1日時点)このうち山林が全体の90%を占め、その85%が国有林である。

滝上(たきのうえ)という地名が公式に使われるようになったのは明治40年で、渚滑川流域の区画測定が行なわれた結果、北見国紋別郡滝上地区として「殖民公報」に掲載されてからである。渚滑川には多くの滝があり、その上流部に位置していたため「滝上」地区と呼ばれたといわれている。大正7年に滝上村が、その前身である紋別郡渚滑村から分村し、昭和22年滝上町に昇格して現在に至る。

開拓民は滝上の地に“旬”を感じた。

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「滝上公園」昔の”旬”は桜

滝上公園は滝上町市街地の北方にあり、山頂が広く、遠くに天塩連山、北見連山を望むことができる景勝地。眼下には渚滑川、サクルー川の清流と市街地が広がっている。

芝ざくらが咲き誇る滝上公園は、かつて桜の名所として知られていた

滝上町の景観を広く町外に紹介すべく、大正8年から同9年にかけて、滝上市街青年団を中心に山頂を開さく、桜の移植をしたのが滝上公園造りの始まりで、かつては1千本の桜の木に覆われ、北海道の網走支庁管内一の桜の名所として知られた。

昭和25年5月、滝上観光産業振興協会が中心になって第1回桜まつりが開催されると、その見事さがたちまち全道に広まり、回数を重ねるとともに近隣市町村は言うに及ばず、名寄旭川、札幌方面からも観光客が来町する賑わいを見せたものの、その後の台風、積雪、病害虫などの影響により徐々に桜の木々はいたみはじめた。

当時の“旬”の桜は危機的状況になっていた。

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先人の目が芝ざくらを“旬”にした

「千本桜」と称された公園は、大正11年一人の町民から寄付された千本の桜の苗木がその原点となり、以来北海道内でも屈指の桜の名所となった。戦後の混乱からも立ち直り始め、住民の憩いの場となった滝上公園。悲劇が起きたのは昭和29年、台風15号「洞爺丸台風」により、滝上公園の桜もそれまで想像もつかなかった大打撃を受けたが、この悲劇こそが「日本一の芝ざくら」の起源となった。

10haに及ぶ芝ざくらの大群落は、町民たちの手で株分けが繰り返された結果だ

昭和33年、開基50年開町40年の祝典を契機に滝上開拓に尽くした先人の偉業を称え、5年計画で公園を整備することになった。桜の補植とともにエゾムラサキツツジ、紅ツツジなど数千本の移植を行い、駐車場も設定した。翌34年、町長に就任した朝倉義衛は、香りがあり地を這うように広がり、しかも病害虫に強い芝ざくらの植栽に着目、本格的な公園整備に着手した。芝ざくらそのものは当時公園を管理していた片岡兵治という蹄鉄職人が最初に試験的に植えたとされ、その後、友人でもあった朝倉町長に芝ざくらの植栽を積極的に奨めたといわれる。

最初に植えられた芝ざくらの出所は近所の庭、寺の境内など諸説あるが、スタートはわずかみかん箱1つ分だったといわれる。この二人を中心に町民達が協力して年々株分けを繰り返した結果、現在では10ヘクタール(甲子園球場の7個分)の大群落にまでなった。恒例の「桜まつり」は芝ざくらの広がりとともに「桜草まつり」と名称を変えて行なわれていたが、途中で桜草と芝ざくらは全く別の植物であることが判明したことから、再度名称を変更して現在の「芝ざくらまつり」となったいきさつがある。

先人の先見の目は、芝ざくらという北海道観光の“旬”を手に入れた。 

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渚滑川の“旬”は体験型観光

渚滑川は北見山脈の主峰天塩岳を源流とし、多くの支流を集め、やがて本町の中央を流れ、紋別市(もんべつし)を経てオホーツク海に注いでおり、その流域は農耕適地となっている。この渚滑川は、滝上町市街地の中央付近で支流のサクルー川と合流し、にわかに川幅が狭まり急流となる。その両岸は岩石の断崖となり、いたるところで奇岩をかきわけながら大小いくつもの滝をつくっている。

白馬の滝、蛟竜の滝、白亜の滝、夫婦の滝、洛陽の滝など、そのいずれもが滝上町を代表する滝であり、その豪快華麗な眺めは訪れる観光客を魅了してやまない。これらの景観は、昭和47〜48年に整備された遊歩道により、観光資源としての付加価値を高め、滝上渓谷「錦仙峡(きんせんきょう)」として観光客に親しまれている。

錦仙峡遊歩道には、貴重な種類の山野草が数多く生息しており、また春から秋には数十種類の野鳥が観察でき森林浴も楽しめる。これらの自然環境に着目し、平成15年ころから町民の有志が錦仙峡を訪れる観光客に対して自然ガイドを行ない、体験観光の人気メニューのひとつとなっている。

自然の中で“旬”を感じる体験型観光が確立されつつある。

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釣り人の“旬”はキャッチアンドリリース

渚滑川のもう一つの目玉が渚滑川での渓流釣りである。平成7年から渚滑川中流域8キロメートルを国内初のキャッチアンドリリース区間に設定し、スポーツとしての釣りのメッカに育てようとするものである。滝上町と地元の釣り団体「NPO法人渚滑川とトラウトを守る会」が協力し、訪れる人にキャッチアンドリリースへの協力を呼びかけた。その後もキャッチアンドリリース区間は延長が進み、平成9年に総延長16q、平成21年には総延長30qを超えることになった。

町民有志が務める錦仙峡の自然ガイドは、今や観光の任期メニューに成長

リリースについては、当初も今も罰則規定のない「お願い」という形。それだけに、一部の心ない釣り人が大量の魚を持ち帰るなど、多くの釣り人の協力を無にするような行為が散見されていた。このため町は、漁業権の取得も視野に入れ、規則化の方策を探り続けてきたが、漁業法の壁は高く画期的な方法は見つからなかった。漁業権の取得を断念してたどり着いたのがキャッチアンドリリースの条例化だった。条例化にしても、やはりその上には漁業法の網が掛かり、罰則のある規則化はできなったが、議会の議決を経た条例という形により、キャッチアンドリリースは「お願い」でありながらも、その存在は絶大なものとなった。

渚滑川のキャッチアンドリリース区間は昨年30キロを超えた

最近のアウトドアブームで様々なスポーツやレジャーが人気を呼んでいる。滝上町では釣りを全国に先駆け、渚滑川を日本スポーツフィッシングのメッカにすることで滞在型観光の目玉にしようと取組んできた。そうした試みはインターネット、専門誌、テレビなどで紹介され、全国のファンに広まった。ゲーム感覚で釣りを楽しむ客が多く訪れるようになり、北海道内各地はもとより本州ナンバーの車も多く見られるようになった。

現在、キャッチアンドリリースは全国的に注目されている。

滝上の“旬”は全国に波及している。

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未来の“旬”を感じる人材育成

芝ざくら、滝上渓谷「錦仙峡(きんせんきょう)」、キャッチアンドリリースなどのほかにも、滝上町の観光資源は尽きるところがないが、観光を産業として発展させていくためには通年型の観光が必要である。通年型の観光の核として、体験観光が注目を浴びて久しいが、滝上町にもようやく体験観光の入口が見え始めてきた。

体験観光の発展には、必ず人材育成の壁が存在する。滝上町もその例外でなく、いざ始めるにも、体験観光のフィールドはあってもそれを活用できる人材、表現できる人材、観光資源として商品化できる人材を発掘できずに不足していた。

体験観光資源を活用する人づくりが今後の課題

転機は平成16年に、近隣市町村が広域で企画した「オホーツク DO いなか博」。博覧会のイメージとはかけ離れ、地域資源を見直し観光資源を再発見することで、市町村間の意識を高め体験観光発展に繋げる目的で実施された。体験観光振興という誘惑のもと「オホーツク DO いなか博」は開幕したが、それまで滝上町が属する遠紋地域では、これといった体験観光メニューもないため、当初はほとんどの市町村が戸惑いを隠せなかった。しかし、アドバイザーなどの指導のもと、徐々に体験資源の発掘が進行。この発掘により、錦仙峡遊歩道の自然、浮島湿原の自然、護岸工事のされていない川、木工文化、ハッカ文化などが発見・発掘された。しかし、滝上町の体験観光資源は数多くあるが、それらを活用できる人材がいないことが浮き彫りになった。

“旬”を感じて次代につなげる人づくりが必要である。

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滝上の“旬”を感じる「旬感体験プログラム」のつづき

それらの課題を克服するために、滝上町では現在「体験観光基盤整備事業」を実施している。その名のとおり、体験観光の基盤を整備するもので、資源を活用して商品化するための体制づくりを滝上町観光協会が担っている。

錦仙峡ウォーキング、錦仙峡雪原スノーシュー体験、陽殖園のこだわりガイド、渚滑川フライフィッシング、林業の町の歴史散策、木工体験など、徐々にではあるが商品化に向けて動き始めている。それらは、「旬感体験プログラム」と名づけられ、四季を通じて観光客が滝上町の"旬"を感じることを目的としている。

「旬感体験プログラム」は内容が充実

滝上町の観光は、芝ざくら、錦仙峡、キャッチアンドリリースなど、時代・自然・人間の“旬”を感じた町民が築き上げてきた財産である。現在の“旬”は何なのか、未来の“旬”は何なのかを感じる人がいれば、観光の基盤は確固たるものになる。半世紀前に芝ざくらを植栽した先人の目は、現在では先見の目として称されている。

現在の“旬”をしっかり感じ、次代への壁を乗り越えられる人が育てば、壁の向こうの未来の"旬"は必ずみえてくる。“旬”を感じることが、滝上観光の未来を左右するヒントにつながるであろう。

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