全国町村会

上下流交流を通じた源流の里づくり
〜木曽川の豊かな水を生かして〜

長野県木祖村

2648号(2008年8月11日)
栗屋 徳也

村の概況

木祖村は長野県の西南端、木曽郡の東北部に位置し、2,000メートル級の山々に囲まれた峡谷型の山村です。本村の東側にある鳥居峠は太平洋に注ぐ木曽川と日本海に注ぐ信濃川の分水嶺。中部最大の河川であり、中部圏の水瓶でもある木曽川(229キロメートル)は、村のシンボル鉢盛山(2,446メートル)の豊かな森林(本村の面積の92%)に源を発し、遠く伊勢湾に注ぎます。その木曽川の源流の1つである水木沢は「木曽川源流の里 水木沢」として、本年6月に、環境省から「平成の名水百選」に認定されました。

村の南部をJR中央西線や国道19号が通り、近年になって木曽谷と伊那谷を結ぶ国道361号の権兵衛トンネルが開通したほか、上高地や岐阜県高山市に抜ける県道の改良が始まるなど、交通ネットワークには恵まれたところでもあります。

水木沢の天然林「平成の名水百選」に認定された水木沢の天然林

一方、村の産業は多岐にわたり、冬のやぶはら高原スキー場と夏のグリーンシーズンにアウトドアを楽しめる「こだまの森」や木曽路としての鳥居峠や薮原宿を中心とした観光、木工業においては特に画材に関する製品が多く、イーゼルやキャンバス額縁などの生産が盛んなことから、「日曜画家の村」としての宣言も行われています。農業では中央高地特有の冷涼な気候を利用した高原野菜の御岳はくさいのブランドが定着し、あわせて肉用牛を中心とした畜産が主となっています。林業は遅れていた間伐を中心とした森林整備を積極的に推進し、水源の涵養と森林の育成に力を入れています。

しかしながら産業の基盤が小規模であること、若者の定着と安定した収入につながる企業や職が少ないこと、人口流出が続き過疎化による高齢化少子化の傾向も著しいこと−なども現実です。国勢調査等の結果から人口動態を見ると、昭和30年の5,069人をピークに年々減少傾向が続き、高齢化率も35.5%と県内でも比較的高い方に位置しています。

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味噌川ダム建設と地域振興を

木曽川水系における水資源開発の一環として、平成8年に多目的ダムである味噌川ダムが完成しました。昭和46年に調査が始まり実に25年の歳月を要して完成しました。

味噌川ダムと奥木曽湖味噌川ダムと奥木曽湖

ダム建設により、下流域は莫大な恩恵に浴する反面、水地域は多大な犠牲を強いられるのが実情です。さらに、味噌川ダムの場合は水源地域対策特別措置法の適用も受けられず、村にとっては何のメリットもないことから「ダム建設絶対反対」が多数を占めることとなりました。

味噌川ダム完成10年を記念して開催した木曽川さみっと味噌川ダム完成10年を記念して開催した木曽川さみっと

その後、幾多の紆余曲折はあったものの、国や県をはじめ下流県市の理解・協力により地域振興対策事業が実施されることとなり、住民の理解も得られダム着工の運びとなりました。ダム建設は、ともすれば過疎に拍車をかけかねないともいわれているため、ダム完成後の村の経済基盤をいかに確立するか、そしてこのダムを活用し地域の活性化にどう結びつけるかが大きな課題となりました。

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木曽川の源流の里づくりを

木祖村が木曽川の源流であることを踏まえ、豊かな自然を生かした地域振興を進めて魅力ある水源地域にするために、「自然の環境や景観・水質の保全」「水源涵養のための森林づくりや原生林の保全を通じて「水」「森林」の大切さを訴える。」「自然資源を活かした産業の振興と歴史や文化を地域づくりに活かす。」などの事業を進めつつ、ダムの恩恵を受ける下流域の皆さんに水源地域を理解していただき、水源地域を訪れていただくための施策を進めることとしました。

交流事業を積極的に進め、交流人口を増やすことにより地域経済への波及効果を図ることを村の方針としました。

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木曽川の水を絆に上下流交流を推進

(1)木曽川「水源の森」森林整備協定推進事業

木曽広域連合(木祖村を含む木曽郡6か町村で構成)と愛知中部水道企業団(愛知県中部の2市3町で構成)とで上流・下流の住民が手を携えて森林整備を進め、「緑のダム」を作ろうとする活動を展開しています。上流も下流も住民が使用する水道水1立方メートルにつき1円を積み立てた基金を活用することで、平成17年度から木曽地域の森林整備を進めています。また下流住民とともに森林の手入れを行い、水源地域保全活動を行っています。

(2)日進市との自治体提携

昭和59年の愛知県日進町(当時)の商工会青年部との交流をきっかけに両商工会の姉妹提携を経て、平成4年に友好自治体提携を結び、以後官民問わず活発な交流を続けています。市制施行後、日進市は平成5年に村内国有林に32ヘクタールの分収林を造成、ヒノキ十万本を植林し、毎年、春と秋に市民と村民合同で「平成日進の森林(もり)」の手入れを行っています。また、子どもから大人まで夏のキャンプ、冬のスキーなど四季を通じてお互いのイベント、行事などに参加して住民レベルの交流を行い、日進市では市民が木祖村で宿泊する場合の宿泊助成が行われています。

(3)名古屋市との交流

木祖村で採取したドングリを名古屋市民が育て、生長した苗木を水源地である木祖村へ植樹する「木曽川さんありがとう」を毎年実施、木祖村からも名古屋市で開催されるイベントに参加し、特産品の販売や観光PR、水源地域の紹介などを行っています。 また名古屋市上下水道局職員が毎年森林の手入れに来村し、自ら汗して水源地域の実情を研修しています。民間企業の皆さんとの交流も進み、水を使う上下水道の工事店組合の皆さんが村の高原野菜の購入や組合の広報誌で木祖村を紹介していただくなどのほか、本年は管工機材総合展に木祖村も参加を予定しています。

(4)一宮市との交流

毎年5月に開催されるリバーサイドフェスティバルや物産展に参加し、一宮市からは木曽川源流探検隊として200人ほどの市民が木祖村を訪れ、野外体験やダム見学などを行っています。 また、一宮市在中の岩田恒夫氏を「木祖村ふるさと大使」に任命し、木祖村のPRに協力を願っています。民間レベルでも、文化交流の1つとして毎年木祖村で開催する全国日曜画家中部日本大会にはくの方が出品しています。また、近年の温暖化傾向により高冷地での花苗を生産しようと一業者が木祖村で施設を設置し、生産を行っています。

木曽川川の駅環境整備木曽川川の駅環境整備

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森林ボランティアとの交流

・ニューパラダイムの会

平成9年以来、毎年春と秋の2回間伐ツアーを行い、水源林の手入れや間伐材を活用した木材加工なども実施しています。

・緑の挑戦者(グリーンチャレンジャー)

水の恵みを受けている市民が森林とふれあい、手入れをすることにより、水源の涵養と環境保全に寄与しようということから、年2回市民や企業から募り、森林づくり事業を実施するほか、小・中・高校生を対象としたグリーンスクール事業も実施しています。この活動の中で、木曽川の水を最南端で利用している南知多町民・漁協の皆さんもはるばる水源地を訪れ、山の手入れを行っていただいています。

・木曽川さみっと

このほかにも、いくつかの行政や団体企業との交流を継続中です。これらの経過を踏まえ、平成18年には味噌川ダムが管理を開始して10年という節目を迎えました。そこで、これまでの交流を振り返りながら、未来に向かって上流域と下流域がともに話し合う場として「木曽川さみっと」を開催しました。下流県市やボランティアなどのいわば木祖村応援団が一堂に源流に集い、新たなネットワークを構築しました。

「さみっと」は「んなでどいもだちになろう」というキャッチフレーズを略したものです。この事業は、木祖村対個々の行政団体等であった交流に加え、横の連携をとりながら情報の共有をすることなどにより、さらに交流事業を深めていければと考えて実施したものです。

今まで時間をかけ、人と人との信頼関係を築き、お互いの立場を思いやりながら継続してきたことに大きな意義があったものと考えます。

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水の始発駅フォーラムの活動

平成14年、ダムを活かした水源地域の自立的・持続的な活性化を図るため、村と味噌川ダム管理所・地域住民は、 共同で「木曽川源流の里ビジョン」を策定しました。住民参加型の推進体制で、村民自身が考え、実践活動の中心になることを計画したものです。4つのプロジェクトで毎年水の始発駅フォーラムを開催し、ビジョンの実現に向けて、仲間作り、情報収集、人材育成、川の駅整備、体験学習のプログラム、特産品の開発など交流事業を念頭に置きながら活発な活動を展開していただいています。

この活動も年々充実してきていますが、これからの交流事業の展開を考えると、より充実した組織体制を検討し、交流の受け皿として中核的な活動とする必要があると考えています。

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全国源流の郷協議会への加入

源流地域としての悩みや共通した課題の解決、さらに源流の大切さを全国に向け発信するため、平成17年に「全国源流の郷協議会」に加入し、国に向かって政策提言を行っています。第9回の「全国源流シンポジウム」を8月30日、31日に木祖村で開催します。 今、8つの自治体が参加していますが、この仲間と下流域の人々にも参加していただき、実のあるシンポジウムとしたいと考えています。エクスカーションで名水百選の源流「水木沢」を体験していただくことを考えています。

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「木曽川源流の里緑化事業」の寄付と名古屋出張所の開設

木祖村が取り組んでいる水源地域の森林づくりに協力したいということから、名古屋市の水道・空調設備会社の(株)スミ設備の代表取締役社長 鷲見利幸氏から、会社の利益の1%を寄付したいという申し出をいただき、関連会社も含めて、2年連続で寄付をいただきました。これは、今後も継続して。 同社からは他にも、毎年の植樹作業や手入れにもおいでいただいたり、本村の農産物の特産である御岳はくさいやとうもろこし、カブの漬け物等も毎年購入していただくとともに、名古屋市内でも木祖村の特産物を積極的にPRしていただいています。また、社屋の一部を使用して、名古屋市へ木祖村の事務所を設けたらとの提案もいただきました。

幸い「木曽川さみっと」のネットワークも構築され、更なる交流事業の展開を模索していたこともあり、厳しい財政状況の中ではありますが、村の外へ向かって積極的に働きかけ、木祖村の産業や経済に効果のある取り組みを進めめたいと考えていましたので、本年4月、木祖村名古屋出張所を開設しました。まだまだ手探りの部分もありますが、すでに、様々な提案や引き合いがあります。今後は、これらの要望等にきちんと応えていくための村内での生産・販売体制の確立などが課題となります。

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これからの取り組み

木祖村は平成16年6月、市町村合併によらない自主自立の村づくりを選択しました。以来、徹底した行財政改革と住民負担の増など、種々の改革を実施してきました。一方住民の中でも自治組織の設立や地域を自ら守り育てようとする活動が活発となり、行政と住民との協働の村づくりが、一歩ずつ進んで来ています。 しかしながら少子高齢化の進行、産業の振興、雇用創生など課題は多くあります。上下流交流事業を通じて、豊かでおいしい水の確保、河川環境の保全などを更に呼びかけつつ、これからは、上下流のみに限らず、木曽川流域全体でのこのような取り組みが必要と考えています。定住・交流人口の増加と地域経済の発展につながるよう最大限の努力をして参りたいと考えています。

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