全国町村会

環境自治体創造への道
〜村民とともに自立の村を目指して〜

秋田県大潟村

2643号(2008年6月16日)
村長 黒瀬 喜多

大潟村とは

大潟村は、秋田県のほぼ中央部、秋田市から車で北に40キロメートル、“秋田なまはげ”で知られる男鹿半島の付け根に位置しています。琵琶湖に次ぐ第二の湖、八郎潟の国営干拓事業によって1964年(昭和39年)に誕生し、湖底にできた新生の大地の全域を行政区域として設置された特殊な村です。

農水省が干拓時に掲げた「日本農業のモデルとなる生産性及び、所得水準の高い大規模農業経営の確立と住みよい近代的な農村社会の実現」を目指して、全国各地、北は北海道から南は沖縄県までの1都1道36県から、589戸が入植しました。

大潟村全景大潟村全景

村の総面積は170.05平方キロメートル、人口3,340人。村が誕生して44年目、湖底だった大地は今、緑豊かな大地へと変身し、従来の農村風景とは一風変わったおしゃれな村になっています。湖底の大地にひとつのむらをつくりあげた入植一世の不屈の魂と入植二世の若き行動力がそれぞれ役割分担しながら活力あるモデル農村を展開しています。

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大潟村そのものが観光地

総延長52qの堤防に囲まれた海抜0m以下の大潟村、広い干拓地を象徴する長い直線道路、南北に縦貫する幅80m延べ51qにもおよぶ中央幹線排水路。

菜の花と桜(2,800本)の並木は総延長20数qにもおよび、大潟村を春色に包み、道行く人々の目を楽しませ、心を和ませてくれます。村のほぼ中央には、日本唯一、10度単位の「北緯10度、東経140度」の経緯度交会点があり、また、わが国初の国設「大潟草原鳥獣保護区」では、約200種の野鳥を観察することができます。現在、村には110万人もの観光客が訪れています。広大な田んぼが四季の移り変わりに見せる光景と共に大潟村そのものが観光地といえます。

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行政の役割

国の猫の目農政の弊害により揺れ動いた大潟村も40年余りを経て今、農水省が八郎潟干拓時に掲げた「近代的な農村社会−住民自治」の村実現に向け、本当の意味で動き始めました。その原因は、従来の保護や規制の社会システムが経済の国際化や情報の共有化の中で、立ち行かなくなってきたことによるものです。

菜の花畑と鯉のぼり菜の花畑と鯉のぼり

この社会の大きな変革の中で、大潟村の農業者も苦しい戦いを迫られています。しかし、我が村には、もう行政政策主導で産業振興を図る時代ではない、産業も地域社会もそれぞれ経営者や住民の自己責任や社会貢献の自覚によって、自分たちの手で創ろうという農業者や住民の行動が存在し、大潟村の底力として動き出していることを感じています。こうした、住民の農業経営と村づくりへかける創造と実行のエネルギーを、どれだけ、どのように支援するのかが行政の役目であると思っています。

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住民による「21世紀大潟村環境創造型農業宣言」

2001年大潟村の若手農業者が中心になり、「21世紀大潟村環境創造型農業宣言」を発表しました。その宣言には、環境負荷をできるだけ減らし、より良い環境を創造する農業の実践、今まで以上に安全でおいしい農産物の生産に努める、農業だけでなく生活面でも環境にやさしい暮らし方を追求する、それは行政主導でなく住民が自主的に創意工夫して行動すること−とする理念が書き込まれ、さらに自分たちだけでなく、行政、農協、専門家、八郎湖周辺の人々、全県・全国の関心ある人々との理解と協力を得て実現していくと謳われました。

住民の力でこぎ着けた宣言委員会のメンバー、環境に負荷をかけない農業に取り組むグループ、環境に配慮した暮らし方の実践をする村民の皆さんがいたからできた宣言だったと思います。

このような住民の運動、活動が福祉・文化芸術などさまざまな分野で見られ、とても頼もしく思うと同時に、行政の役割、支援のあり方を職員と共に確認しながら住民参画・住民自治の村づくりに取り組んでいきたいと思っています。

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安全・安心な食糧生産・供給基地「大潟村」を日本一のトンボの村に

大潟村の水田面積は9,100ha、2008年4月現在の農家戸数529戸。入植者一世から二世へと半数以上が世代交代しつつある中、恵まれた農業環境の特性を活かし、消費者の視点にたった安全で安心な農産物を生産・直接販売するなど、経営者それぞれが特色ある農業経営を行っています。

2006年、村は、生産調整参加者以外の農家も入れたすべての農家を対象として、大潟村環境保全型農業実態調査を行いました。対象農家数538戸、回収率84.6%に上った調査では、JAS有機栽培を含めた減農薬減化学肥料栽培以上の環境保全型農業実施面積は76%と、大潟村の農家の環境意識の高さを現す結果となりました。

近年、生き物が示す安全安心のお米が高い評価を得ています。大潟村としては一段評価レベルを高めて、よりきめこまかな自然環境の保全を必要とする生き物=トンボ(昆虫類)が生息できる環境、ビオトープ等を設置して村内にトンボが飛び交うネットワークを構築し、“トンボの村”を目指す動きが始まりました。トンボは自然環境の変化に敏感で、様々なトンボが生息できる環境を、農産物の安全性の指標として、消費者に信頼性をアピールできます。

環境保全型農業で安心安全な米づくり環境安全型農業で安心安全な米づくり

さらに、トンボネットワークを目標にすることで、村内の農地等の環境管理レベルについて、単なる現状維持から、より地域ブランドを高めるための作業へと住民の意識を転換することができます。

村全体のブランド力を高めるという意識を共有することで、農村環境の総合的な保全を継続的に行う基盤づくりを目指す「農地・水・環境保全向上対策事業」への住民の積極的かつ主体的な参加を促すことができます。

今年から小学校は4年生、中学校は選択した生徒を対象に、環境教育の一環として出前授業や田んぼのトンボ実態調査も始まります。子供たちが村全体の環境への関心を深めると共にこの活動を通してふるさとを実感してほしいと期待しているところです。

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住民参加で環境自治体を目指す

早くから農業と環境との関わりを意識してきた大潟村民の中から、農業用水である八郎湖の水を汚さないためのさまざまな活動が生まれています。1974年農協店舗での合成洗剤追放、1983年除草剤CNPの使用禁止、1990年農薬の空中散布全面中止、1990年からはじまった石けんづくり運動、八郎湖への流入河川上流にブナを植える会の活動など素晴らしい実績があります。 さらに水質保全・生態系保全のグループも生まれ、さまざまな活動が広がっています。

また、大潟村が「21世紀に向けたクリーンエネルギーの探求」をテーマに平成5年からはじめた“ソーラーカーの大会”は、運営を主催者団体に移行しましたが、行政の役割としての支援をしながら、新エネルギーの活用・省エネなどこれまでの人脈等を活かしてこれからの大潟村のエネルギー政策を模索しているところです。

これまでの住民の活動、村内の環境イベントなどを、村全体の環境行動としてどこに、どう位置づけたらいいのかは、課題として残っています。

平成5年から続くソーラーカー・ラリー平成5年から続くソーラーカー・ラリー

2007年度から環境自治体スタンダード(LAS-E)を運用基準とした大潟村環境マネジメントシステムの取り組みを開始しました。現在は第1段階で主に役場職員を対象に庁舎内の省エネ・省資源など事務活動における環境配慮行動の実践、職員意識の醸成になりますが、第2、第3段階では村の課題の検討も組み入れながら、すべての政策分野で環境優先の考え方を取り入れ、地域において環境の視点に立ってまちづくりを推進する環境自治体を目指します。

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最後に

行財政改革の嵐の中で、全国的に「平成の大合併」が推進されましたが、大潟村は平成15年末に住民の熱気溢れる合併論議を経て、住民の力強い選択により自立のむらをスタートさせました。「生活者の視点に立った、住民参加参画まちづくり」を基本として、村民一人ひとりが多様な価値観を認め合う、個性豊かで魅力溢れるコミュニティーづくりに挑戦し続けたいと思います。

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