全国町村会

情報交流が創る友達の輪と絆
〜みんなが主役のまちづくり〜

長崎県新上五島町

2641号(2008年6月2日)
情報化推進室長 竹内 和朗

1.町の概況

新上五島町は、長崎市の西方に浮かぶ五島列島の北部に位置しており、九州本土との距離は、長崎港までが約77q、佐世保港までが約60km。面積は213.9平方キロメートル。海岸線は屈曲に富み、海と山が織りなす美しい自然景観は圧巻で、西海国立公園に指定されています。

五島列島は、古くから大陸交流の拠点となってきた歴史背景もあって、町内には教会や寺社をはじめとして多くの史跡が残されており、更には、様々な郷土芸能や伝統行事等が継承され、独特の地域文化を形成しています。

波穏やかな若松瀬戸の風景波穏やかな若松瀬戸の風景

海上交通は、長崎、佐世保、博多の各港にフェリー、ジェットフォイル、高速船等々で連絡されています。産業基盤は、半農半漁の形態をとってはいますが、農業は、恵まれない地理的条件からほとんどが自家消費程度にとどまっています。漁業は、定置網や沿岸捕鯨及び巻き網漁業などで隆盛を極めた時代もありましたが、資源の枯渇、燃油の高騰や海洋環境の変化に加えて国際的な反捕鯨運動の高まりによる捕鯨の禁止などにより、厳しい漁業環境のもとで喘いでいます。このような状況の中、人口流出が続き、過疎化による高齢化・少子化の傾向も著しく進行しています。

国勢調査結果から人口動態を見ると昭和35年の56,784人をピークに年々減少傾向が続き、平成19年12月末には24,796人と、半減しています。

バラエティに富んだ特産品バラエティに富んだ特産品

地場産品は数多くあります。アゴ(飛び魚)の出汁は有名ですが、粉末加工でパック入りの五島あごじまん、極細の麺とコシの強さで大人気の「五島手延べうどん」、島内全域に自生するヤブ椿の実を原料にした「椿油」、芋を原料とし古くから愛されてきた「カンコロ餅」、五島の美しい海水を原料とした「自然海塩」、様々な工夫を凝らした水産加工品等々が、新上五島町を代表する特産品として広く愛されています。

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2.地域情報化への歩み

・イントラネット利活用の伸び悩み

新上五島町は、離島という地理的特異性から非常に複雑な地形をしています。役場から遠い地区の住民は、証明書等の取得にさえ車で1時間程度の移動時間を要します。地理的・時間的にハンディキャップを抱える離島にとって、時空を越えることができる情報通信網の整備、すなわち、地域情報化の推進こそが喫緊の課題を解決する鍵となりえるとの思いを抱き続けていました。平成14年度情報通信格差是正事業費補助事業の補正分として、実質的には平成15年度に上五島地域イントラネット基盤施設整備事業を実施しました。この事業では、支所・出張所、小中高校、公民館・集会所、そのほか医療機関、幼稚園、図書館、体育館等、合計127箇所を光ファイバで接続、総延長は220qにも及びます。

事業実施後には、各接続施設や学校などで情報公開端末の操作研修を行い有効活用促進に努めました。さらに、この操作研修の際に聞いた住民の皆さんの声や、その他の住民の皆さんからの声を更に活かすためにも、住民の皆さんのニーズがどこにあるのか、何をすることが住民の皆さんのためになるのか、そのためには何をするべきか、できるのかを常々考えてまいりました。

国指定重要文化財に指定された頭ヶ島協会国指定重要文化財に指定された頭ヶ島協会

平成17年8月1日からは、イントラネットの活用策の一つとして、役場から比較的距離の離れた6地区の郵便局で、各種証明書の交付を始めております。利用者数はを瞠るようなものではありませんが、役場まで足を運ぶ必要がなくなったことで住民の方々からも好評を得ています。

また、このように日常の、身近なものから情報化を進めていくことによって、福祉医療や教育、産業、あらゆる面での情報化の利便性と必要性が、住民の皆さんに徐々にでも認知されるように、地道な取り組みを続けたいと考えていました。

・コミュニケーションポータルサイト構築へのきっかけ

上五島地域イントラネット基盤施設整備事業の主たる目的は、自設の光ファイバ網利活用による、住民の方々の生活環境の向上に積極的に取り組むことにありましたが、町の財政状況は厳しい状況に陥っていたため、地域情報化に対して多大な費用の投資を見送らざるをえませんでした。

そのようなもどかしい状況のなか、さらに輪をかけるかのように、上五島空港路線が平成8年3月末で廃止になるとの知らせがありました。これを受けて、町は長崎県と善後策の協議検討を重ねました。この協議の結果、辿り着いたのが空港施設と地域イントラネットを有効に活用した地域活性化策でした。

従来、観光や特産品情報の発信や、観光物産展も行政が主導する形になっていたことを反省し、地域のみなさん、住民の方々が主役として主体的にそれぞれの立場で積極的に開発に取り組むことが肝要であり、住民が主役のまちづくりに向けて、住民のみなさんが一丸となって、真剣に町の活性化に取り組む形をつくれないものかと心を砕きました。

その、住民が主役のまちづくり実現に向けた組織として、地域情報化による地域活性化に取り組む協議会の立ち上げを考えるに至りました。協議会の名称を新上五島町地域活性化推進協議会として、この協議会で長崎県との連携を密にした空港施設と地域イントラネットを有効に活用した地域活性化策の策定を目指す体制を描き出しました。

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3.先導的地域情報システムの開発事業応募へ

役場内で立ち上げた地域活性化推進協議会の準備会で度重なる協議の結果、少しでも多くの方に新上五島町を認知してもらうこと、それと併せて町民一人ひとりが積極的に情報を発信する形態を目指すために、単なる観光情報の発信のみにとどまることなく、EC(電子商取引)とSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を盛り込んだコミュニケーションポータルサイトを構築することを、町の情報通信基盤を活用した地域活性化策のたたき台として作成しました。

新上五島町SNS新上五島町SNS「してみっか」

そうした時も、財政状況の厳しさから町は公共事業を緊縮し、建設業者の倒産が相次ぐなど、地域経済は悲鳴を上げており、一刻も早く地域活性化に取り組みたい状況でした。

協議を重ね、練り上げた地域活性化策の実現に向けて、平成18年度から何とか取り組めないかと考えていた、そのような矢先、「地域の課題解決」、「地域の住民・企業・行政との協働・連携による地域活性化活動」、「公共的サービス提供を実現する地域情報化」等の他地域のモデルとなる先導的なシステムの開発により地域コミュニティと地域産業の活性化を目的とする内容の、財団法人ニューメディア開発協会様の平成18年度「先導的地域情報システムの開発事業」に係る公募があることを知り、応募することになったのでした。

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4.地域活性化推進協議会

平成18年度「先導的地域情報システムの開発事業」にご採択いただきましたことを機に、町内の個人、事業者、協会・団体、学校関係者、町が構成員に、そして、大学教授や長崎県の担当部署の方々にもオブザーバとなっていただく新上五島町地域活性化推進協議会を立ち上げました。

この新上五島町地域活性化推進協議会は、その下部組織としてICT戦略、地域情報、物産振興、観光振興、情報教育の5つの委員会が設置されています。それぞれの委員会には、公募委員を含めた10名程の委員が所属しており、住民が主役であることを念頭に置いた熱心な協議を重ね、新上五島町コミュニケーションポータルサイトの具体的な内容について決定していったのでした。

この間、新上五島町コミュニケーションポータルサイトのサイト名称、キャラクターデザインも広く公募を呼び掛けるなど、構築の段階から地域住民の皆様方に興味を持っていただき、愛着を感じていただけるように努めました。公募の結果、新上五島町コミュニケーションポータルサイトの名称は、地元小学校の4年生女児の「みっか」に、そして、キャラクターデザインは兵庫県在住の女性の作品が選ばれました。

さらに、運用後もこの協議会に参加者を加えた形で評価見直しを図ることによって、住民そして参加者みんなが育て上げていくとした、成長型のコミュニケーションポータルサイトとすることを基本姿勢とすることにしています。運用が開始されて以降もこの基本方針に基づいて精力的に内容の見直しに努めており、今後も利便性の高いものをご提供していきたいと考えています。

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5.活用成長型ポータルサイト『みっか』の概要と特徴

新上五島町コミュニケーションポータルサイト『みっか』は、住民のみなさんが各種情報を積極的に提供する場としての町民ブログサイト「みてみっか」、町の特産品をインターネット販売する商店街ECサイト「こうてみっか」、町内の全小中学校24校がブログを持つ学校ブログサイト、町の魅力ある観光資源を紹介する観光情報サイト「いってみっか」、町からの公式情報サイトと、新上五島町SNS「してみっか」で構成されています。

観光情報サイト観光情報サイト「いってみっか」

以下それぞれのシステムの機能について概要を紹介いたします。

・新上五島町コミュニケーションポータルサイト「みっか」

コミュニケーションに主眼を置き、誰もが情報を発信できる地域ニュースポータルサイトであり、全てのシステムの玄関口として各機能に書き込まれた情報を集約して表示させる機能とその連係機能を持っています。

最新情報をトップ画面だけでも確認でき、利用者のみなさんに最新情報を提供することができます。さらに、管理者からの最重要情報を固定してお知らせを表示させることができ、特に災害時の関連情報の提供にも力を発揮することが期待されます。

・新上五島町SNS「してみっか」

SNSとライブコンテンツの融合による現実のコミュニケーションに近い形のソーシャルネットワーキングサービスシステムです。会員制での運用によってセキュアなコミュニケーションを保つことができ、携帯電話での利用にも対応しており、コミュニケーション構築の中核システムの一つです。

・商店街EC「こうてみっか」

新上五島町の特産品をインターネット販売するECサイトです。運営組織が受注・販売及び物流を集中的に管理することで、登録されている新上五島町内の各店舗の各種特産品をお客様の好みに応じて様々な組み合わせで注文し、一括送付することを可能としています。

・町民ブログ「みてみっか」

誰でもが簡単に情報発信が行える日記型のコミュニケーションツールであるブログでの情報交換の場を提供するものです。

・学校ブログ「みてみっか」

学校ブログ「みてみっか」学校ブログ「みてみっか」

学校交流とICT教育の実戦に向けた足掛かりとして新上五島町内全小中学校24校が統一フォーマットを採用した学校ブログを稼働しています。

・観光情報サイト「いってみっか」

新上五島町は、町の概要でも紹介しましたように大自然の織りなす景観は圧巻で、西海国立公園に指定されています。さらには、29もの教会群は、世界遺産の暫定リストに挙げられていて、島には見どころがいっぱいで魅力が溢れています。

しかし、残念なことにまだまだ多くの方に知っていただいていないのが実状です。そこで、この「いってみっか」では、動画による観光情報の発信に取 り組み、より強くその魅力を訴えることに努めていくことを狙っています。

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6.今後の展望と課題

今回、先導的地域情報システムの開発事業によって構築することができた新上五島町コミュニケーションポータルサイト『みっか』は、大変素晴らしい機能を持ち、他のモデルとなるものと自負しているものではありますが、私たちが最も誇りにしているのは、住民のみなさんが参画することによって、町が一丸となって地域活性化に取り組むという体制の礎ができたことにあります。

現在、新上五島町SNS「してみっか」の登録会員は850名。商店街EC「こうてみっか」は、26業者211品目の出店での運営ですが、成長型のポータルサイトの名に恥じぬように、参加者のみなさんと「地域活性化推進協議会」とががっちりとスクラムを組んで、住民が主役の町づくりの核との思いで、常に前向きに改良を重ね成長し続けたいと考えています。

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