全国町村会

住みよい街が行きたい街
〜弥彦浪漫化計画の軌跡〜

新潟県弥彦村

2635号(2008年4月7日)
村長 大谷 良孝

村の概要

弥彦村は、新潟県のほぼ中央にある越後平野に位置し、日本海側に聳える弥彦山の裾野に広がる面積25平方qの村である。人口は約8,700人で前回の国勢調査では僅かながらも人口が増えている。

越後平野の豊饒な大地での農業と、観光が基幹産業である。

弥彦山麓には、神武天皇の勅を奉じて熊野から越後国におもむき、地元民に稲作・漁業・製塩・酒造の技を教え指導した、越後国の文化・産業の神「天香山命(あめのかごやまのみこと)」を祭神とする越後一宮彌彦神社が鎮座し、弥彦はその門前町として弥彦詣の人たちを迎えてきたところである。 また、北国街道の宿場町としても11世紀発見と伝えられる歴史ある観音寺温泉を中心に古くからえてきており、今も弥彦温泉街には神社末社や史跡・旧跡が数多く点在している。

自然景観にも恵まれ、山頂から越後平野、日本海・佐渡、遠く能登半島まで一望できる弥彦山をはじめ、桜と紅葉の名所「弥彦公園」など四季の彩りが美しいところでもある。

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弥彦観光の現状

越後一宮彌彦神社越後一宮彌彦神社

史跡や名所など観光資源豊富な弥彦だが、観光客数は上越新幹線や関越・北陸自動車道開通で沸いていた昭和60年前後の285万人をピークに減り、近年は210万人前後で推移していた。また、弥彦・観音寺温泉の宿泊客数の減少が特に酷く、ピーク時の半分以下まで減少しており、弥彦の観光は彌彦神社に参拝するだけの通過型観光地となっていた。 近年、知られざる弥彦の魅力を少しでも多くの方にと、彌彦神社境内を無料でガイドする「弥彦観光ぼらんてぃあガイド」が立ち上がったりしたものの、首都圏に向けたキャンペーンなどを中心におこなわれてきた旧態依然の観光宣伝が続いていたため、団体旅行からニーズに合わせて旅行するというお客様の変化に対応できず、低迷し続ける観光活性に向けてはなんら効果を得られる取り組みができなかったと言わざるを得ない。

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きっかけ

そんな現状をなんとかしようと、平成16年度に長年使用していた観光パンフレットと観光協会ホームページを一新することにした。今まで、観光協会幹部と村で製作していた方法を改め、観光関係者の他に広報にて作成委員を村民から公募し、考えていることやこうしたら良いということなどの意見を観光に携わる人だけでなく、携わらない人からも聞こうとパンフレット作成委員会を立ち上げた。これがすべての始まりとなる。

作成委員会の中で、まず意見があがったのが「タイトルを変えたら他の観光地のパンフレットと言っても判らないものにしたくない。一目で弥彦と判る“弥彦らしい”ものにしたい。」と言うものであった。"弥彦らしさ"を表現する=コンセプトとして模索することになったのだが、"弥彦らしさ"とは何か?ということに対し答えは簡単に出た。弥彦らしさとは「彌彦神社を中心とした歴史・文化、弥彦山の自然であり、また、古くから弥彦詣の人たちを迎えてきた心」ではないかと。

そして完成したのが、「弥彦浪漫」である。彌彦神社を中心とした“歴史・文化”と“もてなしの心”というホスピタリティをわかりやすく表現するためタイトルを「弥彦浪漫」とし、どこか懐かしい風合いが弥彦とマッチする大正ロマン風のイラストを採用した。「弥彦の歴史は大正ロマン程度のものではない、万葉からの歴史だ。」という意見もあったが、"わかりやすさ"を重視したもので「浪漫という言葉には様々な意味合いがある。けっして大正ロマンにとらわれるのではなく、弥彦らしさを表現しよう。」と委員会でまとまった。ホームページも同様のイメージでリニューアルを図り、統一性を持たせた。

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弥彦浪漫化計画

そして平成17年度からは、弥彦らしさを活かした"まちづくり"で、個性あふれた魅力ある観光地づくりをしなければならないと話し合われ、「すべての活動に弥彦らしさを」を合言葉に、昔から弥彦で使われていた「住みよい街が行きたい街」をベースとし、弥彦の良さ・特色・個性を住民一人一人が見つめ直し、再認識することにより地域の活性化を図る取り組み"弥彦浪漫化計画"がスタートした。

しかし、「弥彦らしさをすべての活動に」と言うのは簡単だったが、ではどうすればそうなるか?という点が問題となり、まずは「目標としての弥彦浪漫のイメージを明確にし、それぞれの活動コンセプトを共通化しよう」と弥彦浪漫パンフレットとイメージを合わせた弥彦浪漫デザインでイベント毎のポスター・チラシ等広告物を作成することにした。

当然ながら、「イメージが先行しすぎる。」「実際来たらガッカリされる。」という意見も出たが、「目標が無ければ皆が同じ方向に向くことは出来ない。」と考え、作成に踏み切った。

今思えば、このビジュアルから入ったことは良かったと思う。その都度あれこれコンセプトを話し合い、それぞれ活動するよりも、目に見える目標があった事により、弥彦浪漫化計画という取り組みが加速し、浸透した。

目標を明確にすることから始まった取り組みだが、同年から"まちづくり"活動も本格的に始まることになる。きっかけは新潟県主管の「弥彦山麓景観づくりプロジェクト」だった。これは地域の景観を考えるため地域毎にワークショップで計画を立て実践するものだったのだが、このプロジェクトから、「まちづくり活動を住民参加でのワークショップで。」という考え方と地元の「長岡造形大学」との繋がりが生まれることとなる。

この2つは現在の弥彦浪漫化計画の重要な部分となっている。平成18年度におこなった「全国都市再生モデル調査事業」や"良寛も歩いた弥彦浪漫の道"として活動している「日本風景街道」の取り組みもこの住民参加型ワークショップと長岡造形大との繋がりという「産官学民」の連携があってこそだ。

まちづくり活動の中で特に力を入れて取り組んでいるのが、「歩いて楽しいまちづくり」である。前述したように近年の弥彦観光は通過型となっており、滞在時間も短ければ30分というのが現状で、彌彦神社参拝とトイレだけという人も多い。その人たちの滞在時間を少しでも延ばし、見てもらうことにより弥彦の良さを感じてもらい、経済効果を得ることを目的に「まち歩き」の取り組みを進めている。

ゆっくり散策できる環境づくりとしての沿道や店舗前への手作りベンチの設置、自販機へ木枠を被せる修景作業、また散策しながら楽しめる野外展覧会の実施などもおこなっている。 特に好評なのが、「弥彦ナイトウオーク」と「まち歩きウオークラリー」であるいずれもワークショップから生まれた取り組みで、ナイトウオークは「夜」、ウオークラリーは「昼」の弥彦を史跡・旧跡が点在する小路を中心に散策しながら楽しんでもらおうと言うことで企画した。

弥彦ナイトウォーク弥彦ナイトウォーク

弥彦ナイトウオークは、ペットボトルと割り箸の再利用で作成した手作り提灯を手に「弥彦観光ぼらんてぃあガイド」の案内のもと、昼とは一味違う夜の弥彦を楽しんでもらうもので、蛍舞う6月下旬、夏休み期間の8月上旬と初秋の9月中旬にそれぞれ実施した。

まち歩きウオークラリーは、初秋のナイトウオークと同時開催し、夜だけでなく、昼のまち歩き促進のため実施したもの。ナイトウオークで"弥彦のまち歩き"に関心が高まっていたおかげか、予想を超える反響があった。

このような「まち歩き」の取り組みは成果が出つつあり、「お客様の動きが変わった」と地元から聞かれるようになった。今まで弥彦の中でも彌彦神社周辺の狭いエリアだけで完結していたものが「まち歩き」を通して対象エリアが広がってきているようだ。

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短期でも成果があがる活動を

まち歩きは徐々に成果があがっているが、総じて「まちづくり」という活動は短期間では成果を求めにくく、中長期でのビジョンが必要となる。そのような成果のあがりにくいことばかりをおこなっていては、実際に取り組む地元のモチベーションの低下は免れず、活動が停滞してしまう。

住民参加型のまちづくり住民参加型のまちづくりワークショップ

そこで、観光協会の情報宣伝部会、商品開発部会を中心に、公衆無線LAN「FREESPOT」普及と地域ブランド「弥彦浪漫」の立ち上げに取り組んだ。

FREESPOTは旅館飲食店などの営業施設や公共施設に無線LANアクセスポイントを設置し、お客様や村民が無料でインターネットを利用できるサービスとしておこなった。ビジネス客誘致が当初の目的であったが、受信できる端末(ニンテンドーDS、PSPなど)も多かったため村民にも利用勝手が良いと好評である。 また、FREESPOTを利用した街角ライブカメラを設置し、動画のホームページでの公開や、協会員同士のSkypeによる通話も普及を進めている。2年前、2ヶ所からはじまった同スポットも現在は約80箇所まで広がっている。

浪漫ブランド商品浪漫ブランド商品

地域ブランド「弥彦浪漫」は、弥彦の地域としての魅力の向上と、土産品・特産品などの販売力強化を目的に立ち上げた。まちづくり活動により地域のブランド価値向上を目指すということもあったのだが、何よりも土産品・特産品の販売促進が急務であったためである。

立ち上げに向けての商品開発部会では「本物志向の強い昨今、地域ならではの魅力ある商品が並ばなければ」と検討をおこない、既存の農産物や人気の土産品からブランドに入ってもらう前に、ブランドイメージを確立する新たな商品を開発することとなった。そして、第1弾オリジナル商品として完成したのが、弥彦の四季をモチーフにデザインされた「ハンカチ」「手拭い」「足袋ソックス」「一筆箋」である。オリジナル商品は期間限定で発売された「おでん缶」「地酒」「カレンダー」「うちわ」を経て、現在第2弾の商品の発売に向け準備中である。

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今後の課題

ここ数年の間に様々な取り組みを観光協会と共に住民参加型ワークショップという形式で実施し、成果が上がっているもの、上がっていないものが出ている訳だが、今の課題は地域間・住民間での観光やまちづくりに対する“温度差”や“意識のズレ”の解消である。

弥彦村内の観光への評価は低く、弥彦観光の低迷は当然だと考える村民が多い。これは弥彦浪漫化計として新たな取り組みが始まった今も同じことが言える。それを村民が外で話をすれば、どんなに大きなPRをおこなっても水泡に帰してしまう。

「サービスが悪い」「彌彦神社頼み」と言われながらも、それを打ち消すことができなかったのは反省すべきだが、取組みが進んでいる今、その解消のため観光の取組みを紹介する「観光かわら版」を広報と一緒に村民向けに配布し“内”向けのPRをおこなっている。

観光かわら版に代表されるように弥彦は今まで県外・首都圏向け一辺倒だったPRを見直し、村内・県内向けのPRに重点をおいている。まずは地元住民が誇れる観光地を目指し、弥彦はこう取組むというコンセンサスを弥彦村民から得て、弥彦の個性・特色を活かした魅力ある観光地に向け一層取組みを加速させたいと考えてのことであるが、その“住民が誇れるところ”こそ最も重要なことではないかと思う今日この頃である。

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