全国町村会

「海」を基点としたまちづくり

  

大洗町の市街地と海岸線


茨城県大洗町

2467号(2004年2月2日)  大洗町町長公室 まちづくり推進専門担当主査 石井 孝夫

はじめに

大洗町は、茨城県の海岸線180kmのほぼ中央に位置し、県都水戸市の中心部から12km、三方を鹿島灘、那珂川、涸沼川そして涸沼の水辺に接した23.19平方kmの風光明媚な地域で、古くから漁業と観光の町として栄えてまいりました。近年、市町村の合併により川を挟んで水戸市、ひたちなか市と接し、地方中核都市と隣接する人口約2万人の町として立地し、更には、重要港湾大洗港の建設に伴うインフラの整備や大洗マリンタワー、アクアワールド茨城県大洗水族館などの観光施設の整備、そして高速道路網の整備により年間入込み客300万人の観光地として立地しております。

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港湾と観光と漁業の町

古くは、北前船や会津を中心とした内陸部の物資の集積地である湊町(現ひたちなか市)と隣接することから水戸藩の花町としても栄え、明治・大正の時代になってからは、日本三大民謡の一つ「磯節」の流布や水戸と結ぶ水浜電車の開通により潮湯治(海水浴)客をはじめ多くの観光客を迎える観光地となりました。また、白砂青松の大洗の地に井上靖や山村慕鳥はじめ多くの文化人も作品を残しております。

近年は、街の前面に大洗港が建設され漁港区には漁船約200隻が係留され、しらす漁やハマグリ漁を中心に年間15億円ほどの水揚げがあり、県内一の沿岸漁業基地となっております。商港区には、昭和60年より北海道間に大型カーフェリーが就航し、現在は苫小牧との間に1日2便の就航で、年間22万人のお客様と1,300万トンの貨物を取り扱い首都圏と北海道を結ぶ物流拠点となっております。

更に港湾に隣接して大洗マリーナがあり100隻ほどのヨットやグルーザーボートが係留され、その南に延長約1,300m奥行き約400mの広大な大洗サンビーチがあり、海水浴、サーフィンなど年間を通じて沢山の方々が海や海辺を楽しんでおります。

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日本初のバリアフリービーチの誕生

平成5年広大なサンビーチ海水浴場の監視救助活動に若者を中心とした頼もしい助人が現れ、翌年、大洗サーフライフセービングクラブを結成し、本格的に監視救助活動を開始、以来今日まで開設期の死亡事故はゼロ、安全安心な海水浴場として高い評価を頂いております。

そのライフセーバーのモットーが“誰もが安全に海を楽しむ”であり、車椅子の方々が海を眺めながらやむなく引き返す姿をしばしば見かけたライフセーバーの代表がショックを受け、バリアフリービーチを作りたいと町に相談が持ち込まれ、その提案を受け、車椅子の方が健常者と一緒に海水浴やマリンスポーツを楽しめる環境づくりについて議論を重ね、また、実際に車椅子を使っている人たちとの打合せを重ねました。

試行錯誤の結果、平成9年7月、小さなプレハブ2棟(更衣室とトイレ・シャワー室)と手づくりの木製スロープを設置し、アウトドア用車椅子を6台配備(現在17台)し、大洗サンビーチをバリアフリービーチとして開設することができました。町の予算はたったの150万円、地元の大工さんの献身的な協力により障害者に使い易い施設として、また趣旨に賛同下さった企業の協賛をいただきスタートを切りました。また、運営などソフトな面においては、ライフセーバーのパラナースと呼ばれる女性たちが研修を積んで対応しております。

  

  

バリアフリー施設と海水浴を楽しむカップル

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バリアフリービーチの成果と課題

これらの取り組みと日本初のバリアフリービーチということで、新聞をはじめとするマスコミの取材も多く予想以上の反響をいただき、子どもから高齢者まで幅広い年齢層の利用により、年々利用者も増え海水浴期間だけで300人を超える利用状況となっております。それらの利用者の声や表情には感動的なものが多く、数十年ぶりに海に入った方、いつもおいてきぼりだったのにはじめて兄弟で砂遊びをした子、海の話をしても通じなかった子が足を波に触れたときの表情など、対応しているライフセーバーにとっても感動と成長の日々であります。

町にとっての一番の成果は、バリアフリーという言葉さえ知らなかった町民の意識に変化を与え、福祉社会全体を考えるキッカケを掴んだことだと思われます。

試行錯誤を繰り返し、整備してきたバリアフリービーチですが、ビーチが広大であることや車椅子が個々の利用者の状況に対応できていないことなど課題も多く、できることから利用者の意見を聞き改善して行きたいと考えております。

まもなく65歳以上の高齢者が20%を越える超高齢社会を迎えている今日、大洗の取り組みは特異なものでなく、福祉といった切り口だけでなく、「ちょっとした工夫でお金をあまり掛けずにできることからやる」こんな取り組みの姿勢が成功の大きな要因だったと思われます。

先日も、これらの活動が評価され栄えある「水辺のユニバーサルデザイン大賞2003」の大賞を受賞させていただきました。今後、更に充実した受け入れ態勢を整えて行きたいと考えております。また、これらの取り組みが町の中にも少しづつ浸透し、人にやさしいまちづくり研究会も立ち上がり、商店街の中に空き店舗を利用したお年寄りなどの憩いの場としてのホットサロンもオープンをしました。地域福祉と商店街の振興発展を目指した2年目の活動を徐々にではありますが展開しております。

  

  

子どもサーフィン教室

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海の町の更なる発展を目指す「大洗海の大学」の創設

更なる大洗町の発展を目指し、大洗特有の海の文化を鮮明にしたまちづくりの展開が重要と考え、その一つの施策として各種産業の連携や町民との協働による大洗のステイタス性を高める総合的地域振興策として各種体験のできる海の学校「大洗海の大学」づくりを進めております。

奇しくも今日的課題として、子ども達の体験活動の不足や既存観光の行き詰まりが叫ばれ、国においても奉仕活動・体験活動の推進や、地域の方々との交流やまちを楽しむ体験交流観光に力を入れた「都市と農山漁村の共生と対流」を掲げ、国土交通省でも海辺の自然学校の推進を図っているところです。

海の大学の運営は、これまでの体験活動を推進してきたメンバーが中心になったNPOで運営することとしております。昨年9月30日「NPO法人大洗海の大学」が認証され、16年4月の開校に向け、現在試行事業や受け入れ態勢の整備に力を入れているところです。

  

  

子どもたちのカヌーによる川下り

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大洗海の大学の目的と役割

大洗海の大学の理念と目的は、新たな海辺の文化の創造であり、海の町大洗のあらゆる情報の発信であり、体験活動を通した海を核としたネットワークの構築と交流の促進による地域の活性化であります。役割としては、多角的な海の町の情報発信はもとより、人と自然、人と人の共生のためのプロデュース、海の町大洗の魅力創出のためのプロデュースであり、体験型プログラムの掘り起こしとそのプログラムの実施と指導者の育成が主な役割です。

運営方針としましては、大洗の恵まれた環境を生かし、教育的側面だけでなく観光や福祉的側面も積極的に捉え多角的に取り込むこと。対象者は青少年からシニア層までの広範な世代を対象としております。また、宿泊施設やエージェントとの連携による体験型商品の開発、ボランティアの養成や専門的指導員の資格取得講座も開設を予定しております。更に、各教育委員会や学校、企業研修等組織体をも顧客と考え、将来的には修学旅行等の受け入れも視野に入れております。

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多様なプログラムによる大学の運営

大洗海の大学は、企画管理部、情報発信部のほか浜学部、風学部、波学部・・・といった9学部で構成され、まち探検学科やヨット学科、干もの学科、波乗り学科などユニークな学部学科を開設し、その学部学科に地域のあらゆる方々に教授として登録いただくこととしております。漁師学科や船頭料理学科には漁業者、田んぼ学科には農家の方々にも参加を頂くこととしております。(学部学科は指導できる領域で増設)

大洗の海や川や沼、田んぼや畑そして町そのものを体験して様々な交流を楽しむ、子どもからお年寄りまで受講生も指導者も皆が出会いを楽しみ、大洗の自然を楽しみ何度も大洗にお越しいただく、そして住んでいただくそんな仕組みが大洗海の大学です。

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おわりに

全国各地で数々のまちづくりが展開されておりますが、やはり基本は地域の資源に立ち返ることであると思います。大洗町は海からのまちづくりであり、バリアフリービーチや大洗海の大学がその重要な施策であります。

しかし、大学の運営一つをとってもスタッフの確保、資金の調達、新たなプログラムの開発など多くの課題を抱えております。これらの課題をNPOや町民との協働により一つ一つクリアしながら進めて行かなければなりません。

現在、全国都市再生モデル調査「大洗海の大学を中心としたまちづくり調査」を国の採択を受け展開中です。これらの機会を捉え、課題の解決を図りながら、地域の方々の元気づくり、地域の元気づくりにつなげて行きたいと考えております。

是非、全国の多くの皆様に大洗での海体験、味覚体験、まち体験をご堪能いただきたいと思います。皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。

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