全国町村会

桧垣本猿楽は大いなる文化財産

大和能楽子どもフェスティバル

  

ちびっこ能楽体験

奈良県大淀町

2458号(2003年11月3日)  大淀町企画財政課 種田 知子

町の概要

大淀町は、奈良県の中央やや西より、紀伊半島のほぼ中心に位置し、豊かな吉野地方の緑と清流に恵まれた町である。

古くから吉野地方の玄関口として、また、大和盆地と紀伊地方を結ぶ交通の要衝としての役割を果たしてきた。古代から中世にかけては、吉野金峯山が山岳修験道の聖地として人々の信仰を集め、独自の発展を遂げる。今でも町内には山伏道の行場や渡し場などの史跡が残る。中世から近世にかけては、南北朝の内乱鎮静後、織田信長の配下であった筒井順慶による大和の統一があり、この地域も中央政権下に掌握されることになる。その後も、豊臣秀吉による支配、徳川家康による統治など政治的な変革が続く。明治以降、行政組織の改廃を繰り返しながら、大正10年2月に現在の大淀町が発足し、以後80年余りを経て現在に至る。

幹線となる国道169号線を中心に奈良市・和歌山市・大阪市などの主要都市との交通利便も高く、産業・交通・文化をつなぐ重要な位置を占めている。また、近畿日本鉄道吉野線が町の東西を横断し、都市部への通勤圏となるため、過疎化が著しい吉野地方にあって唯一人口増加が続いてる町である。

また、自然に恵まれた温暖な気候となだらかな丘陵地は、大和茶や梨・ぶどう・りんごなどの果樹栽培に適し、特に、梨は千葉県や鳥取県等に比べると遙かに小規模であるが、全国的に高い評価を受けている。

  

能楽座公演 能「安達原」

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まちづくりのスローガン

まちづくりにおいては、「住民参加による文化的で魅力ある町づくり」を基本理念に「吉野の未来へ躍進するうるわしのふるさと大淀」の実現を目指している。住民、地域社会、行政の三者が連帯し、協調することによって進めていく必要があり、住民のニーズが十分に反映され、行政がその事業推進において、常に自己啓発意欲と問題意識を持ち続ける体制を作らなければならない。

特に、住民一人ひとりが魅力ある地域づくりについて考え、行動できるよう、まちづくりに関する情報提供が不可欠である。広報誌の紙面の充実を図るほか、情報公開制度を含め、町民に対する積極的な行政情報の提供に努める。また、住民と行政が相互に思想を通じ合える双方向性の機能を持つホームページやニューメディアは、住民の評価、要望、理解の声の把握という広聴広報活動の強化が図れるものと考える。

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大淀町能楽プログラムのはじまり

その文化的具体例として、桧垣本猿楽を挙げることができるかもしれない。

さて、「猿楽」という言葉をご存知だろうか?

明治以降、猿楽は能楽と呼ばれ、能と狂言のことをいう。そして、この能楽は世界的な文化遺産として認められ、平成13年5月ユネスコの第1回世界無形遺産に指定された。

室町時代、本町桧垣本地区にも「桧垣本猿楽」として存在し、広範囲に活躍していたことが能面や文献から確認できる。この猿楽座は、室町時代から江戸時代にかけて約300年間「大和四座(やまとよざ)」(観世座、円満井座、坂戸座、外山座)とともに活躍していたとされる吉野猿楽のひとつであり、特に、囃子方に優れた人物を輩出したとされている。江戸時代になると幕府の統制から一族は、桧垣本の地を離れ、本拠地を江戸に移し、観世座の一員としての道を歩むことを選び、活動の場を全国に広げ、活躍する。反面、地元では衰退し、いつしか人々から忘れ去られていった。

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桧垣本猿楽の伝承

平成13年夏、奈良県主催で吉野地域の特性を活かした「吉野魅惑体験フェスティバル感動発見2001」が開催された。

周辺市町村に比べ、観光・歴史・文化資源に乏しい本町が、何を素材にすれば大々的な町の紹介イベントとなるのか、住民にとっても町再発見となるのかを考え、「桧垣本猿楽」を取り上げた。しかし、桧垣本猿楽は今まで一部の専門家や研究者にその存在を知られるだけで、地元でその存在を知る人さえいない状況であった。

認知されていない猿楽をどう広報するか、多くの人が持つ能楽へのイメージ(高尚すぎて難しく、わかりにくい)を少しでも払拭するため、広報誌やHPで情報提供し、町内の小学4年生〜6年生を対象とした子ども能楽体験、能楽ワークショップ、能楽座公演や各地に散らばっていたゆかりの品々の展示などを行った。フェスティバルが広域的であったため、予想以上に多方面からの来町や問い合わせがあり、多くの人々に先人達の業績と歴史的意義を認識してもらう好機となった。殆ど無からの出発であったが、偶然にも桧垣本が囃子方の芸祖の系図に記されていることが判明し、能楽座・能楽協会より一層の協力を得る運びとなった。初心者向けの演目は、能楽に関心のなかった人に感動を与え、再演を切望する声が起こり、次年度以降も「桧垣本猿楽」を文化財産として後世に引き継ぐため事業を継続することになった。

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キーワードは、「広めよう能楽の輪」

今まで埋没していた「文化財産」を顕彰し継承できる環境づくりのステップをどうすればよいか。初年度の経験を踏まえ情報発信と収集、普及と継承、連携と交流を柱とした、「広めよう能楽の輪 〜大和の国から世界へ〜」をキーワードに事業を計画する。

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平成14年6月「ちびっ子桧垣14本座」を創座

「桧垣本猿楽」を広く認知してもらうには、子どもが非常に重要な存在である。幼い頃から楽しく能楽に触れることはもちろん、その子どもとともに大人が興味を持ち、能楽を身近に感じてもらうことが必要であると考えた。

そのため、まず、小学校で能楽体験を実施後、もっと能楽を勉強したい子ども達を募集し、「ちびっ子桧垣本座」を立ち上げる。

体験は、子ども達にとって異文化に接する感があり、とても新鮮なのものに映ったようで、定員を超える応募となった。

第1期生は、22名の座員が毎月2回、2時間程度、能楽師の先生方も驚くほど熱心に稽古に励んでくれた。今年3月には卒業発表会を兼ね、伝統芸能を勉強する犬山市、名張市、月ヶ瀬村、山添村の子ども達との交流事業「大和猿楽子どもフェスティバル」を開催することができた。この交流は座員にとって、とても良い刺激と励み、そして自信となったように思う。

現在は、第2期生19名(うち11名が継続)が、来年の卒業発表会を大きな目標に活動している。最近では、地域のイベントへの参加依頼などがあり、「ちびっ子桧垣本座」の存在が広く認識されはじめ、また、ボランティアや後援会の発足により、「座」に対するサポート体制も整いつつある。

将来的には「座」を能楽公演の前座が務められるまでに育て上げ、室町時代の「猿楽桧垣本座」の再現を目指したい。

  

ちびっこ桧垣本座・仕舞「鶴亀」

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能楽ネットワークの構築の提唱

ユネスコの世界無形遺産に指定された能楽の祖が奈良県であるにもかかわらず、能楽に関するネットワークが整備されていないことに着目する。能楽の歴史的意義や芸術的な魅力の再認識と吉野猿楽・大和猿楽四座や能楽に関する奈良県ネットワーク構築の提唱と奈良県が能楽の発祥地であることを国内外にアピールすべきである。このような思いから、昨年夏、能楽師・奈良県・四座ゆかりの首長(川西町・観世座、斑鳩町・坂戸座)に協力いただきトークセッションを実施し、出演者全員で今年度に第1回「大和猿楽サミット」を斑鳩町で開催することを取り決め、現在準備しているところである。

  

トークセッション(H14年8月)

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能楽愛好者を増やそう!

長期的な能楽愛好者の増加を目指し、幼い頃から能楽に親しんでもらうことで能楽をもっと身近なものとし、将来的にはその子ども達が能楽愛好者の一員となるよう、学校の総合学習での取り組みなど、積極的に不特定多数の子どもを対象とした能楽体験の事業を展開していく。

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イメージの定着が必要!

平成16年6月には奈良、和歌山、三重の三県に跨る「紀伊山地の霊場と参詣道」が、ユネスコの世界有形遺産に登録予定されている。有形遺産と無形遺産を融合させ、神秘的な吉野と能楽を組み合わせた事業を民間と共同開発し観光事業化していきたい。そして、誰もが気軽で気楽に能楽を楽しめる町のイメージを定着させ、町民の誇りと郷土愛を醸成させていきたいと考える。

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今後の展開

事業を進めるうちに、地域の人たちにとっても「桧垣本猿楽」が自分たちの大切な遺産であるという意識が強まり、行政と一緒になり一連の事業を盛り上げてくれるまでになった。また、この事業を展開することでマスコミに多数取り上げられ、不特定多数の方々に本町をPRする機会になったのではと思う。

桧垣本地区を祀る八幡神社の関係者が改めて神社のルーツとその歴史を調べ、能楽師による奉納演奏を主催したり既存の祭礼に猿楽を加味する計画をたてるなど、積極的に猿楽伝承のための行動を起こしつつある。

桧垣本猿楽を活用した事業が起爆剤となり、地区おこし・町おこしの気運が高まり、地域活性化のために、地区の歴史文化や特色を生かした地域づくり、交流活動が始まり、多種多様なイベントを繰り広げている。

今後も、この地域づくりの機運を町全体に波及させ、住民と協働で本町の基本理念「住民参加による文化的で魅力的なまちづくり」の核となるよう、「大淀町能楽プログラム」を発展させていきたい。また、単なる町のイベントに留まらないよう「広めよう能楽の輪」を実践していきたいと考える。

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