全国町村会

雪と共に歩む村づくり

  

岩手県沢内村

2454号(2003年9月29日)  沢内村産業振興課 課長補佐 内記 和彦

村のかたち

人々の生活様式は、暮らしている地域の自然環境や社会条件、歴史に由来します。私たちの沢内村も同様ですが、特に豪雪といった厳しい自然環境に由来している点が大きな特徴といえます。先ずは、村を理解して頂く前提として、村の概要から紹介致します。

沢内村は岩手県の南西部に位置し、四方を奥羽山脈に囲まれた高原性の盆地で西側は秋田県境となっています。村の形は南北に長い長方形で東西10q、南北28q、面積は286平方kmで、村の中央部を東北一の大河である北上川の中で最大の支流である和賀川が流れており、その川を挟んで22の集落があります。村の人口は、3,974人で、昭和30年の6,713人をピークに減少しています。

気候は、年平均気温9度、降水量2,500oと冷涼多雨であり、特に積雪量は、少なくなってきたとされる今日でも2メートルを超え国の特別豪雪地帯に指定されています。

村の歴史は豪雪と凶作との闘いでしたが、その中で培われた逞しい村民性は、激動する社会にあって「保健医療の村」そして「治雪・活雪・親雪の村」を創りあげる原動力となっています。

村の基幹産業は農林業と畜産を中心とする第一次産業であり、稲作を主体とした農業を行ってきましたが、昭和50年代から冷涼な気候を生かした花卉栽培が盛んとなり現在では米に匹敵する生産額となっています。また、特別養護老人ホーム等の福祉関係の仕事に従事する人も多くなっています。

  

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包括医療体制の原点

2mを越す豪雪と半年にも及ぶ長い冬は、村民の健康に重大な影響をもたらしてきました。こうした状況を打開しようと、沢内村民は長きにわたり努力を重ねてきました。その努力を大きく花開かせたのが、昭和32年に村長に就任した深澤晟雄村長でした。深澤村長の基本理念は、その当時多くの自治体が産業振興に重点目標を置いていた中にあって、「生活環境の整備がない限りいかなる施策も実行性は乏しい」とし、先ずは自分たちの命を守り、あらゆるライフステージで相応の健康を保ち自然死を遂げることがきるように、というものでした。

この理念の下、具体的な地域課題を見出すために、各地域で座談会を実施するとともに、婦人会や青年会、老人クラブ等の組織での話合いを積極的に行いました。そのような取り組みから、住民総意の課題として掲げられたのが、「豪雪・貧困・多病」の3つの障害の克服でした。

豪雪と貧困が病気を多くしているといった関係を断ち切るために、先ず行ったのが冬期間の交通確保でした。住民自らが(今でいえばNPO)が冬期交通確保既成同盟会を組織し、お金を集めブルドーザーを借り上げ除雪をすることによって、諦めていた冬期間の交通が可能であることを実証したのです。この実績が、その後の行政による除雪体制の整備へと繋がりました。また、夏にはそのブルドーザーを水田の開発と整備に用いることによって、米の増産が図られ農業所得の向上に結びつけることができました。

こうした住民総参加の取り組みと相まって、保健と医療、住民と行政そして病院が一体となった地域包括医療体制、いわゆる「沢内方式」が形づくられ、岩波新書で「自分たちで生命を守った村」として紹介されるに到りました。

包括医療の構成要素は、健康増進、病気・けがの予防、病気の早期発見、治療、そしてリハビリとされます。これを有機的に実行していくために、村では健康管理課を村内唯一の病院である村立沢内病院内に新たに設置し、課長を病院長としました。健康管理課では、全村民の生まれてからの健康情報が盛り込まれたカルテづくりを行い、それぞれのライフステージにおける検診や健康情報を提供するとともに、病気の早期発見や罹病した人がよりよい治療を受けられるように取り組みました。

また、日本で初めてと言われる地域保健調査会を隣の湯田町と組織し(名称は西和賀地域保健調査会)、地域包括医療の推進母体としました。調査会では健康づくりの基盤となる住宅の改善運動も推進しました。昭和30年代以前の村の住宅は、茅葺屋根の窓の殆どない造りでした。このため、日光は入らないが隙間風は入るといった環境のため冬は暗く寒く、肺病やくる病が多発しました。こうした状況を克服するため住宅改善研究会をつくり、具体化されたのが、雪が自然に落下するように東西に勾配のある屋根を設け、日光を入れるために南側に大きな窓を設けた住宅でした。それを、全村に広めたのです。現在の住宅のほとんどが、その時の設計思想を取り入れたものとなっています。

このような取り組みによって、全国に先駆けて乳幼児死亡ゼロを達成するとともに、4千人程の村で百歳以上の高齢者がここ10年程の間に6人も誕生しています。

  

包括医療の推進拠点・村立沢内病院

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雪を利用した新たな展開

住民が一丸となって積極的な課題発掘と設定を行い、真摯な取り組みによって健康な村となり、住民一人当たりの所得も、かつて県内で最下位だったものが町村部では上位に位置するまでになりました。

雪については、昭和50年代には冬も夏とほぼ変わらない交通が確保されるようになり、「やっかいなもの」から「貴重な自然資源」として捉えることができるようになりました。具体的な切っ掛けは、昭和60年度に国(当時の国土庁)の委託事業として策定された「克雪地域づくりモデル計画」です。

この計画の中心施設と位置づけられたのが、雪国文化研究所です。それまで雪については克服するといった視点で対応してきましたが、雪を産業に活かす「活雪」と雪に親しむ「親雪」の視点を加え、「治雪」「活雪」「親雪」の3つの視点から地域の活性化を図ろうというもので、それぞれの分野の連携を図るとともに、住民生活の基礎となる雪国沢内の姿を明らかにし、自分たちの村のことを知る拠点として雪国文化研究所を整備しました。

雪国文化研究所では、村に降り注ぐ雪の全体量とその性質調査、雪国ならではの生活や文化の調査、県や農協など関係機関との協力による産業面での活用研究、そして全国の雪国地域との連携促進などを行ってきました。

これらの取り組みは様々な成果となって現れています。活雪の分野では、平成元年に整備した雪を冷熱源とする雪室(雪で冷やす大きな冷蔵庫)は、花卉の出荷前予冷や球根保冷による適時栽培などといった利用により、ユリでは東北1位の産地となるなど花卉栽培の振興に役立っています。雪室の利用が年々拡大してきたことから、平成7年度、村の北部に雪室を新たに整備したのに加え、平成12年度には全国で初の試みとなる廃止トンネルを利用し雪室化した「雪っこトンネル」を整備しました。この雪っこトンネルは、これまでの花卉での利用以外の新たな活用法として、産地間競争など厳しさを増す米販売における有利性を持たせるための先導的な施設として整備したものです。今後は雪っこトンネルの成果を生かし、雪を冷熱源とした大規模な米倉庫の実現を目指した、雪を生かした稲作振興策を検討しています。

親雪の分野では、昭和63年8月、全国に先駆け、「真夏の雪氷まつり」を開催しましたが、今年で16回目とすっかり村に定着したイベントとなっています。また、民間では、青年会活動を発祥とする雪かきボランティア「スノーバスターズ」の結成が挙げられます。スノーバスターズは、全国的にも注目を浴び、数々の表彰を受けその活動は岩手県全域そして全国の雪国に波及しております。

  

「雪っこトンネル」の使い始め式

  

「雪氷まつり」を楽しむ子供たち

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先人の財産を今後も

沢内村は豪雪という厳しい自然条件であったために苦労してきたことが多くありました。しかし、村の先人たちはそれを乗り越え、更に活用の道まで切り開きました。こうした取り組みに、平成13年度全国農村アメニティコンクール最優秀賞受賞など、全国から種々の評価を頂いております。現在、小規模自治体を取巻く環境は大きく変わろうとしていますが、沢内村という「土地」はこれからも続きます。雪とともに、この地域で培ってきた人々の営みや財産を今後も繋げていかなければなりませんが、そのためには、今一度「自分たちで生命を守った村」を検証し今後の見通しを立てることが必要となっています。

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