全国町村会

「創る」伝統をまちづくりへ

  

創作の森

福井県金津町

2450号(2003年8月25日)  金津町総務課 西川 佳男

金津町の概要

金津町は、福井県の最北部に位置し、北部は標高30m前後の丘陵地、東部は刈安山、剱ヶ岳を結ぶ標高500〜600mの稜線が続き、南西部は福井平野の一部を構成する田園地帯が広がっています。また、町の中心部には県内5大河川の1つである竹田川が流れる人口約18,000人の緑と水の豊かな町です。

主要交通は、JR北陸本線、北陸自動車道、国道8号が町の南北を貫き、特にJR芦原温泉駅、金津インターチェンジは嶺北の玄関口として重要な位置を占めています。 

金津町の歴史は古く、縄文時代にさかのぼります。町のいたるところで貝塚や縄文人の住居跡から土器が出土しています。町の西部には北陸最大規模の古墳時代後期の横山古墳群があります。これは15基の前方後円墳を中心とする200以上の古墳群で越前王権の墓所といわれています。

また、北部、西部の丘陵地には古代製鉄の炉跡(タタラ)や鉄滓跡が数多く発見、竹田川の川底からも鉄塊などが見つかっています。古代人はこの地で砂鉄から鉄を製造し、その鉄製品は竹田川の港から送り出されていました。このことから金津という地名は「鉄を積み出す川港」に由来して生まれたと伝えられています。

室町時代には蓮如上人が吉崎に浄土真宗の拠点を置き、江戸時代には北陸道の要衝として旅籠屋、問屋、妓楼が軒を連ねる宿場町、商業の町として栄えました。この頃、参勤交代の殿様が宿泊される際に本陣に箸や食器などの日用品で飾り物を作り、もてなしたのが「本陣飾り物」です。この本陣飾り物を作る伝統は370年あまり経った今も金津祭りに欠かすことのできないものとなっています。

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金津創作の森から文化を発信

このような金津町には古代から培われた「創る」文化をテーマに豊かな自然と文化の調和の中から地域の魅力と個性を生み出すのが金津創作の森です。平成6年度に基本構想、平成7年度に基本計画を策定したこの事業は事業費約22億円を費やし、平成11年7月にオープンしました。

創作の森は金津インターチェンジに近い緑の中にあります。約20ヘクタールのこの森には作品の展示やコンサートが行えるミュージアムとギャラリー、レストランからなるアートコアを核として、陶芸やガラスの創作が体験できる創作工房、ガラス工房があります。また水辺の広場には芝生広場と池を巡るように散策道が整備され、自然環境に恵まれた森の中には、竹細工など様々な分野で活躍する創作家7人のアトリエが点在しています。

この全国から集まった入居作家たちはこの森の主役のです。自らの創作活動を行い文化を発信するとともに、地域の人たちへの体験講座も開講しています。現在、入居作家たちによる講座はガラス、陶芸、ろうけつ染、竹細工が行われています。地域の人たちが気軽に創作活動に参加することで、造る文化の広がりに貢献しているのです。

創作の森では新しいかたちの展覧会アート・ドキュメントをオープン以来毎年開催しています。これまでの美術展は作品を置いて見る形式がほとんどです。しかしアート・ドキュメントは創作の森に関係する大きなテーマをもとに公開制作をメインとした展覧会です。造る姿を見て、出来上がった作品を見る。創作の森から発信する新しい展覧会の形です。

アート・ドキュメントで作家たちが造る作品の多くは屋外で公開製作されます。あるものは激しく、あるものは静かに森の一部として溶け込んでいます。現在その数は8作品となりました。創作の森のテーマに共鳴した作家たちの作品だからこそ自然との調和が保たれているのです。

アート・ドキュメントが開かれるたびに森には新しい作品が増え、森は顔を変え、成長していきます。このことが来場者の五感を刺激する仕掛けとなって、この森から、自然の中で造る感動を、新たな文化を地域に、全国に、そして世界に向けて発信しています。

  

鉄の彫刻(青木野枝・作)

  

土壁(辻けい・作)

  

グラスアートドキュメント98

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交流の場を広げる(イベント:森から町へ)

創作の森では、アート・ドキュメントのほか、入居している7人の作家たちが様々なイベントを企画し、開催しています。これらの活動は、その活動を支えるボランティアの人、企画展を鑑賞する人、創作工房での講座に参加する人、そして森の散策などを楽しむ人たちの交流の場ともなっています。

芸術作品はまだまだ多くの人になじみが薄いものです。そこで創作の森では、「福井の美術ナウ森から町へ」を一昨年開催しました。これはJR芦原温泉駅前の空き店舗などを利用し、町の中に作品を展示したものです。

金津町では、江戸時代から続く金津祭での「本陣飾り物」があり、毎年町内18ヶ所に飾り物が展示されます。この本陣飾り物を見て歩くことも金津祭の楽しみとなっています。町民の日常的な居住空間の中に作品が展示されたことは、本陣飾り物同様、町民にスムーズに受け入れられ、町民と芸術との距離を縮める効果がありました。

また、創作の森では子どもたちの体験の場を多くつくっています。陶芸、ガラス作品、竹細工、ろうけつ染めそして自然とのふれあい。創作の森は、子どもたちにいつも驚きと新鮮な発見を提供し、創造性を育んでいきます。

このほか、創作の森では森の自然を生かしたプロムナードコンサートや国内外の創作家の公開製作によるワークショップ、クラフトマーケットなどが開かれています。芸術により親しんでもらい、より身近に感じてもらう仕掛けを次々と行っています。

  

アートマーケット

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「創る」文化を新しいまちづくりに(最後に)

創作の森が完成してまだ5年。新たな文化の成果は生まれてきてはいません。人づくりにはとても時間がかかり、その成果は目には見えにくいものです。創作の森の成果は、長い目で見なければ出てくるものではありません。

創る文化は、本陣飾 り物にみられる地域の協働の輪や子どもたちに創造性を育む刺激を与えていきます。創る文化は芸術作品を生むだけではありません。未来を、幸せを、人間らしさを、やさしさをそして生き生きとした町や人を創る力となります。

ものを造り、自然と触れ合う子供たちの瞳は輝いています。この造る喜びから刺激を受けた子どもたちからは、斬新なアイディアや新しい文化が生まれ育っていきます。

金津町は、鉄をつくる、本陣飾り物をつくるなど古くから創る文化が育まれています。創作の森は、この創る文化を未来へつなぐ魅力あるまちづくりの拠点としての役割を果たしています。 

  

水辺の広場

  

金津祭本陣飾り物

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