全国町村会

住民と行政のハーモニーがまちの元気

  

住民自ら修復した無料休憩所「顆山亭」

岡山県勝山町

2447号(2003年7月21日)  勝山町まちづくり振興課 岩本 壮八

勝山町の概要

勝山町は、岡山県の西北部、真庭郡のほぼ中心に位置し、面積183.8平方km、人口約9,300人の小さな城下町です。中国山脈に源を発する県の三大河川である旭川とその支流新庄川・月田川に沿って開けた町の歴史は古く、郡内の政治・経済の中心地として重要な位置を占めていました。また、出雲と大和を結ぶ出雲街道を通じて、人と文化が行き交う宿駅としてもにぎわっていました。鉄道が開通する昭和初期まで、長さ8間、幅8尺の高瀬舟が物資輸送の主流を占めていました。勝山町は高瀬舟の最北端に位置する発着場として、最盛期には30隻あまりの舟が行き交っていました。勝山からは年貢米を中心に木炭や薪、林産物などが備前の国(岡山市)へと運ばれ、帰路には塩や干物などが持ち込まれていました。その行程は1週間を要していたそうです。現在は、山陰と山陽、関西と九州を結ぶ高速道路網のクロスポイントになっており、中国道落合IC・北房ICから約20分、米子道久世IC・湯原ICから約15分という恵まれた交通環境にあります。

総面積の85%が山林という豊かな自然を残すのどかな山間地域の勝山町は、杉やヒノキの素材生産だけにとどまらず、原木市場2社、製材所18社、製品市場1社など、生産から流通までのシステムが町内に集積されていることから「木材の町」としても知られています。

町の中心市街地には、往時の面影を残す白壁に格子窓、なまこ壁の集蔵庫、高瀬舟発着場跡など、数多くの歴史資産が残されています。市街地の背景にはお城山、時を告げる太鼓楼があったとされる太鼓山を望み、前には清らかな旭川が滔々と流れ、川面に映る様は一幅の水墨画のような景観となっています。この地区は、昭和60年に岡山県下で最初となる「町並み保存地区」として指定され、まちづくりの大きな柱として町並みの保存、整備を行ってきました。

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“まちづくり応援団”の産声

古い町並みを残そうと始まった「町並み保存事業」では、民家の修復を中心に公衆便所の設置や橋梁修景などの基盤整備を行政主導で進めてきました。昭和60年から県の補助を受け、5年間で総事業費約1億円が投入されました。しかし、民家の修復事業においては、決して順調といえるものではありませんでした。昔ながらの古い家は使い勝手が悪いうえ家の中も暗く、冬は寒いなど、決して快適な住環境ではないからです。建物の近代化が進む時代の中で古い建物を保存しなければならないという煩わしさに、手を広げて大歓迎というような雰囲気ではなかったように思います。町では、町並み保存への理解と意識向上を図るため、住民代表を選定しての「推進委員会」組織を立ち上げて協力依頼を試みましたが、自主的な盛り上がりとまでは至りませんでした。

第1次の整備事業終了から3年後の平成5年度には再び「整備地区」として県に採択され、同9年度まで家並みの修復を中心に約1億円の事業を行いました。

この5年間の事業では、前回に比べて住民の意識に大きな変化を見ることができました。この事業が始まる以前にはなかった観光客の歩く姿が年を追うごとに増えだすと、まちづくりに対する住民の意識が少しずつ変わり始めたのです。「これだけ観光客が来るんなら、何かできることはねぇじゃろうか」、「地元で暮らす自分たちにとって、住みやすくて楽しい町こそ観光客にとってもええ町じゃろう」等々の声が出始め、平成8年、地元有志による「町並み保存事業を応援する会」という自主組織が産声を上げたのです。以来、毎月1回の定例会を基軸として活動を協議しています。

  

白壁と格子窓の町並み保護地区

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行政はまちづくりの“黒子役”

この会で最初に取り組んだのは、町並み保存事業を利用しての「まちづくり拠点事業」でした。会が地区内の古い空き家を借り受け、会員自らの勤労奉仕による修復を行い、約7ヶ月間を経て平成9年4月に無料休憩所「顆山亭」としてオープンさせました。ここは観光客と住民がふれあう休憩所というだけでなく、イベント空間として、地元住民のノミュニケーションの場としても利用されています。観光客に対して近所の主婦たちが交代で湯茶の接待をし、会話もはずむ“勝山の温もり”が伝わる拠点になっています。

次に行った事業として、今ではすっかり“勝山の顔”として定着している「のれん」によるまちづくりを会と行政の連携で推し進めてきました。現在、町並み保存地区内の民家・商家の軒先には個性的な76枚の「草木染めのれん」がたなびいています。もともと地区内にある会員の事務所に西日が差し込み、その日除けとして始めたものですが、そこに十数年前にUターンしていた草木染めの専門家が存在したことが大きな推進力となりました。その輪は瞬く間に広まり、町並み保存地区の古い町並みにそよぐ様は「のれんの町」として新たな“顔”となっています。

また、会の独自事業として、平成11年には地区内に朽ち果てようとしていた「つるべ井戸」の復元を行い、毎年行われる天神祭に協賛して「クイズ大会」を開催するなど、住民が主体者となって若者が地元に残りたいと思えるような楽しい故郷づくりを行っています。こうした動きに行政は“縁の下の力持ち”の黒子役に徹しながらまちづくりを推進しています。

  

  

各家々にかかる“草木染めのれん”

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住民の元気がまちの元気

勝山には大きな祭りが3つあります。

10月19日・20日に行われる秋祭りには、近郊の神社から御輿が繰り出し、町中を練り歩きながら神詣でが行われます。この祭りを祝って、各町内会からは山車に屋形を組んで飾り付け、鐘や太鼓を打ち鳴らしながら祭りを盛り立てます。夜になると一変して山車をぶつけ合う「けんかだんじり」として観客を魅了してくれます。この祭りは、1年間の憂さを山車に託してぶつけ合う、まさに“男の祭り”として開催されます。

11月には町内の子供から高齢者まで、町民の皆さんに楽しんでいただく“町民の祭り”である「ふるさと勝山もみじまつり」が開催されます。

そして、3月には“女の祭り”である「勝山のお雛まつり」が開催されます。この祭りは平成11年に始まったものですが、町並み保存事業を応援する会のメンバーが中心となって企画し、地域を巻き込んだ一大イベントとなりました。毎年3月初旬に開催されるこの祭りには、5日間で3万人を超す観光客が訪れるようになり、受け入れ側としてもうれしい悲鳴です。最初のきっかけは、地区内にある文化元年(1804)創業の造り酒屋が行っていた「土雛展」が淵源となりました。意外にも多い観光客の姿を目の当たりにした地元住民が、各家庭に眠っているお雛様にも日の目を当ててあげようと取り組んだのが始まりでした。この輪はたちまち広がり、保存地区に接する新しい商店街も参加し、現在では約1km区間の中に160軒を越える商家や民家が飾ってくれるようになりました。行政側も、土・日曜日にはボランティアで職員総出の体制を組み、平日は執務の合間を割いて駐車場や会場の案内役をしています。こうしたイベントへの取り組みは、住民意識や地域経済にも少なからぬ波及効果を与えるものとなっています。おもてなしのために玄関先へ山野草を飾ったり、観光客向けの商品構成をしたお店が増えたり、土産物店、飲食店が相次いでオープンするなど、計り知れない好影響を及ぼしています。

  

けんかだんじり

  

勝山のお雛まつり

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今後の展開

勝山町では町政の大きな柱として「交流人口50万人」を目指しています。しかし、どこにでも見られるきれいに整備された観光地でなく、再び訪れていただける“勝山ファン”作りをモットーにし、見せかけのない本物の町づくりが大事だと考えています。地域の日常が分かる、生活が見える“温かさの伝わる観光地”を、行政と住民が手を携えていくことが基本であると思います。古い町並みという観光資源と、その町並みを愛する人たちが介在することによって絶妙なハーモニーを奏でる、そんな魅力と元気のある町にしたいと思います。「地域活性化への活動は地域住民からの発案で行政を動かすという運動でなければ長続きはしない」との住民の気概を最大限に尊重し、行政はその応援団長として事業の推進を図っていくことにしています。

現在、町並み保存地区の中心部に明治初期に創業した醤油蔵が町に寄贈されたため、体験交流施設としての活用を住民組織で検討中です。この施設をファン拡大の場とし、あわよくば地区内への定住が促進されないかと期待しています。“勝山でしかできない”、“勝山だからできる”まちづくりをレベルアップし、質の高い文化情報を発信できるようにがんばっていきたいと思います。

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