全国町村会

地方自治とともに30年

岩手県町村会長 藤沢町長 佐藤守

藤沢町は、岩手県を南北に縦断する北上山地の最南端の丘陵地帯に位置し、町の南西を大河北上川が流れる人口1万1千人の東北の典型的な中山間地の町である。

高度経済成長の歪みにより、全国の農山村に過疎化の波が押し寄せていた昭和47年、中学校で教べんをとっていた私は、一転して町の助役に就任することとなり、突如として地方自治、地方行政の現場に足を踏み入れた。以来助役2期を経て、現在町長6期目となるが、常に住民主体を基礎としたまちづくりを進めてきた。

町内全域に自治会を設立するとともに町職員の地域分担制を設け、自治会の地域懇談会を開催、その上で住民の手によって作られた地域づくり計画をもとに町の総合計画を策定するなど、常に地域の進むべき道を、住民の皆さんとともに模索してきた30年であった。

先頃、地方分権推進委員会が最終報告を行った。国と地方は上下主従から対等協力の関係へと改編されたものの、地方自治が自立した「小さな政府」となるための自治体の強化再編に向けての整備については、国と地方の財源配分など、さらに多くの課題が残されている。

昨年11月、福祉国家として知られるスウェーデンを訪れる機会を得た。私がこの北欧の福祉国家に思い、問い続けたものは、世界一高い税金を負担する理由と、そこまでなぜ行政を信頼できるのかというところにあった。

現地に見た答えは、かつての「大きな政府」と、その国家による画一と集権の「貧困からの救済」型の福祉を大きく改革し、市民生活により近い基礎的自治体である市町村に徹底して判断と責任を委ね、「小さな政府」にしたところにあった。「自立支援」型の社会サービス、つまり地域ニーズに応えながら良質な福祉医療サービスを、効率的に提供する社会システムを自らのものとした「権利」と「自治」をセットにした市民福祉の営みがそこに隠されていたのである。

古今東西を問わず高齢化の進展、弱者の一般化は、国家の目標、価値観、さらには家族形態機能にも大きな変化をもたらし、地域社会の復権など地方の時代へと大きな地殻変動を創り出した。時代の変化に応じて社会システムをつくり変えることは、まさに政治の任務であり、スウェーデンから学ぶべきは、福祉そのものにあるのではなく、分権的、民主的な活力ある地方自治を築き上げた地方制度改革の歴史のなかににあった。

今にある人間社会の変貌が創り出した高齢化社会を地方分権型社会という新しい社会システムの中に軟着陸させ、「自立支援」という福祉の社会化の取り組みの中に、福祉を「新しい文化」として創造するという新しい意義を学び見た思いであった。

分権社会の創造は、この新しい時代の潮流としてあるものであり、日本が日本であり続けるための基本として最大のテーマであり、その留まりはあり得ないのである。

この新しい時代環境の中に、「地域の自立」に向けた新しい自治のかたちを創り、目標とする地方分権型社会に向けた「新しい自治の創造」は、このまちづくりの取り組みの中にあることは確かなのである。

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