全国町村会

コミュニティーからの発想

奈良県吉野町長 福井良盟

21世紀の幕開けの年2001年を、私は100年という世紀の変わり目ではなく400年に1度の大きな節目ととらえています。400年ごとに大きな時代の変革を迎えているということです。大きく変わろうとしているこの時代、吉野町はどんなまちになっていくのでしょうか。

私たちのまちは、都会に比べれば地縁的コミュニティーがまだまだ健在です。しかし、そこで民主化が実現しているかといえば必ずしもそうではありません。民主化の実現とは、住民の総意によって共同体が成長していくことだと考えます。

奈良県の中山間部に位置する吉野町にとって、正直なところ、過疎からの脱却はもはや行政だけの手に負えるものではなくなっています。むしろ田舎で暮らすことを魅力的と思えるようなまちにするにはどうしたらよいのか、そのことを考えるようになりました。

世は正にIT時代、右を見ても左を見てもパソコン、インターネット。機械のもつ可能性ばかりを追求しているのが今の世の中です。避けては通れない時代の流れですが、この時代だからこそあえて人のもつ可能性に期待してみたい。人のもつ可能性に敵うものはないと思うのです。

住民のもつ可能性をもっと引き出していきたい。ともすれば決められた枠組みのなかでしか動けない役所の職員の発想とは違った新鮮なアイディアが住民のなかからでてこないか、そんな期待があるのです。情けないことに自分自身も枠組みの中にどっぷりと浸かってしまったひとりなのですが。

人間は基本的に真面目で、前向きで、創造力に富んでいます。また、常に仲間を意識して、全体の中に自分を位置づけています。しかも、このような特性は、真剣になればなるほど増幅され発揮されます。活動的なコミュニティーが生む発想に期待するのはそのためなのです。

まちづくりに参加して自分たちの意見を交換すれば、たとえ結果が自分の考えどおりではなくても、その企画は自分も参加したことであり「わがまちづくり」となるのではないでしょうか。まちづくり会議を立ち上げましたが、今のところは「自分たちの提案を町が取り上げてくれない」という不満の声も聞こえてきます。すぐに結果につながるアイディアに越したことはありませんが、まちづくりの話し合いに参加したということが大切だと考えます。こんな町に住みたいという意思を住民それぞれが持つこと、そしてその意思を表現できる場があることが町の魅力につながるのではないでしょうか。

今年度から「区の花整備」という事業に着手しました。吉野といえば全国に名高い日本一の桜の名所、だから吉野町の花は「桜」、そんな定着したイメージをみなさんもっておられます。しかし、地元の吉野山以外の地域では、「吉野山の桜が自分たちの花」という意識は低いのです。そこで町内各地区で自分たちの住んでいる地域の花を決めていただき町が支援していくというのがこの事業です。

区長さんなり、町会の役員さんが「区の花」を決めて区民の方を説得するというやり方が従来の方法であれば、今回は区民が話し合いのなかから自分たちの花を決めていく。今まで聞けなかった人の話を聞く機会にもなるでしょう。そして花づくりの中からコミュニケーションを深めていく。話し合いの中でおもしろい意見がでてこないか、期待しているところです。

変革の時代、このまちがどう変わっていくのか、その舵取りを任されている自分の責任の重さに押しつぶされそうになりながら、その役目をしっかり果たそうと改めて思う毎日です。

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