全国町村会

「豊かな森の恵みとふれあいの森春日村」に生まれて

岐阜県春日村長 樋口直嗣

「天下分け目の決戦」の地、関ケ原に接し、日本7高山の1つで、薬草の宝庫である霊峰伊吹山(1,377メートル)の東麓に位置する春日村は、自然に恵まれた静かな山村です。人口1,785人、面積112.44平方キロメートルのうち98パーセントが森林で、私が生まれてから離れたことのない自慢と誇りを持つ村であります。

春日村には、国歌「君が代」の歌詞に詠まれる「さざれ石」が実在し、県の天然記念物に指定されております。

この「さざれ石」にまつわる郷土の伝承として、平安時代、文徳(もんとく)天皇の皇子惟喬親王(おうじこれたかしんのう)は、椀生地(わんきじ)(当時の産業)を司る役目にあり、藤原朝臣(ふじわらあそん)石位左衛門(いしいざえもん)はこの惟喬親王に仕えておりました。親王の命を受けて、椀生地に用いる木材を探し求め、春日谷に入り、その良材を発見し、一族と共に移り住みました。今も春日村には藤原姓90戸が現存しております。

石位左衛門は春日谷から近江、京都へ行き来する際、古屋笹又地区の谷間で渓流に露出する「さざれ石」を見て、「珍しい石、目出度い石」と詠んで奉った歌が、『わが君は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで』の1首であります。

さざれ石は、伊吹山の麓にあり、学名を石灰質角礫岩といいます。これは石灰石が長い年月の間に雨水で溶解され、そのときに生じた粘着力の強い乳状液が次第に小石を凝結して、巨岩となり地表に露出し苔むしたものです。

この「さざれ石」が春日村に実在することに大きな誇りをもち、「村民個々人は小さくとも団結、協力し、仲良く暮らす村」を村民の合言葉として村づくりを進めております。以下、その他村づくりの主な施設を紹介します。

1、森の文化博物館、染織工房アトリエののの建設

森の文化博物館は、森と人との関わりの歴史を再評価するもので、村の隠れた生活文化を引き出し、発信する施設で長者の里内にあります。また、隣接の染織工房は、森で採取した薬草等を利用し、自分で染め織りをして仕上げる体験学習を行っています。

2、かすがモリモリ村の建設

平成9年4月にオープンした施設で、国の補助事業をうけたものです。(建設省、農林省、厚生省、自治省)

施設は、「食と健康の拠点施設」のテーマのもと、村民の健康、保健、医療、福祉を目的としたもので、薬草園、薬草サウナ、薬草風呂、薬膳料理のレストラン、映像音楽室、茶室、売店、交流室を備えた、リフレッシュ館です。

リフレッシュ館の管理運営は全面的に第3セクター「サンシャイン春日」に委託し雇用の場の確保に努めています。

併設の施設として、診療所、保健センター、デイサービスセンター、在宅介護支援センターがあり、森の中の村でモリモリと元気になってもらうのが願いであります。

このように地域資源を活かした自然との共生の中で、人にやさしく長寿を与えてくれる森に恵まれた村に生まれ、昭和31年から村職員として奉職し、昭和58年から村長として頑張っています。

国も地方も財政難、このことから人口の少ない村には、年々交付税が減額されています。今日の経済社会をつくったのは山村の森が生んだ木材を始めとする山の資源と人材であると自負しています。

都市の皆さん、「自分だけが便利であればよい」のでは、日本は勿論、世界は幸福にはならないと思います。まず我が国の都市と山村が共生し、より良く繁栄することが大切です。国は「小さな町、村は合併したほうがよいですよ」ですが、山村の村には、古い歴史文化が残っています。どのようにして尊い伝統を守っていくかが首長としての課題であります。

国家のために山村は大切な地域であることを、特に都市の人々に理解して欲しいと思っています。

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