全国町村会

食料自給率が問いかける

民俗研究家 結城 登美雄(第3013号・平成29年9月11日)

先月9日農水省は、6年連続して39%を維持してきた日本の食料自給率が、ついに38%に落ち込んでしまったと発表した。米の凶作で37%だった1993年度に次ぐ史上2番目の低さである。わずか1%のことを大げさに言うなかれ、という声も聞こえてきそうだが、食料自給率における1%は日本人127万人の1年分の食料消費量に相当する。

この38%という数字は全国平均値であるが、都道府県別でみれば北海道は200%以上、東北は100%を超える県が多い。そうした中で大都市圏域の自給率は低く、東京都は1%、大阪府と神奈川県は2%とあまりにも低く、足を引っぱっているようにさえ感じられ、それゆえか、都市の人々よ、自分たちの食を支えてくれている日本の農山漁村に対してどう向かい合っていくのかと問うてみたくなる。

農水省は自給率低下の要因は米の消費減少と北海道の台風被害による小麦やテンサイの不作にあるとしているが、それだけではあるまい。食を生産する担い手の減少と高齢化の限界があるのではないか。最新の情報によれば2017年の農業就業者は181万人で、漁業者16万人と合わせても200万人に満たない。私たちの食は全人口のわずか1.5%の人々によってかろうじて支えられているのが現状。しかもその担い手の66%が65歳以上の高齢者である。高齢社会日本の医療や介護、福祉や年金等については熱心なのに、一食として欠かせない食料を懸命に支えているのが高齢農漁業者であるという現実には政治も行政も国民も、なぜ真剣に向かい合おうとしないのか。かつてソクラテスは「国家にとって大切なものは何か」と弟子に問われ、「あらゆる必要の中で、最初にして最大のものは、生命と生存のための食料の供給である」と応えている。これを私流に言えば「食は最大の社会資本である」となる。それを軽んじている国にどんな未来があるというのだろうか。食料自給率が、この国の不安の根源を問うている。

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