全国町村会

集落の共同の心と力

民俗研究家  結城 登美雄(第2964号・平成28年6月27日)

縁あって福島県最北端の国見町に通い続けている。ここは人口1万人弱の地味な町だが、たずねるたびにこれからの地域づくりにとって大切なヒントが数多く内包されているところだと感じている。 国見町は16の集落(大字)が集まったところだが、どの集落でも旧村社はもちろん、数々の神社が健在であり、どこをたずねても社殿だけでなく、境内の樹木の手入れや草刈りがしっかりとなされている。 庚申塔や二十三夜塔などの石碑には花や供物が捧げられ、今なお住民と神社の絆が強いと感じさせられた。

例えば豊富な湧水によって集落が形成されてきた光明寺地区。水路に沿って農地と住宅がバランスよく広がり、緑濃い寺社林に囲まれた社殿や御堂の深みのある風情は、いつたずねても美しい。 しかしこの春、旧村社の御滝神社の祭礼を前にして、50人を超える村人が総出で草を刈り、湧水池を清掃し滝普請する様子を目の当たりにして、ただ美しいのではない。 美しくしようと懸命に努力する村人がいるのだと気づかされた。

塚野目地区にある五郎市神社も、小社であるが地元の人々の思いにしっかりと支えられている。90歳と86歳の老人たちが長寿を感謝して寄進奉納したりっぱな石灯籠や鈴。それだけではない。 この神社には樹齢百数十年の大ケヤキと大杉の見事なご神木がある。しかし十数年前、社殿裏の大杉のご神木に雷が落ち、根元から3mほどの高さで折れてしまった。しかし村人は、 傷つき形は変わってもご神木であることに変わりはないと、太い注連縄をまわし、雨露で朽ちさせてはならぬと、みんなでトタンの上屋をかけ、今なお大切にご神木を守っている。 その姿を見ながら地域づくりも同じだと思った。

他地域の先進事例も悪くはないが、同じこの土地を生きてきた先人たちから学ぶことも大切なのではないのか。先輩たちが大切にしたもの。それは集落が培った共同の心と力を上手に生かすことである。

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