全国町村会

龍占い

エッセイスト 山本 兼太郎 (第2297号・平成11年12月20日)

来年のエトは龍。空想上の動物とはいえ、あの怪異な容貌はただごとではない。ところが耳は牛、爪は鷹、掌は虎、鱗は鯉と、我々の身近かな動物に似せてあるところが、いかにも意味ありげである。

このような龍は、いったいどこからやって来たのだろうか。親龍から子龍孫龍と生まれて、代々世襲によって、天地の間をとび回っているとは思えない。

意外なことに、出生の秘密は鯉にあった。龍の鱗は、実はひとならび81枚だそうだ。81は99の数字で陽、縁起がよい。一方、鯉の鱗はひとならび36枚、偶数で陰なりとするのが、中国古代の考え方である。

そうした鯉が、36枚の鱗にあまんじているうちは、ただの鯉として、池水河川の底で、平凡な生涯を終るだけである。それが翻然として一大決意をなし、苦労に努力をかさねて黄河の流れをさかのぼれば、話は違ってくる。

鯉はやがて「龍門の滝」にたどり着く。ここで、気をゆるめたり、あせっては台なしである。まず、滝つぼ深く身をしずめて時を待つ。やがて時流を得たりと決断するや、満身の力をふりしぼって、一挙に滝を昇りきると、そこでたちまち陰から陽に転じて龍と化し、風雲を呼んでめでたく天に昇る。世にいう「登龍門」を通りぬけるわけである。

こうしてみると、水中の鯉が龍と化して天に昇るには、まず第1に、昼夜をいとわず黄河の流れをさかのぼるという日常の努力。第2に、滝つぼではあせらず、あわてず冷静に時流を見ること、つまり適確な情報の収集。第3に、時をみて一挙に滝を昇りきるという決断力――が必要なことがわかる。そこで「努力・情報・決断」の3点が、龍年を占うポイントになってくる。

「昇天の龍は瑞兆なり」というが、惰性のままに、のんべん安閑としていては、せっかくの瑞兆も逃げてしまう。真理はやはり平凡なところにあるらしい。よい年をお迎えください。

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