全国町村会

観光の効果・効用と地域振興〜観光はまちづくりの総仕上げ

公益財団法人日本交通公社理事 筑波大学大学院客員教授  梅川 智也
(第3012号・平成29年9月4日)

政府が観光立国を標榜して久しい。昨年3月には『明日の日本を支える観光ビジョン』が策定され、観光先進国に向けた取組が2020年を目標に急ピッチで進められている。観光の効果・効用は、その地域振興効果にあり、大きくは経済的側面と社会的側面に分けることができるが、いずれも短兵急な取組ではなく、永続的な効果が期待できる息の長い取組が期待される。

わが国の旅行・観光の総消費額は年間約25兆円。外国人を含むこの観光消費が地域の振興にとって重要とされ、その経済波及効果を単純化して表せば「観光客数×一人あたり消費額×域内調達率」となる。このうち特に「域内調達率」を高めることが観光振興の要諦と言われ、観光客が落としたお金を地域外に流失させないよう、いかに「地域循環型」の経済にしていくか、いかに地域で採れたものに付加価値を付けて観光客に提供するか、が問われる。それが「地産地消」の一つの意義であり、さらに言えばわが町、わが村はいかにすれば付加価値を高めることができるかを模索することがこれからの生き残り戦略となる。

地方創生はイタリアの地方部がモデルと言われ、スローフードで有名なブラやシルク産業で有名なコモ湖、トスカーナやヴェネト州のワイン、フェラーリやマセラッティを生産するモデナなど世界をマーケットにした元気な地方都市や町、村が多数存在する。いずれも都市国家としての歴史を背景とし中央に依存することなく自立した独自の文化を育んできた。そこには“30q経済圏”と言われるローカル経済をベースに、量より質、付加価値の高い製品やサービスの創出、暮らしの充実など魅力ある理念と地域政策が根付いている。

地方創生に観光が重要な役割を果たすことは間違いないが、「観光はまちづくりの総仕上げ」とも言われるように、地域の資源を発掘し、磨き上げ、誇りの持てるまちづくりの結果として、そこに人々が訪れ、交流が生まれ、観光が成立するのであり、稼ぐこと、経済だけが先行する町や村に持続可能な観光は望めない。

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