全国町村会

65万人の外国人

エッセイスト・画家 玉村 豊男 (第2551号・平成18年2月27日)

ある町の、小学校の校舎を借りて講演をする機会があり、ずいぶんひさしぶりに学校の中に入った。すぐに気づいたのは、校舎のあちこちに貼られた案内や注意書きにスペイン語とポルトガル語の表記があることだった。校長室に通されて話を聞くと、その地域には日系のペルー人やブラジル人がたくさん住んでおり、その子弟が生徒の中のかなりの割合を占めるのだという。

そういえば、私の住んでいる町の役場にもスペイン語、中国語、韓国語などの表示がある。知らぬ間に、日本の地方は急ピッチで国際化が進んでいるのだ。少子化により、日本がいまの労働力の水準を保つためには65万人を超える移民を受け入れる必要がある、と国連は予測しているそうだ。まさに想像を絶する数字で、それを混乱なく実現するにはどんな方策を採ったらよいのか途方に暮れてしまうが、好むと好まざるとにかかわらず、なんらかの方法で異民族との共存を成功させなければ国の未来がないことは理解できる。

もちろん、65万という数字は紙の上の予測であり、また、「いまの労働力の水準を保つ」ことが本当に必要かどうかも議論しなければならない。

中国とインドを筆頭とするアジアの経済的肥大化に呼応して、日本が老大国ならぬ「老小国」として生きる決意を固め、産業構造を変えて高齢者の積極雇用を図っていけば、かならずしも膨大な数の移民は必要ないのではないか、とも思うが、それはそれとして、地方の町や村は、それぞれの事情に応じてどこまで国際化に適応できるか、早めに方策を考えておく必要があるだろう。国際化はすでに進んでいる、というのは本当だが、まだ実際にはそれほど深く住民の中にまで浸透していないのもまた事実なのだから。

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