全国町村会

過疎市町村の高齢者数が減少に転じることの意味

農村工学研究所研究員 坂本 誠 (第2718号・平成22年4月26日)

先日、日本の人口が2年連続で減少し、いよいよ本格的な人口減少社会が到来したとの報道があった。日本の将来を考えるうえで、これまで一貫して増加基調だった総人口が減少に転じたことの意味は大きい。

一方、過疎市町村でも、これまで増加が続いてきたある指標が減少に転じようとしている。65歳以上高齢者数である。過疎市町村(平成17年国勢調査時の指定地域で集計)の65歳以上高齢者数は平成2年から7年にかけて17%の増加を示したが、平成7年からの5年間では12%、平成12年からの5年間では4%台の増加にとどまっている。平成22年国勢調査の数字が待たれるが、増加傾向のさらなる鈍化、もしくは減少が予想される。事実、直近の推計人口によれば、県単位で、過疎市町村の高齢者数が減少に転じたところもある。

65歳以上高齢者数の減少により、高齢者福祉予算の拡大が一息つくかといえば、そうではない。高齢者福祉施策の検討に際して重要なのは75歳以上人口数であり、こちらは増加傾向に大きな変化はない。

むしろ65歳以上高齢者数の減少が示すのは、これまで当該年齢層により支えられてきた地域の維持運営が、いよいよ立ち行かなくなる可能性である。

第1次産業から第2、3次産業への産業構造の変化、それに伴う勤労者のサラリーマン化は、程度の差こそあれ、過疎市町村でも進んできた。ただでさえ少ない生産年齢人口が、平日の日中は勤務先に拘束されるようになり、農地や山林など地域資源の管理や種々の自治活動といった日常的な地域運営の主たる担い手としては期待しづらくなった。代わって地域運営の主軸を担ってきたのが高齢者層だったが、その高齢者層が減少に転じようとしている。過疎市町村は、高齢者数の減少に伴い、「地域を支える担い手の減少」、すなわち「人口問題そのもの」に立ち向かうことになる。

地域を支える担い手をどのように確保するのか、これまで通りの人手の確保が難しければ、地域をいかに省力的に維持運営していくのか、過疎市町村は新たな地域運営のデザインを必要としている。先般の過疎法の延長に際して、過疎債を新たにソフト事業にも活用できるようになったが、過疎市町村には、この「剣が峰」への創造的、革新的な対応が求められている。

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