全国町村会

「協働」という名の「強動」にならないために

農村工学研究所研究員 坂本 誠 (第2688号・平成21年7月27日)

このところ、住民・行政相互の情報共有に関する不満や不安を、住民・行政の双方から耳にすることが増えてきた。特に「住民→行政」方向、すなわち、住民から行政への情報発信、行政の住民に対する観察力が心許なくなっているようだ。「行政→住民」方向の情報伝達は、回覧や行政無線、CATVの文字放送等によってなんとか維持できているが、「住民→行政」方向の情報伝達のパイプが、急速に細くなりつつあるという。

原因の1つは、行財政改革(市町村合併を含む)による自治体職員数の減少だろう。自治体職員数の減少が必ずしも住民と行政の情報共有に悪影響を及ぼすわけではないが、少なくとも、なにも手を打たなければ、自治体職員の地域観察力、情報収集力の低下は避けられない。もう1つの原因は、人口減・高齢化に伴う地域(集落)の体力低下にあると考えられる。集落は、既存の体制・活動を維持するだけで手一杯であり、行政に対する交渉力、情報発信力を従前通り発揮することが難しくなりつつある。

昨今、とみに「住民と行政の協働」が謳われるが、これは住民・行政相互に、情報・意思の疎通が十分に確保されていることが前提である。情報や意思が「行政→住民」の一方向に流れるなかでの「協働」は、地域に対して逆効果さえもたらす危険をはらんでいる。「協働」の名の下に、行政側から、行政自身の事情に基づいた「動員」がかけられ、地域住民には負担だけがのしかかるおそれがあるからである。こうした「協働」は、行政の側にとってみれば、たしかに一時的な行財政効率化にはなるかもしれないが、地域住民にとっては負担感ばかりが残り、結果として、地域全体の幸福にはつながらないのではないか。

「協働(きょうどう)」という名の「強(きょう)(制)動(どう)(員)」となっては、元も子もない。真の意味での「協働」を実現するためにも、「協働のまちづくり」を実践する前に、住民と行政との関係をいまいちど点検してほしい。

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