全国町村会

文化創造型地域づくりを

(財)とっとり政策総合研究センター研究員  坂本 誠
(第2643号・平成20年6月16日)

以前、とある場で、農山村を守る意義について議論になった。私は、意義の1つとして、地域文化の維持保全を主張したが、それに対して「伝統文化は博物館で保存すれば済むのでは」という反論を受けた。いやいや、農山村の多様な文化は、各地域の生活に根ざして培われたものであり、そこに暮らす人々の存在が重要なのだと返したが、そこでふと考えるところがあった。

文化の維持保全というと、一義的に「守る」ことだけを考えがちである。しかし、地域の資源を活かしながら新たな文化を創り上げていく営みも、併せて考える必要はないだろうか。その観点から戦後の農山村の歩みを振り返ったとき、残念ながら、地域の文化を創造・発信する取り組みに不足があったと言わざるをえない現実がある。木材生産の号令がかかると、全国の山々が針葉樹で覆われた。公共施設をつくれば地域が栄えるとして、全国各地に“ハコモノ”が整備された。そこに創造力を見出すことは難しい。

もちろん、これは農山村のみの責めに帰するべきものではない。中央集権体制が地域の創造力を奪ってきた部分が大きいからである。しかし一方で、中央集権体制の変革が進む中、一部の農山村では、新たな文化を創造する取り組みが生まれつつある。地域外の人材を積極的に活用しながら産業創出を図る島根県海士町、柚子製品を通じて“村”のブランド化に成功した高知県馬路村は、いずれも、既存の地域資源を活かし、新たな地域文化を創造した例といえる。そしてこれらの事例に共通するのは、自律的かつ持続的な取り組みであり、他の追随を許さない強靱さを持っていることである。

さらに、この2町村にはもう1つ共通点がある。いずれの町村も若年者人口が増加しつつある点である。国勢調査によれば、海士町では2000年からの5年間で、 20〜30代の人口が15.9%増加している。馬路村でも20代が増加に転じている。新たな文化を創造している地域は、若者にも魅力的に映るのだろう。

先人から受け継いだ文化を創造的に育み、次の世代につないでいくことこそ、地域に生きる者の役割である。そして、こうして育った地域の文化は、決して博物館に収まるものではない。

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