全国町村会

「まち・ひと・しごと創生」を現代版「ふるさと創生」へ

東京大学名誉教授  大森 彌(第2891号・平成26年9月1日)

1988年(昭和63年)の全国町村長大会では、「ふるさと創生」を内政の最重要課題に掲げた竹下登総理は、「地方の皆さんがメニューを作って、 それを中央がいかにサポートするかというように発想を転換しなければなりません」と述べた。通称ふるさと創生事業は、各市区町村に対し、 地域活性化に使える資金1億円を一律に地方交付税交付金を追加した政策であった。当時、東京湾の臨海部副都心整備は4兆円、横浜市のMM21は2兆円の事業であったから、 それと比べて1億円事業の合計はたった3200億円程度であった。それでも、全市区町村を対象にした「ふるさと創生」の支援であった。全国の自治体は1億円の使い道を熱心に議論した。 

2013(平成25)年の全国町村長大会で、安倍晋三総理は、「美しい国の原点はまさに町村にあり」と挨拶したが、その総理の提唱で「まち・ひと・しごと創生本部」が設置される。 気になるのは「まち」が焦点になっていることである。この「まち」に「むら(農山漁村)」が含まれていると読めるだろうか。 増田寛也元総務相を座長とする「日本創成会議」の分科会は、「成長を続ける21世紀のために『ストップ少子化・ 地方元気戦略』」(平成26年5月8日)で、「東京一極集中」に歯止めをかけるために若者に魅力ある地域拠点都市を中核として新たな集積構造を構築すべきだと提案している。 こうした案が国の施策に組み入れられようとしている。 

地方拠点都市という圏域形成によって東京などの大都市への人口流出を食い止め、そこでの出生率を高めることが期待されているが、 拠点都市への資源の集中が周辺の農山漁村地域の衰退を加速させるのではないかと心配になる。小規模市町村はどうせ人口減少で消滅するのだから拠点都市の維持・ 成長のためには切り捨ててもやむを得ないというような施策は地方創生とはいえない。「まち・ひと・しごと創生」が、 国とすべての自治体が知恵と力を結集して人口減少に立ち向かう現代版「ふるさと創生」になることを切望したい。

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