全国町村会

町村の存亡がかかる道州制基本法

東京大学名誉教授  大森 彌(第2814号・平成24年9月24日) 

総選挙が近づき、各政党は、選挙で有権者に問う政策を準備している。その中に、道州制基本法の制定が含まれている。2009年の参議院選挙でも、 ほとんどの政党が道州制の実現を打ち出していた。2012年7月11日、自民党道州制推進本部・総会に提出された「道州制基本法案(骨子案)」は、 次の衆議院選挙における自民党の選挙公約になるものと思われる。それは町村の存亡にかかわる内容を含んでいる。 

自民党案に限らず、道州制案の基本的特色の一つは、市町村合併を前提条件としていることである。国の役割を著しく限定して、内政に関わる事務権限などを、 廃止される現行の都道府県に代わって設置される「道州」へ移管し、都道府県が行っている事務事業を大幅に「基礎自治体」へ移す、とされている。 

「広域」と「基礎」という二層制によって地方自治を構成しようとしている点では現行と変わりはない。しかし、「道州」が、 新たな広域の地方公共団体の名称であるのに対し、現行の基礎的な地方公共団体の名称である市町村とは言わず、「基礎自治体」と言っているのである。なぜか。 

「道州」に包括される「基礎的な地方公共団体」を事務権限の新たな受け皿として整備するために、一定規模以下の市町村を再編・解消しようとしているからで ある。おそらく、人口30万以下の市町村は合併ということになるだろう。分権時代である。合併を強制できないだろうから、「平成の大合併」で使われた アメとムチの促進策を上回る工夫が何か考えられるのであろうか。 

単独では事務権限の移譲を受けられない基礎自治体については、「道州」の出先機関による補完や近隣の「基礎自治体」による水平補完などの仕組みによって 対応するといったことを言い出すだろう。「平成の大合併」の荒波を懸命に乗り切り、自治体としての存続を図ってきた誇り高い町村が、そのような扱いを 甘受するとでも考えているのであろうか。町村の存亡にかかる「改革」の足音が大きくなっている。 

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