全国町村会

市町村長の後見申立と市民後見人

東京大学名誉教授  大森 彌(第2790号・平成24年2月20日) 

老人福祉法第32条は、市町村長が、高齢者の福祉を図るため特に必要を認めるときは、民法第7条等のいう「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」について家庭裁判所に対し後見審判の請求をすることができると規定している。同様の規定は知的障害者福祉法や精神保健及び精神障害者福祉に関する法律にもある。

平成12年4月、介護保険法とともに成年後見制度が施行されたが、その活用が進んでいるとはいえない状況にある。成年後見制度は、判断能力の不十分な者を保護するため、一定の場合に本人の行為能力を制限するとともに本人のために法律行為をおこない、または本人による法律行為を助ける者(成年後見人)を選任する制度である。

高齢者の虐待や孤立死の増大、高齢者独居・夫婦のみ世帯や認知症高齢者の増大などを背景に、後見ニーズへの対応が急務になっている。弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職後見人は不足し、あろうことは不当な報酬額を取得し財産を侵奪したりするケースもあり、また、後見人である親族による金銭の着服が発覚し刑事事件となるケースも出ている。

そうした中で、市町村の現場において、虐待などの権利侵害を早期に発見しきれない現況にあり、後見ニーズの増大に備え、見守り・相談等から財産管理などの後見サービスの利用までワンストップで適切・迅速に対応できる仕組みとするよう、市町村長申立のさらなる活用が求められている。

そのため、このたび関連法が改正され、第32条等に、市民後見人の研修及び研修機関の認定、市民後見人の登録及び支援、都道府県の研修や情報提供等の努力義務が追加された。これにより、市町村の責任において後見実施機関を設置し、市民後見人を養成・活用・支援する仕組みを確立していくこととなった。特に認知症高齢者への社会福祉の充実のため、市町村長には後見申立の意義と役割への目配りが一層求められている。

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