全国町村会

「緑の分権改革」への期待

東京大学名誉教授  大森 彌 (第2710号・平成22年2月22日)

2009年12月14日に地域主権戦略で決定された「地域主権戦略の行程表(原口プラン)」には、「緑の分権改革の推進」という項目があり、すでに総務省には推進本部が設置され、クリーンエネルギーの調査、先行的・総合的に取り組む市町村の調査等が始まっている。「緑の分権改革」は原口一博大臣のいわゆる「原口ビジョン」の中で、地域の将来に安心と活力を与える成長戦略の一つとして打ち出されたものである。

今後30年間で「過密なき過疎」の時代の到来が予想される中で、それぞれの地域 が、今一度、森・里・海とそれにはぐくまれるきれいな水、先祖伝来の田畑、輝く太陽などといった豊かな資源とそれにより生み出されうる食料やエネルギー、あるいは歴史文化資産の価値等を把握し、最大限活用する仕組みを草の根的に創り上げていけるように経済社会システム全般を改革していくことによって、地域の活性化、絆の再生を図り、地域から人材、資金が流出する中央集権型の社会構造を分散自立・地産地消・低炭素型としていくことにより、地域の自給力と創富力(富を生み出す力)を高める地域主権型社会への転換を実現しようとするもの、それが「緑の分権改革」だとされている。

国と地方の行財政制度を「地域主権型」 に改革していくことが分権改革の縦軸とすれば、ヒト・モノ・カネ・エネルギーの動きそのものを変えて、地域の自給力を高めるような経済社会システムの構築していくことは分権改革の横軸だと捉えられている。この発想は、分権改革に立体感・厚みを与えると同時に、これまで困難に負けず内発型の地域振興を進めてきた自治体と地域にとっては大きな励みとなるといえよう。とりわけ疲弊・衰退の著しい農山漁村地域にとっては希望の灯になるかもしれない。「緑の分権改革」の「緑」は地域の豊かな資源の現存を、「分権改革」は「誰かにお任せ」から「自ら引き受ける」地域人の覚悟と可能性を象徴している

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