全国町村会

本当に「三〇〇基礎自治体」を目指すのか

東京大学名誉教授  大森 彌 (第2682号・平成21年6月8日)

民主党分権調査会は、2009年4月22日、「霞が関の解体・再編と地域主権の確立(案)」を公表した。党の代表は代ったが、来る衆院選での政権公約の一部になるものと思われる。「霞が関に支配され続けていた自治体は、地域のことを地域で決める主権を回復する」のだそうだが、こんな「主権」の用法があろうか。主権は「国民」にあり、国土の一部である地域の住民にあろうはずがない。連邦制を目指すというのであろうか。

この案では、政権獲得後3年目までに基礎的自治体のあり方の制度設計を進め、「自治体の自主性を尊重しつつ、第2次平成の合併等を推進することにより、現在の市町村を当面700〜800程度に集約し、基礎的自治体の能力の拡大に努める」とし、「合併等により集約をする市町村に対して一定期間、一括交付金の算定で優遇措置を講ずる」としている。最終的には国と300程度の基礎的自治体による新たなる「国のかたち」を目指す、のだそうだ。

政権交代がなければ、この案は画餅になるが、もしも民主党が衆議院でも多数派を形成するようなことになれば、当面、「平成の合併」が終わらない。更なる合併による「基礎的自治体の能力の拡大」とは、すでに市の数が約780であるから、1,000弱の町村の解消ということになる。民主党は最も反町村的な政党ということになる。しかも、一括交付金の上乗せで合併を促すのだそうだが、金では釣られない誇り高い町村をどうする気だろうか。一定規模の市になるよう編入合併を強制しなければ、700〜800にはならない。

しかも、将来は、都道府県も廃止し、300程度の基礎自治体を整備するのだそうだが、本当に1,400以上の市町村を再編・統合して、人口30万以上の市へと全国を編成できると考えているのであろうか。「第2次平成の合併」といい、都道府県の廃止といい、新たなる「国のかたち」といい、その拙劣さに思わずため息が出る。

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