全国町村会

公益通報

東京大学名誉教授  大森 彌 (第2585号・平成19年1月15日)

知事等の不祥事が続発した昨今、公益通報の意義について考えてみたい。自治体の中には、公益通報者保護条例を制定するところが出始めた。これは、公益通報(いわゆる内部告発)が迅速かつ公正に取り扱われる仕組みについて必要な事項を定めるとともに、公益通報を理由とする不利益取扱いを禁止することにより、公益通報者を保護し、これにより透明かつ公正な行政を実現しようとするものである。公益通報とは、職員、事務事業の受託業務に従事している人たちが、知り得た行政運営上の違法又は不当な行為に関して行われる不正の是正又は防止のために通報することである。対象は執行機関の行動である。

職員等は、違反等の事実があることについて客観的に証明できる資料がある場合を除き、原則として実名によって公益通報をしなければならない。もちろん、その通報の内容は他人の正当な利益を害する不正の目的によるものであってはならない。公益通報者は、正当な公益通報をしたことを理由として、いかなる不利益取扱いも受けない。通報があると、調査が開始され、首長等は、その改善又は防止のため必要な措置を講じ、措置の経緯及びその内容を速やかに公表することなる。

自治体の職場では、これまでも、いわゆる内部告発が行われることがあった。職場に不正があっても、その内部の恥を外にさらすことはよくないという観念がある。だから、不正が露見すると、内部の犯人探しをする。犯人と目された職員はつらい仕打ちをうける。不正が放置され、むしろみんなで隠そうとするのは、職場が「臭い物に蓋をする」劣化した共同体になっていることを意味する。内部告発は組織への裏切りではなく、告発されるような不正を放置していることが悪いのである。このように発想をきりかえ、いつでも公益通報がありうることを前提にして、首長等は、公正・清潔・誠実な行政運営を確保してほしいものである。この条例では議会議員は対象外になっているが、議員もまた執行過程に介入することがないよう身を引きしめてほしい。

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