全国町村会

プライマリーバランスの黒字化

東京大学名誉教授  大森 彌 (第2518号・平成17年4月25日)

国は、「2010年代の初頭にプライマリーバランスを黒字化する」ことを目標とした財政運営に着手している。プライマリーバランスとは、債務返済費用以外の歳出が公債金以外の収入(税収)でどの程度賄えるかという基礎的財政収支のことで、その均衡とは現状以上に債務が増えない財政状態のことである。均衡状態では債務は減らないから、債務を減らそうとすればバランスを黒字化しなければならない。

2004年度当初予算で19兆214億円だったこの赤字額は、05年度予算案では15兆9,478億円に縮小した。単年度収支で3兆737億円の改善である。この調子で進めば、05年度から12年度までの足掛け8年間で約16兆円の赤字を解消できることになる。これが「2010年代初頭に黒字化する」という意味である。

黒字化に向けた政府の取り組みは、将来世代にこれ以上の債務を増やさず、その意味で国の財政を健全化するという主旨である。これは、最近よく使われる「持続可能な」という言葉でも説明できる。もともと、持続可能性(サスティナビリティ)は、国連の地球環境論議において「持続可能な開発」という概念の中で出てきた考え方で、「将来の世代がそのニーズを満たす能力を損なうことなく、現世代のニーズを満たす開発」と定義された。

持続可能性は現世代の将来世代に対する責任の問題であるから、政治責任の基本にかかわっている。財政の赤字たれ流しは持続可能性に欠ける典型例ということになる。

プライマリーバランスの黒字化のためには、歳入を増やし、歳出を抑制しなければならない。したがって、問題は、どのような歳入を増やし、どのような歳出を抑制するかの選択になる。私は、分権改革(自治体の自己決定・自己責任の拡充)の観点から行うべきだと考えるが、現実は「地方行革」の要請の強化になって現れている。合併によって新たな市や町になったところも、合併せずに単独行を決めたところも、今後の行財政運営が容易ならざる厳しさになる。単独行の町村にはひとしお辛い年月が続く。

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