全国町村会

少子化への対策はあるか

千葉大学教授・東京大学名誉教授  大森 彌 (第2473号・平成16年3月15日)

わが国の2002年の合計特殊出生率は1.23人である。合計特殊出生率とは一人の女性が一生涯に平均何人の子供を産むかの数値で、次世代につながる人口再生産の程度を示すものである。この数値が2.1を下回り、1.8を切ってしまっているのは先進国に特徴的な現象である。しかし、わが国はやや落ちすぎなのではないか。

この急激な少子化の理由がよく分かっていない。「貧乏の子沢山」といわれたように、経済的に貧しく、生活環境が悪かった時代のほうが生まれてくる子供の数は多かった。妊娠・出産・育児をめぐる環境条件が改善され、耐久消費財の普及で家事労働が軽減され、高等教育が普及するとともに少子化が事実として進行してきた。分かっているのは、どうやら、なかなか結婚しない男女が増え(非婚)、25歳前に結婚し出産しない女性が増え、結婚年齢が高くなって子供を作っても一人(晩婚・晩産)という若い世代が増えたことである。あるいは時間と経費の点で出産・育児をそれ以外の活動と比較し、後者を選ぶ人が増えたからかもしれない。

次の国勢調査によって確実に人口減となる市町村は、交付税が人口をベースに配分されるだけに、それだけで交付税額が減少する。それは明らかにこれまでの少子化対策のあり方が問う側面を持っている。地域をどのように経営して、地域の活性化を図っていけば若者は地域にとどまり、結婚し子供を生むだろうか。何が最も有効な手立てであろうか。それが見つからなければ、社会の営みを維持するため人口減をカバーする方策を考えなければならなくなる。

人手不足を技術で補うのには限界がある。おそらく不足する人的サービス分野への外国人の採用が避けられないかもしれない。しかし、これは「新たな開国」であり、外国人との日常的な共存・協調を覚悟し、そのための特段の工夫を必要とするだろう。すでに、少子化の進行はそうした局面を迎えているのではないか。

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