全国町村会

さらに町村を解消していくのか

千葉大学教授・東京大学名誉教授  大森 彌 (第2464号・平成16年1月5日)

一部の報道機関は合併により市町村の数が1,700台になると予想している。約670ある市の数は減らないとすれば、町村が1,000ほどになる勘定である。それほど減るかどうか判らないが、2,000を切るかどうかが取り沙汰されているから、その場合でも1,000以上の町村がなくなることになる。

去る11月の総選挙では、政権党は、従来の閣議決定に則して1,000にする目標を公約に掲げたから、現行合併法の期限内にこれを達成できず、しかもその意思を捨てない限り17年度以降も市町村合併の推進は続く。

しかし、この1,000という数字にどれほどの根拠があるだろうか。政治の世界では「理屈は後から貨車で積んで来る」ともいわれるから、理不尽なことでも通るのかもしれない。1,000の出所は、おそらく小渕総理のときの「日本経済再生への戦略」である。そのときの考え方は「全国に約670ある市は人口要件を満たしてないことが多く、周辺と統合して450にする。約550ある郡を一つの市にする。そうすれば最大1,000になる」というものであった。ずいぶん乱暴な括りである。しかし、これが与党・政府の目標になったのだと思われる。

先の総選挙では、自民党は、300の小選挙区の選挙では議席を減らしているが、その減らし方には地域差がある。かりに人口集中度で小選挙区を都市部、中間部、農村部に分けると、農村部でも議席は減らしたが、その減少率は6%ほどであり、都市部での20%減とは大きな差である。議席数を伸ばした民主党は農村部での議席は10で変わっていない。農村部では自民党は圧倒的に強いのである。それでも自民党は農村部の町村を合併でなくしていくといっている。その政党の候補者を町村の人たちは律儀にも当選させている。これをどう考えるか見解は分かれようが、確かなのは基礎自治体としての町村が農山村から消えていくことである。それでよいのだろうか。

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