全国町村会

「西尾私案」への対案はある

千葉大学教授・東京大学名誉教授  大森 彌 (第2428号・平成15年2月17日)

全国町村会は、地方制度調査会から「西尾私案」に対案を出すようにと要請を受けた。小規模市町村の事務権限を縮小するといっても、どの範囲の、どういう事務なのか明確でないため、何に対する対案を考えればよいのか判りにくいが、もし対案というのならば、おそらく次の2点にかかわるだろう。

1つは、17年度以降、再度、国が一定の期間、合併を呼びかけることの是非とその手法についてである。一挙に人口基準の小規模な町村を整理・解消することと、強制合併に踏み切ることを避けるため、一定期間、国が「自主合併」を促すことは拒否できないのではないか。その際、このたびの合併では市側の対応に問題がある場合もあり、呼びかけの対象を一定の人口以下の町村に限らず、全市町村とすべきである。また、財政支援はやめ、しかも強制にならない手法をとるとすれば、ぎりぎり、都道府県の斡旋・調停・勧告までに限定すべきである。そして、周辺地になる旧町村を寂れさせないため、合併後の自治体内部に地域審議会を越える公的仕組み(「近隣自治組織」)を設置できるよう法的整備を行うべきである。

もう1つは、縮小・肩代り案は非現実的であるので、一定人口未満の町村を近隣の市に強制編入し、その内部団体化する案に対案が考えられないかどうかである。強制編入は受け容れがたい。しかも「西尾私案」は、基礎自治体のあり方を、広域連合方式を断念し合併一本に凝り固まって考えてしまっている。そこには、一定人口未満の町村の事務を縮小し、都道府県の責任にする案が含まれているが、その実施形態として広域連合が内包されているではないか。一旦否定した広域連合を裏口から呼び込んでいる。これも納得できない。現行の広域連合を、より統合力の発揮できるものへと手直し、しかも相当の事務権限を新たに移譲し、「自主的編入」案と並ぶ選択肢とすることが十分考えられる。町村を解消させてはならない。

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