全国町村会

課の名前を地域言葉で

千葉大学教授・東京大学名誉教授 大森 彌 (第2350号・平成13年3月26日)

地域は、自然とものと人が織り成す文化であるともいえる。地域言葉は、その表現手段として最も基本的なものである。その地域の人々が、長い間、使ってきた独自の語彙・語法である。地域言葉は、方言とか、お国言葉とかいわれるように標準語ないし共通語と区別されてきた。国民国家の形成と維持に標準語の普及が欠かせなかったことは確かであるが、その過程で、地域言葉は、どこか恥ずかしいような肩身の狭い思いを余儀なくされてきた。実際、地域言葉を蔑む人々も少なくなかった。東京などへ出てきた人が、あえて自分の地域言葉を押し隠そうとする傾向は今でも見られる。

しかし、地域に人々が暮らしている限り、地域の言葉が失われることはない。分権時代を迎えて、従来、ともすれば標準語を気にしすぎて自分たちの言葉を軽視してきたことを反省し、いろいろと工夫して、地域言葉を蘇らせていきたい。

沖縄の那覇市が、この4月から、従来の「介護長寿課」を「ちゃーがんじゅう課」と言い換えるそうである。「ちゃーがんじゅう」とは、標準語では「いつまでもお元気で」を表す地域の言葉であるという。好評なら、こうした「方言窓口」を増やすという。本土からの来訪者には、方言の1つの覚えてもらおうという発想である。

私は、以前から、自治体は国民を教育すると同時に地域人を育てる必要があることを強調してきたが、那覇市の試みは、意に適ったり、と喜ばしい。全国の町村で、こうした事例があったらぜひ教えてほしい。課の名前に限らず、計画や条例の中にも地域言葉を織り込み、日本の町村がいかに多様であるかを具体的に示していきたい。

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