全国町村会

自由貿易VS保護貿易を超えて

コモンズ代表・ジャーナリスト 大江 正章 (第2991号・平成29年2月20日)

トランプ氏が米国大統領に就任して以降、自由貿易や保護貿易という言葉が新聞に載らない日はほとんどない。政府関係者やビジネスマンだけでなく、多くの人びとが程度の差はあれ、現在の自由貿易は正しいと思ってきただろう。だが、TPPや、米国とEUの自由貿易協定であるTTIPを見ていると、そうとは言えない。識者や外国政府首脳が喝破している。 

「TPPもTTIPも、自由貿易ではなく、特定の集団のために『管理』された貿易であり、人びとには何ら利益はない」(ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・E・スティグリッツ氏) 

「TTIPは自由貿易の話ではなく、協定でさえありません。これは基本的に、アメリカと欧州連合の経済エリート間の、国民の意思に反する連中の権益を守るための取引です」(ドイツのシグマール・ガブリエル副首相兼経済・エネルギー相)

周知のように、日本はこれから米国との二国間自由貿易協定の交渉を迫られる。その出発点はTPPで譲歩した水準だから、きわめて厳しい内容が想定される。米国で価格競争力があるのは農産物なので、その輸出拡大を迫ってくるにちがいない。言うまでもなく、地域を支える農業は守られなければならない。ただし、問題の本質は、自由貿易か保護貿易かという対立ではない。

今後は、貿易のあり方を根本的に考え直す必要がある。端的に言えば、環境や人権を守り、貧困・格差を是正する新たな貿易ルールが求められているのだ。衆議院議員を3期つとめた国際政治学者の首藤信彦氏は近著で、貿易は以下の4点に配慮し、人びとを幸せにする公正な貿易協定を求めていかなければならないと言う。 

「環境保全に貢献するか、人権や人道に悪影響を与えないか、人びとの健康を守ることに寄与するか、国連が採択した『持続可能な開発のための17の目標』と矛盾しないか」

同感である。この視点から、貿易のみならず、産業のあり方も再検討していきたい。そして、日本がまず目指すべきは、これらの条件を満たした、東アジア地域での公正貿易協定(プラス非核地帯)である。

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