全国町村会

今年は国際家族農業年

コモンズ代表・ジャーナリスト 大江 正章 (第2871号・平成26年03月03日)

国連は、「飢餓の根絶と天然資源の保全において、家族農業が大きな可能性を有していることを強調するため」、2014年を国際家族農業年に定めた。 最近の日本では肩身が狭い家族農業を国連は大切にしているのだ。FAO(国連食糧農業機関)の事務局長は、おおむね次のように述べている。

「家族農業こそが持続可能な食料生産を行い、多様な農業活動によって環境と生物多様性を保全する役割を果たす」

世界の飢餓人口は約9億人にのぼる。アフリカやアジアで主食が自給できないのが、その大きな理由だ。大規模な農業投資や、主食ではなく換金作物を栽培するプランテーションは、 飢餓問題の解決にはつながってこなかった。貧しい人たちは、高い輸入食料を手に入れられない。いま必要なのは、途上国の自給的な小規模農業に対する顔の見える援助である。

途上国だけでなく、欧米や日本でも地域を支えているのは家族農業だ。しかし、 日本では一貫して産業化・大規模化が求められてきた。「新たに農業経営を営もうとする者の参入の促進等による農用地の利用の効率化」を目指す農地中間管理事業法は、 その徹底化だ。「高齢の農家や兼業農家から農地を取り上げるのが実態だ」という声も聞こえてくる。それが国際家族農業年の理念に反しているのは、言うまでもない。

そして、家族農業は「小さな農」だが、弱い農業ではない。農外収入によって農業の持続性を担保し、多品目少量栽培で食べる人とつながり、自給率の下支えをしている。 家族農業者や半農半Xの若者が大規模農業のパートとして働き、協力し合っているケースもある。

なお、ここでいう「家族」とは、旧来の概念の家族に限定するべきではない。夫婦別姓の新規就農者も友人同士の経営もあってよい。さらに、家族農業の後継者が血縁者でなくてもよい。今後は、 農を志す非農家出身者への継承も増えていくだろう。それらすべてが、環境と生物多様性を保全する持続可能な農業の担い手である。

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