全国町村会

「地方創生のゆくえ」

法政大学教授 岡崎 昌之(第2917号・平成27年4月20日)

地方創生への議論が高まっている。各市町村ではこの機会に何に取り組むか、まさに鳩首凝議の状況で、総合戦略策定に余念がない。担当大臣や政務官も、ユニークなまちづくりの現場に足を運んでいる。 これまでになかったことだ。石破担当大臣も、鹿児島県鹿屋市の柳谷(やねだん)を訪れている。同地区は行政に頼らないまちづくりを標榜し、大きな成果を上げている。 公民館が主体となって空き家を改修した「迎賓館」にも宿泊し、地区の子供や高齢者とも懇談されたと聞く。

ただ市町村の現場を担う職員の間では、少し戸惑いもあるようだ。戦略策定で施策ごとに、雇用は何人増える、移住は何人見込めると、評価指標を求められても、自信の持てる数字は出しにくい。 折角知恵を絞って企画した案も、創生本部に確認すると「それはちょっと」といった否定的な反応が多いようだ。

今回の地方創生で取り組まなければならないのは、なにも奇をてらった策ではない。地域固有の課題で、長年に渡って集落や地域で苦しんできたこと、解決が迫られていることこそ、 この機会に総力を挙げて取り組むべきだ。

平成26年末、天皇陛下は誕生日の記者会見で「常々心に掛かっていることとして多雪地帯での雪害による事故があります。日本全体で昨冬の間に雪で亡くなった人の数が95人に達しています」と述べられている。

技術、経済大国の日本で、毎年100名近い人が雪で亡くなるといったことは看過できないことである。また多くの集落では冬期間の積雪で、空き家となった立派な民家の屋根の棟が押し潰され、 家が破壊されている。豪雪対策特別措置法の指定地域は国土の50.7%に及び、雪の問題は国土管理上の大きな課題でもある。

老朽化した橋梁等の架け替えは当然必要であるが、国土強靭化とは立派な道路や港湾を建設することだけではない。雪が消えて春になれば忘れてしまうのではなく、雪害を乗り越える強靭な地域を創ることは、人を活かし、 若い人たちの田園回帰をも促す重要な地方創生に繋がるのである。

(肩書は平成27年3月31日現在)

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